23 三角と円卓【円卓】
すぺしゃるさんくす!:
はーちゃん(誰やねん!?)、活動報告で紹介ありがとうっ! 郵便屋リターンズは、ちょっと今のとこ思いつかないけど、いずれ……書けると、いいな!!(希望的観測)
背後から声がかけられた。
「パーシヴァル卿ーー貴公、直角二等辺三角形についてどう思う?」
ブリテンの春まだ早く、東からの冷たい風が、彼の頬をなでて過ぎる。
「……直角二等辺三角形、か」
ちょい悪オヤジ風のちょび髭を生やした、いかめしい顔のパーシヴァル卿の眉の間に、皺が寄る。無理もない。
「やつらとは、熾烈な争いを繰り広げてきたーーだが、勝利したのは、我々だ」
パーシヴァルの答えに、問いかけた長い金髪の細面の青年、ケイ卿は、複雑そうな表情である。
「しかし、何といったかな、あの、辺の長さが1:2:ルート3の……、」
「直角三角形か。角度が、90°、60°、30°の、美しい女性だった」
その姿を思い出したのか、パーシヴァルは目をわずかに細くした。そしてそれから、頬を引き締める。
「彼女のことはもう忘れろ。争いのあるところ、悲しみもまたある。ーー我々は、もうあんな戦いを起こさないよう、日々、数学の勉強に励むのみだ」
「パーシヴァルーー貴公。ふっきれたのだな」
「……ああ、ケイ卿」
ここにきてようやく、パーシヴァル卿は金髪の青年ーーケイ卿の質問の意図に気が付いた。
彼はまだ、パーシヴァルが、直角三角形との切ない思い出から逃れられずにいると、そう考えて問うたのだ。
それに気づいた時、パーシヴァル卿の胸には、英国の夏の日差しにも似た、爽やかな気持ちが湧き起こった。
「すまぬな。貴公には、心配をかけたようだ」
「いや、なに」
ケイ卿は朗らかに微笑んだ。
「昨日のことだ。彼女の夢を見てなーーふと、貴公に問うてみたくなった。それだけのこと」
「……そうか。ふっ」
「どうした、パーシヴァル。強面の貴公が笑うなど、天変地異の前触れよ」
「言うな。ーーまったく。口の減らぬ男だな。午後の茶に興じる婦人方のようにべらべらと喋りおって」
ケイ卿は苦笑し、軽く手を挙げると、あとは振り向かずに、城の奥のほうへと歩いていった。
残されたパーシヴァルは、ぽつりとつぶやく。
「……直角三角形。お前のことは、忘れぬ。そして、直角二等辺三角形のこともーー」
敵同士であったとはいえ。立派なやつらだった。
1:1:ルート2。45°45°90°。そんな数字は忘れるべきだろう。だが、彼らとの出会いは。戦いは。ーー生涯、忘れ得ぬだろう。
「まだ、戦いは終わらぬ。ケルト人、ローマ人、ゲルマン人、そして、二等辺三角形ーーブリテンの、我らの戦いは、まだーー」
パーシヴァル卿のつぶやきを聞き咎める者はそこにはなく。王城キャメロットの石の廊下に、それは静かに吸い込まれていった。
〔終〕




