7 円卓の緑黄色野菜【円卓】
登場人物
ガウェイン卿
がっしりした体型の騎士。ご近所の奥様方にモテモテなタイプ。
パーシヴァル卿
すらりと背の高い、二枚目のチョイ悪オヤジ。東洋趣味らしい。ちょっとニヒルな感じ。
◇
石造りの城はつまり砦であり、堅牢にして強固ではあるが、居住性能には欠ける。
重厚な雰囲気の漂う薄暗い城内の一室には、大きな丸テーブルがある。
席の一つに座った壮年の男性が、隣へ問いかける。至極、真剣な眼差しだ。よほど、差し迫った問題に相違ない。
「ガウェイン卿。貴公、緑黄色野菜についてどう思う?」
「カラフルだな。彩りが良い」
即答であった。ニヒルなパーシヴァル卿は、出鼻をくじかれた思いで、自分の顎髭をなでさすった。
「うむ。確かに、見た目はそうだ。だが、緑黄色野菜には、もっと実用的な価値があるのではないか……?」
「野菜にカロリーは、ほとんど含まれてはおらぬ。食べるだけ時間の無駄よ」
「なんだと!?」
「落ち着きたまえ、サー・パーシヴァル。野菜には、ビタミンとミネラルが含まれている。それらは体内でタンパク質の部品となり、重要な役を果たすのだ。それはもはや、我ら円卓の騎士にとっては常識だと考えていましたがな、ガウェイン卿」
ケイ卿がそう発言した。
「……クッ」
ガウェイン卿は顔をそむけた。その表情には、悔しさがありありと見て取れる。
「わたしには……肉さえあればよい。そして、プディングとフィッシュ&チップスと! レタスもパセリもブロッコリーも大根も! すべては飾りにすぎん!」
「ーー貴公。今、なんと言った……? ブロッコリーもか!? ブロッコリーも飾りだと言うのか!」
ケイ卿が、剣の柄に手をかけ、叫んだ。
ガウェイン卿は謝罪した。
「すまないーー貴公の愛するブロッコリーをけなすつもりはなかったのだ」
「当然だ! そんなつもりが、あってたまるものかッ!」
憤慨しながら、ケイ卿は椅子に座り直した。
「緑黄色野菜ーーやはり、もっと我々は、それについて調べる必要があるようだ」
ガラハド卿が、言い、その場の皆は、深く頷いた。
そうだ。
もっと緑黄色野菜を知りーー我らが王の治世を不動のものとする。
それがーー
彼ら円卓の騎士の願いであった。