6 円卓と、○○○【円卓】
彼らの名前の由来ともなった、巨大な円形のテーブルの端につきーー、彼は、隣で、テーブルのへりにもたれかかり、腕を組んで静かに目を閉じている騎士に呼びかけた。彼の前には、ブリテン島の地図が、描かれた羊皮紙が置かれている。それを眺めーー。
「ーー貴公、うんこについてどう思う?」
テーブルのへりにもたれている騎士が鷹揚に応じる。
「うんこかーー」
「ああ。うんこだ」
円卓の置かれた空間を、静かな空気の微細な揺らぎだけが満たす。先に口を開いたのは、テーブルのへりにもたれているほうであった。
「やはり、和式が良いと思うのだ」
「ありえん!」
椅子に座っていたほうの背の低い騎士が、がたんっ! と立ち上がる。
二人の男の視線がぶつかり合い、あるいは何かを語り合う。
やがて、背の低いほうーーガウェイン卿は、あきらめたように椅子にもどった。
「ーー貴公の東洋趣味は、理解しているつもりだ。だが、ありえん。ありえぬよ、便器はフランス製に限る。ーー違うか?」
テーブルのへりの騎士ーーパーシヴァルは、フッ、と、笑みを浮かべた。
「踏ん張るには、あの形は良い」
「なんーーだと?」
背の低いがっしりとしたほうが、驚嘆に息を呑む。そして、さらに問うた。
「うんこの、あの、出そうで出てこないもどかしい不快感ーーなびきそうでなびかない生娘にも似たあの感覚。それが、和式便器に座る際の姿勢によって解消されるというのかーー?」
パーシヴァル卿は勝利の笑みだ。
「そうだ」
「ーーしかし。となると」
首をふりつつ、がっしりとしたほうが言うのに、パーシヴァルは応えた。
「この城も、和式便器を導入したほうがいいかもしれないな」
「まて! だがーーそれゆえに、黄金の国ジパングの人間は力みすぎ、尻の穴から出血死する者が後を絶たないと聞いたことがあるぞ!」
「なにーー?」
パーシヴァルが、端正な顔の眉をひそめる。
「早まらぬほうがよい。我らは英国の誇りーー尻から出血死したとあっては、後の者たちに示しがつかん」
「うーーうむ」
背の高いほうの騎士は、少しばかり顔をひきつらせつつ、しっかりと頷いた。
円卓の騎士好きの皆様、ごめんなさい。
なお、『アーサー王伝説』の著作権は数百年以上経っていて、切れてる……はず、ですよね?