26 爆ぜる、リア充
2013年11月ーー。すべてのリア充が、爆ぜた。
その爆発は月面上からも観測され、のちに『サード・インパクト』と呼ばれることになるーー。
国は、リア充保護政策を打ち出し、リア充になると、一生を遊んで暮らせるほどの年金を支給されることになった。だが、かろうじて爆発を免れた少数のリア充は年々減少し、ここに、最後のリア充となった男が、海を見ていたーー。
「拓也。どうしちゃったの? ぼーっとして。そんなに…気持ちよかった?」
カノジョが顔を赤らめ、もじもじと尋ねる。
それを微笑ましい思いで見つめながら、拓也は、首を左右に振った。
「違うよ、由美…。ああ、いや、違わないけどーー俺はさ、考えていたんだ」
波は寄せては返し、水に浮遊する砂の細かい粒をもてあそぶ。
鳥たちが親しげな鳴き声を上げながら、上空を舞う。
気温は少し肌寒かったが、二人でいれば気にならない。
拓也は、少し黙ったあと、ぽつりとつぶやいた。
「リア充ってなんなのかなってーー」
「りあじゅーかあ」
少し舌足らずの言い方で言い、由美は、自分の顎に人差し指をあてた。彼女のウェーブのかかった黒い髪が、風にもてあそばれる。
「あたしたち、生まれてからリア充って見たことなもんね」
「ああ…」
そんな彼女の唇に、拓也は口づける。
甘くもないのに、なぜか甘い。
彼女の唇は、いつも甘い。
「爺ちゃんが言っていたんだ。拓也、お前はリア充にだけはなるな。リア充になって、親を悲しませたりするな、って。リア充になったら人は爆ぜてしまうーーって」
「タクヤーー」
「だから俺、絶対にリア充にだけはならないよ! お袋や親父を、悲しませたくないからな!」
「うん、拓也、愛してる」
「俺もだよ、由美ーー」
そして二人は、ひとつの影となりーー
海と海鳥だけが、それを見ていたーー
ぱぁん!
直後、小気味の良い音が響いたがーー
やはり、海と海鳥だけが、それを、聴いていたのだ。
〔終〕
お読みいただき、ありがとうございます!




