第九斬【三対二】
第九斬【三対二】
「俺は嵐山軍団幹部の一人、英田関谷だ」
「俺も嵐山軍団の幹部、脇田龍之介だ!」
二人の自己紹介は終わった。
「嵐山軍団…か」
幸弘がつぶやいた。その表情はどこと無く知っている顔だった。
「知っているのか?」
大悟が聞く。
大悟と顔を見合わせた。
「ああ。こいつらは、北部で有名な軍団だ。絶対、あなどるな」
幸弘は震えていた。
いつも強気のはずだった。
「…そうか」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ!」
龍之介が突っ込んできた。
「くっ…」
ガキィン、と刀と刀が重なる音だ。
大悟が受けていた。
炎上している屋敷内では、暑さも気をつけなければいけなかった。
大悟の体力は疲労が大きかった。
「くそっ…」
「どうした?もう終わりか?」
龍之介は強い。
速さが特に強い。
しかし、威力はあまり強いほうではなかった。
「……相手の隙を見つけ、一気に…」
大悟がそう呟いた瞬間だった。
龍之介の刀は弾かれた。
「なっ…」
大悟は早かった。
「斬る!」
龍之介の背中には斜めに切られた跡から鮮血が吹き出た。
「ぎゃあああ!関谷!関谷ぁぁぁ!」
「りゅ…龍之介!?」
大悟は刀をしまった。
「…フン」
「龍之介に一撃を加えるとはな…俺が行く」
関谷はそう言って前に出た。
「次は一人じゃないぞ」
鉄心と幸弘も前に出た。
「…いいだろう、何人でもくるがいい」
関谷の余裕は強かった。
「遠慮無用!」
鉄心が切りかかる。
「覚悟してもらおう」
幸弘も切りかかる体制に入った。
「誰が何人集まろうと、俺の前では無効化だ」
関谷は大剣を持ち、刀を弾いた。
「なっ…!」
幸弘はその大剣の餌食にされた。
「喰らえ!」
関谷の剣が迫る。
終わった。
そう思った時だった。
幸弘は誰かに押された。
そのおかげで剣の直撃を避けた。
「大丈夫か幸弘」
それは大悟だった。
「大悟、お前…」
大悟の汗は多かった。
それだけ疲労も大きい。
「拙者は大丈夫だ」
そのころは鉄心が戦っていた。
「少しはやるようだな…」
関谷が褒めた。
「やかましいわ!」
その発言を無視し、鉄心が攻める。
そして、ある一撃。
それは横からだった。
鉄心は原因を見た。
大悟か。
「拙者忘れないでいただきたい」
刀は関谷の原に刺さったままだった。
「ぐ…こやつら…出来る」
「どうした…関谷」
苦し紛れの龍之介が聞く。
「龍之介、今は退くぞ」
「ええ!?何でだよ!」
龍之介は満足していなかった。
「こやつらは…出来る。今は嵐山殿に報告をすべきだ」
「…わかったよ」
龍之介は背中の痛みを抑えて言った。
「さらばだ、貴様ら」
「覚えとけよ」
こういい残し、二人は去っていった。
残ったのは炎上している屋敷だけだった。