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32話 エピローグ


 バクダンマの配信から数日後。

 俺は池袋ダンジョンのロビーへと来ていた。

 〈TS(爆乳)〉姿でそこへ足を踏み入れた瞬間、今まで以上にたくさんの人の視線が注がれるのを感じる。

 おっぱいに、というだけではない。



「あっ、おっぱいチャンだ!」


「池袋ダンジョンを救ってくれてありがとうおっぱいチャン!」


「え? おっぱいチャンって?」


「ほらあの逆バニーの人」


「ああ!」



 うぐっ……俺の二つ名がすっかり"逆バニーの人"になってる……。


 例のバクダンマとの戦いは俺の想像を超えた反響を呼び、すっかり時の人になってしまった。色んな意味で。

 クソッッッ!!

 配信されていることに気付いていれば逆バニーなんて醜態さらさなかったのに!

 しかし後悔しても時すでに遅し。

 俺の逆バニー姿は海を超えて国外にまで進出してしまった……。

 最近は外国語のエロDMまでくる始末である。なんてことだ。


 集まってくる探索者たちに笑顔で手を振りつつ、この前池袋が作った個室スペースへと体を滑り込ませる。

 どうしてここに入ったのかというと、もちろん配信をするためだ。

 ダンジョン外でスキルを使えないため自宅配信ができない俺だが、ここであればそれに近いことができると気付いた。

 今日はいろいろと話したいこともあるし、落ち着いた環境で配信を行いたかったのである。

 特に、ライカのことだ。



『おっぱいチャン!!!』

『待ってました!』

『こんにちおっぱい!』

『今日はお散歩配信じゃないのか。珍しいな』

『お、池袋ダンジョンのロビー?』

『今日は逆バニーじゃないんですか!!???』

『他にどんな衣装あるの?』



 開幕早々同接は20万人を突破。雑談配信としては異例の数である。

 大量に押し寄せるコメントに目が回りそうになるのを堪えて、挨拶もそこそこに切り出す。



「今日はみんなが抱いている誤解を解きたくて……その、ライカとの関係は普通の友達です!」



 これが言いたくて今日の配信をしたと言っても過言ではない。

 俺はまだいい。でもライカはアイドル並みの人気を誇るトップ配信者なのだ。俺との仲を誤解されたままでは活動に支障を来すと俺は考えた。

 しかしリスナーの反応はイマイチ。



『ふーん(棒)』

『ソウダッタンデスネー』

『本当のこと言えば良いのに笑』

『まぁそういうことにしといてやろうぜwwwww』


「いや、本当なんだって!」



 そう主張すればするほどリスナーたちの視線は生暖かく、『分かった分かった(笑)』みたいな反応になっていく……!

 クソ、俺がライカとデキてるなんて話が出たせいで妹には「彼女さん、ライカに寝取られちゃったの……?」なんて言われて憐みの眼で見てくるし!

 ライカはライカで「バレちゃいましたね……♡」とか言ってカップル配信しようみたいな提案されるし!

 池袋には「おかげさまで薄い本が厚くなりました」とか言ってクソキモイお礼言われるし!

 クソッ、ここで誤解を払拭させておきたかったのに、どうも無理そうだ……!



「次の話にいきます!!」


『うわwwww強引に話終わらせたwwwww』

『まぁそっとしておいてやれよwwwwプライベートなことなんだからwwww』

『陰ながら応援しています(小声)』

『ううううううううっ…ライカを幸せにしてやれよおっぱいチャン(血涙)』

『ライカガチ恋勢いろんなところで血涙流してて草』



 ごちゃごちゃと言ってくるリスナー共を無視し、俺は話を進める。

 今度の話は嬉しい報告である。



「なんと、収益化申請通りました! イエーイ!!」


『やっとか!!!』

『遅すぎるくらいだけどなwwww』

『え、まだ収益化できてなかったん…?』

『気付いてたけど発表するまで言うの待ってたよwwwww』

『おめでとう!!!』



 リスナーたちからの祝いのコメントが視界を流れていく。

 そんな明るいムードの中、俺は彼らに頭を下げた。



「それであの……配信で見た方も多いと思うんだけど……実は大事なマチェットが折れちゃって……よければその、カンパを……」



 リスナーに楽しんでもらえればそれで十分。金なんていらない――

 そんな綺麗なことを言いたいのは山々なのだが、武器がなければ強敵と渡り合うのは難しい。

 ……とはいえ、どうせ「また逆バニー形態になればいいじゃんwwwww」みたいなセクハラコメントがくるんだろうなぁ。

 なんて。正直リスナーを舐めていたが。

 俺の予想はいい意味で裏切られることになった。



『¥2000

 いつも楽しませてくれてありがとう!』


『¥10000

 あの日池袋ダンジョンにいました。おっぱいチャンのお陰でこうして生きています!』


『¥10000

 おっぱいチャンの戦い、とっても格好良かったです』


『¥5000

 カオルちゃん大好き!』


『¥20000

 前のより良い武器買ってますます強くなって!』


『¥30000

 配信楽しみにしてます!』



「みんな……!」



 思わず天を仰いだ。

 たくさんの温かいコメントに涙がこぼれそうになったからである。

 が、そんなコメントばかりではなかった。



『¥50000

 もっとおっぱい見せて』


『¥50000

 おっぱい揺らして』


『¥50000

 おっぱいを手で掴んで揉んでください』


『¥50000

 カオルちゃんカワイイね‼️もうすこし、胸元を開いて谷間を見せてもらってもいいカナ⁉️』


「おい! 俺はチャットレディじゃねぇぞ!?」



 思わず天を仰いだ。

 配信中なのに呆れてものが言えなくなるところだった。

 っていうかおっぱい関連のコメントのほうが投げ銭の額が高いのなんで?

 ……とはいえ、どのリスナーも俺の配信をわざわざ見に来て、投げ銭までくれる。ありがたいことだ。

 俺はカメラに向かって頭を下げた。



「みんな、いつも応援してくれてありがとう」



 まだまだおっぱいしか見ていないリスナーも多い。

 それでも、一歩ずつ進んでいる感じがある。



「次の配信ではマチェットの素材であるミスリル採集配信やります!」


『は!?』

『ミスリル製だったのかよ!?』

『え、ミスリルって新宿ダンジョン深層でしか採れないんじゃ…』

『さすがはおっぱいチャンwwwwwバケモンすぎるwwwwww』

『ってことは今から新宿ダンジョン深層に潜っておけばおっぱいちゃんといつか会えるってコト!?』

『↑マジで死ぬヤツ出るからやめとけwwwwww』



 いつかおっぱいが霞むくらいの功績を残して、伝説の配信者になってやる。

 その決意を胸に、俺はリスナーたちにこう宣言した。



「お前ら! おっぱいだけじゃなくて戦いも見ろよ!」



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― 新着の感想 ―
完結お疲れ様でした(*`・ω・)ゞ 楽しく読ませていただきました! 完結したので★五つにさせて頂きました(*´∇`*) ←好きな作品でも連載中はちゃんと綺麗に完結させて~って期待を込めて★四つにしてる…
完結お疲れ様です。 毎日更新ありがとうございます。 毎回すごく面白かったです。最高でした。 終わっちゃうの寂しいです。
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