第二十四斬【偽物…】
第二十四斬【偽物…】
「覚悟しろ…龍二!」
大悟が叫ぶ。
それで一瞬敵は怯んだ。
その瞬間を狙い、大助と越美のコンビで敵を確実に倒していった。
「くっ…何をぉぉぉ!」
龍二が叫び、突っ込んできた。
「うぉぉぉ!」
大悟も同じく突っ込む。
刀は重なり合い、こすれる音が聞こえてくる。
「くっ…ぅぅぅ」
「このぉぉ!」
大悟が踏ん張り、押し返した。
「なっ…」
その瞬間、龍二の胸は切られた。
「ぐぁぁ…」
龍二の胸から鮮血が飛び出る。
「……斬った」
しかし、龍二はまだ立っている。
「まだ…まだ」
「しつこい奴だ…拙者に、ここで、倒されれば」
大悟の言葉は途切れた。
「くっ…」
大悟も大分疲労が激しい。
「どうした?もう…終わりかよ」
「まだまだ…お前を殺すまでは…」
大悟はそれでも立とうとする。
龍二は刀を構えた。
「闇刀にゃあ、誰も勝てないんだよ!」
刀が大悟を襲う。
大悟は腰を斬られた。
「ぐぁ!」
大悟の腰から流血する血。
「どうだ!思いしったか!」
龍二はまだ立っている。
大悟の踏み込みが甘いのか、龍二の体が鍛えられているのか。
「拙者は…まだ…」
大悟はそれでも立った。
大悟の顔は汗で濡れている。
「喰らえぇぇ!」
大悟の一振りで、刀が弾かれた。
「?」
「なにっ…」
龍二の持っていた刀は、地面に刺さり、割れた。
「なっ何で!?」
一番驚いたのは大悟だ。
龍二はビクともしない。
「フン…」
「貴様!これ…偽物か!」
大悟が叫ぶ。
「そうよ。偽物よ」
龍二が愛想無く言い捨てる。
「貴様っ!」
「止めろ、大悟」
とめたのは幸弘だった。
「何でだ!桜井!」
「こいつはもう戦意喪失してる」
「だからって…」
大悟がそこまで言った時だった。
「もう止めろ!大悟!」
勝也も重治も言った。
「師匠!?」
「そいつはもう戦えない。桜井の言うとおりだ」
「何も、殺すまではするな」
重治の言い切った言葉に、大悟は返答を出来なかった。
「…その刀、本当に偽物だよ」
龍二が言い放つ。
「…」
「それな、俺の兄貴がくれたんだ。これでお前も戦えるようにって」
龍二は語り始めた。
「俺の兄貴は、天下一の戦人だった。刀を振るって、敵をなぎ倒して」
みんなは黙って聞いている。
「でも、ある日突然、土地争いで、兄貴が戦場に出された。俺はまだ若いけど、父親も母親もいない」
どんどん話のすじが分かってきた。
「だから兄貴は、俺の一人の家族だった。そんな俺も、戦えるようになりたかった」
「…だから、その刀を」
「そうだ。でも、兄貴はその合戦で殺された。これは兄貴の形見なんだ」
「だったら、何でそんな闇刀なんて?」
大悟が聞いた。
「この名前をつけて、強くなったら、俺にも【家族】が出来るかなって、思った」
「それだけで…」
鉄心の顔がしかめられた。
「だから…許してくれ」
龍二が頭を下げた。
「…その話を聞いたら、許さないわけはいかないな」
大悟が言った。
「でも…」
幸弘が反対をする。
「…いいだろ、桜井、拙者は本気だ」
「…お前が言うなら」
幸弘が賛成した。
「じゃあ!」
「許そう」
大悟も龍二も、ほかのみんなも体はボロボロだった。
「感謝するぜ、大悟」
「ああ…」