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第三話 覚醒

久しぶりに投稿します。

帝国。


ルーンバイト王国やエルフィナ王国のようにとある一族が常に皇帝となり続ける国家。ただし、ただ帝国と呼ばれている。


どうして帝国なのかはいろいろな諸説があるが、一番有力なのは国はあくまで民のものということだ。ただ、帝国はルーンバイト王国の周辺国家の中でエルフィナ王国並みの軍事力があり、小さなルーンバイト王国は帝国とエルフィナ王国と板挟みになっていたりもする。


ただ、僕とリヨンが親友だからこそ、帝国もエルフィナ王国もあまり手を出さないし。


そんな帝国の首都である帝都に向かって僕は前を走る馬車を追いかけていた。馬車の荷台にはリヨンと帝国側のルーンバイト王国に来た使者が乗っている。


別にリヨン達が目上だからじゃない。何故なら、僕は走りながら飛来してきた木の槍をギリギリで避けていた。


「ほらほら、よそ見をしていると怪我するよ」


「殺す気満々だよね!? というか、何でこんな場所でまで訓練しなければいけないんだか」


「ギルはまだまだ未熟者だから。私に勝つつもりならこれくらい簡単にさばけないと」


エスの姿は見えない。だけど、声は聞こえる。


近くにある森の中を併走しながら攻撃を仕掛けてきている。ちなみに、気配を察知出来なければ即死級の攻撃が飛んでくるけど。


荷台にいるリヨンはともかく使者のおっさんは完全に目を丸くしていた。まあ、ルーンバイト王国に手が出にくい理由を再確認しているのだろう。


ルーンバイト王国の双剣と呼ばれる二人の内の一人の力を。


「ギルバート、当たれ」


「満面の笑みで言うな! これでもエスは手加減しているんだぞ!」


「あれ? もしかして、本気が良かったの? わかっていたなら殺す気で行くのに」


「いいわけないから!! 今日一日で帝都につかないとは言えこんな訓練むちゃくちゃだろ! エスが本気を出せば僕なんて瞬殺だろ!?」


「瞬殺じゃないよ。刹那で殺す。つまりは刹殺だよ」


「知るかー!!」


飛んでくる木の槍を避けながら僕は叫ぶ。レイピアを抜くのは最終手段にしたいから今は身体能力だけでどうにかしないと。


エスが本気になったら本当にエスが言う刹殺になるだろうけど今はそんなものをくらうわけにはいかない。


右から来る木の槍を減速して避けながら前を通り過ぎた瞬間に地面を蹴って前に出る。それと同時に後ろを何かが通り過ぎる。


左右からの攻撃ってある意味反則だろうに。


そう思いながら溜め息をつきつつ軽やかに回りながらステップを踏む。降り注ぐ木の槍を軽々と避けながら少しだけ距離の空いた馬車へ駆ける。


エスならこういう時に上から来るけど、今回は多分、横。


僕が大きく飛び上がった瞬間、走っていたならレイピアを抜かなければ回避出来ないくらい大量の木の槍が飛び出していた。


僕はにやりと笑みを浮かべながら木の槍の上を通り過ぎ、馬車を飛び越えた。


あれ? 馬車が止まってる?


「どうかしたのか?」


僕が馬より前に着地した時、リヨンが馬車の業者に話しかけていた。業者は不思議そうな顔をしながら馬の首筋を撫でている。


「すみません。こいつらが急に止まりまして。前に行きたくないような感じで」


「エス」


「はい」


僕の呼び声にエスが現れる。僕はレイピアを抜いて馬車を指差した。


「リヨン達をお願い。僕は前方に向かって見る」


「本当なら反対したいところだけど、ギルバートよりもリヨンの方が優先順位が上だし」


「はいはい。どうせ僕は養子だよ」


「そう言う意味じゃないんだけどな。ともかく、気をつけて」


「わかってる。エスも頼んだ」


僕はレイピアを肩に担ぐとそのまま全速力で駆け出した。魔法効力文字を最大限まで使った時の加速はエスが七分の力で走った時に匹敵する。


そう考えると、エスってすごいよね。


馬よりも早く、長く駆けながら僕は道を走る。もちろん、異変がないか周囲を確認しながら。


「何かが隠れている気配はないし、何かが起きている気配もないし、一体何が起きて」


その瞬間、臭った。血の臭いだ。一つや二つじゃない。


もしかしたら、馬はこれを嗅いだか本能で察知したのだろう。ややこしいを通り越して嫌な事態だ。


レイピアを握り締めながら臭いがする方向、つまりは前に向かって駆ける。


いつでも戦闘が出来る状況にしておかないと、隠れていた場合はどうしようもない。こういう時にエスの特訓が役に立つんだよな。


「このまま駆けていれば前に、っつ」


前にいた。いや、あった。まるで、潰されたかのように広がった赤い何かが。いや、何かじゃない。原型が人だったもの。


異常事態というレベルじゃない。周囲にはバラバラにされた馬車の残骸と、引きちぎられた馬。周囲に散らばるのは鎧だろうか。


僕は鎧の破片を拾い上げた。ちょうど胸にあたるところだから国の紋章があるはずだ。だから、それで国がわかる。


そこにあるのは平和の象徴であるケリアナの花と白い鳩。エルフィナ王国の紋章。


一瞬で血の気が引くのがわかった。エルフィナ王国の紋章ということは今回の件に対するエルフィナ王国の使者だろう。それがルーンバイト王国と帝国の境目で殺されたなら、


「関係悪化は免れないよね。生き残りはいないのか!?」


周囲を見渡すが誰もいない。全て叩き潰されている。この力ということはアレファントだろう。エルフィナ王国の護衛がアレファント一体に全滅するわけがないからアレファントが複数いたに違いない。


「せめて、生き残っている人がいれば」


『助けて』


声が響いた。頭の中に声が響くが、耳から聞こえていない。つまりは直接語りかけられたということ。


僕はレイピアを握り締め走り出していた。


相手がアレファントなら守りながら戦うのは厳しいかもしれない。だけど、そんなことを言っていたら一生エスやクロムウェイを倒せない。


魔法効力文字を最大まで使って最大限加速する。そして、右の視界の隅で何かが動いた。


「光よ!」


レイピアに光の刃を纏わせ右から迫ってきた何かに叩きつけた。僕の体が大きく後ろに下がる。でも、それで相手の姿を確認することが出来た。


三目の巨人であるアレファント。だが、アレファントに三本の角なんて生えていたか? しかも、身長が8mほどあったか?


今はいい。今はこのアレファントを倒すことを考えないと。


レイピアを鞘に収め腰を落とす。アレファントがこちらに一歩を踏み出した瞬間、アレファントを通り過ぎながら振り返っている。


レイピアを抜き放ちながら全エネルギーを乗せてアレファントの足を斬り裂いていた。


そのまま前に踏み出しながら前に倒れるアレファントを追う。


「『轟閃・真一文字』」


レイピアを纏う光の刃が分厚いアレファントの筋肉を斬り裂いて心臓まで届く。一撃の威力なら一番高い技だが消費が多い。あまり使いたくはなかったけど。


すかさず地面を蹴って走り出す。手応えが普通のアレファントより硬かったのは何か理由があるのだろうか。


「今考えても仕方ない。今は声の人を」


『助けて』


また聞こえた。


地面を蹴って方向を変える。そのままレイピアを肩に担いで加速する。


こういう時にエスとの訓練の成果が出るのも何というか微妙だよね。


「見えた」


視認出来るだけでも三体の、いや、五体の角ありのアレファントの姿。何かを追いかけるように一心不乱にこちらに背中を向けている。


レイピアを両手で握り締め、高く飛び上がった。そして、レイピアを振り上げながら全力で振り下ろす。


「『真一文字・兜割』!」


光の刃は確かにアレファントの首ともう一体の心臓を斬り裂いた。すかさず倒したアレファントを蹴って次のアレファントに向かう。こちらはようやく首を向けたところ。


「『轟閃・真一文字』」


確かにアレファントの心臓を斬り裂いて着地する。そして、振り上げられたアレファントの腕を見ていた。


反応が早い。そう思いながらアレファントの横を駆け抜けて的確にアレファントの心臓にレイピアを突き刺した。そして、レイピアを引き抜く。


飛び散る血を避けながら残る一体に向かって駆ける。だが、残る一体は駆けつけるより早く漆黒の鎧を着た少女によって倒されていた。


僕は小さく息を吐いてレイピアを鞘に収める。


「無事、みたいだね」


漆黒の鎧を着た少女の胸にはエルフィナ王国の紋章があり、その少女に守られるように座り込んでいる華やかな装飾があるドレスを着た少女のどちらにも怪我はなさそうだ。


漆黒の鎧を着た少女が鞘から抜いていた剣を収める。


「助けていただきありがとうございます。失礼ですが、あなたはどうしてここに」


「帝国に向かっている最中に君達の馬車を見つけて助けに来た、というわけ。あっ、自己紹介しないと。僕はギルバート・F・ルーンバイト。君達はエルフィナ王国の関係者だよね?」


「ギルバート・F・ルーンバイト?」


漆黒の鎧を着た少女が不思議そうに首を傾げる。そして、何かに気づいたように頷いた。


「お姉様のご主人様」


「あれ? じゃ、君がエスの妹のクロハ?」


「はい。リューナ姫、彼がルーンバイト王国の有名な王子です」


リューナ姫ということはエルフィナ王国王位継承権第三位を持つリューナ・クロート・アル・エルフィナだろう。かなりの有名人だ。


悪い意味で。


「こいつが? こんな冴えない男が?」


「り、リューナ姫。ギルバート王子は」


「養子の子が私と対等だとでも? それに、帝国の犬であるルーンバイト王国と由緒正しきエルフィナ王国の王女である私がこんなみすぼらしい男と対等だとでも?」


エルフィナ王国の王家には知り合いがいる。エルフィナ王国と帝国は仲は悪いけど、僕とリヨンとエルフィナ王国王位継承権第二位のイクスは昔から交友があってかなり仲がいい。


ある意味、今の情勢があるのは僕達の仲がいいからとも言える。


ただ、その中でもリューナ姫は諸外国からの評価ですらかなり最悪だ。曰わく、傲慢稚気な人間だとか。


「あなたのような犬国家は駆けずり回って周囲を守るだけでいいのでは?」


その言葉が聞こえた瞬間、僕はレイピアを抜き放っていた。


リューナ姫の横にある木を斬り裂く。クロハは剣に手を乗せたまま動いていなかった。


「僕について何を言われようとも構わない。ただ、剣技の腕だけで養子にしてもらった流れ者だから。でも、ルーンバイト王国自体を悪く言うのは許さない。例え、あなたがエルフィナ王国の王女であったとしても」


「わ、私を誰だと思っていますの? エルフィナ王国王位継承権第三位のリューナ」


「だから何?」


言葉を遮りながら言いつつ木からレイピアを引き抜く。そして、鞘に収めた。


「エルフィナ王国なんて関係ない。この後攻めて来ようが別にいい。でもね、その時はルーンバイト王国騎士団が相手になるよ。国を私怨で侮辱すらなら山賊だろうが海賊だろうが王国だろうが帝国だろうが僕達は戦うから。それを覚悟していてね」


「あ、あなたは一体何様のつもりですの? わ、私に、刃向かうなんて」


「僕はルーンバイト王国の王子だよ。そして、未来のルーンバイト王国国王だ」


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