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第6話 変わったキミと、変わらない私と

 あおいちゃんを家に上げることになった私は、玄関であおいちゃんに15分ほど待ってもらうことにした。

 それから、私は走って階段を駆け上がって、『百合棚』と化した本棚をカモフラージュをした。

 激しめな百合モノとか、少しえっちな百合モノを本棚の奥にしまって、軽めの百合モノを手前に並べる。

 それでも隠し切れないものはごそっと本棚から取り出して、ベッドの下に移動する。

 それから掃除機をかけて、消臭剤を振り撒いて準備完了。


「お、おまたせ」


「急に家に来たいなんていってごめんね。掃除とかしてなくても別に気にしないのに」


「そ、そういうわけにもいかないって。ささ、どうぞ、どうぞ」


 そうして、あおいちゃんを部屋に案内すると、あおいちゃんは私の部屋に入るなり目を輝かせた。


「わー、久しぶりのゆりちゃんの部屋だぁ!」


 あおいちゃんは嬉しそうに部屋を見渡して、『へー』とか『ほー』とか言って楽しそうにしていた。

 まさか、あおいちゃんを部屋に招くことになるなんて思わなかった。

 いつにも増してうるさくなった鼓動の音をきゅっと片手で押さえていると、あおいちゃんが本棚を見つめた後に振り替えった。


「凄い漫画の数だね」


「う、うん。あおいちゃん以降友達もできなかったから、自然と集めるようになったの。一人だと時間が余って余って」


 あおいちゃんが見ていたのは、本棚の中でも少年誌とかの単行本が並べてある場所だった。

 元々アニメや漫画は好きだったから、一般の女子高生と比べて漫画の数が多い方だと思う。

 少女漫画が見当たらないあたり、普通の女子高生とは女子力が比較にならないくらい低いかもしれないけど……。


「そういえば、ゆりちゃん昔から絵本とか好きだったもんね」


 あおいちゃんは感慨深そうにそう言ってから、本棚を優しく撫でる。そのときのあおいちゃんの表情は、やけに大人びて見えた。


「物は増えたみたいだけど、あんまり変わってないよね。すごく落ち着く」


「……あおいちゃんは、何か変わった気がする」


 気がつくと、私はあおいちゃんの横顔を見ながらそんな言葉を漏らしていた。

 すると、あおいちゃんが意外そうな顔を私に向けた。

 あ、あれ? なんか嫌な感じに聞こえた⁉

 私はあわあわしながら必死に弁解をする。


「い、いや、変な意味じゃなくてね! か、可愛さが増したし、なんか大人っぽくなったというか」


「ふふっ、急にべた褒めじゃん。まぁ、引っ越してから色々あったからね」


「い、色々?」


 私が少し前のめりになって聞くと、あおいちゃんは目をぱちぱちとさせた。それから、あおいちゃんは視線を本棚の方に戻して続ける。


「引っ越した先が結構田舎の方でさ。私以外の子供たちは小学校に上がる前から繋がりのある子ばっかりだったの。だから、人間関係とか色々頑張んないとだったから、大変だったんだよ」


「す、すごいね。私なんてあおいちゃんがいなくなってから、ずっと変われなくて、ずっと一人だったのに」


 私はあおいちゃんの言葉を聞いて顔を俯かせる。

 昔はあおいちゃんとはいつでも一緒にいたはずなのに、今はすごく遠くにいるような気がした。

 ずっと変わらい私では考えられないほど、あおいちゃんは頑張ってきたんだと思う。視覚的に見て違いが分かるくらいだから、相当頑張ったんだと思う。

 ……なんか、一人過去に残されているみたいだ。

 

 ん? でも、過去に残されているなら、なんで私は今あおいちゃんと一緒にいてくれるのだろう?

 こうして隣にいるってことは、取り残されてはいないのかな?

 なんで、あおいちゃんは今の私にも積極的に話しかけたり、私の問題を一緒になって考えてくれたりしてくれるんだろう?

 そんな疑問が頭に浮かんで、私はぱっと顔を上げる。すると、こっちを見ていたあおいちゃんと目が合った。

 私が体をビクンとさせると、あおいちゃんは口元を緩めて首を傾ける。


「ん? どうしたの?」


「え、えっと、なんであおいちゃんは今でも私に優しくしてくれるの?」


「なんでって、あんなに仲良かったんだもの。そんなに変なことじゃなくない?」


「へ、変じゃないよ。でも、あおいちゃんって友達多いから、隣にいるのは私じゃなくてもいいのかなーなんて、お、思っちゃたり」


 私はハハッと笑って誤魔化すようにそう言った。

 自分で言っていて情けなくなる話だが、自分なんかといるよりも、他の陽キャな友達と一緒にいる方が楽しいと思う。

 ……凄い答えずらいことを聞いてしまった気がする。

 私が恐る恐るあおいちゃんを見ると、あおいちゃんは小さく唸って考えてから続ける。


「……変わらないでいてくれたからかな。変わろうとして色々頑張ると肩に力が入るの。でも、変わる前の私を知っているゆりちゃんといると、肩に力が入らないで落ちつけるから、一緒にいたいと思う。そんな感じ」


 あおいちゃんはそこまで言うとニコッと笑みを浮かべた。

 私はその笑みにどきっとしてから、視線を逸らす。

 それから、私はきゅっと胸元を軽く握って口元を緩める。


 あおいちゃんの言葉を聞いて、少し気持ちが軽くなったのを感じた。

 人見知りやコミュニケーションが苦手な人は、それを直すのが正解だという風潮が世の中にはある。

 でも、別に変わることが正解という訳でもないのかもしれない。

 もしも私が変わっていたら、あおいちゃんとこんなに一緒にいることがなかったかもしれない。

 そう考えると、今の自分を悲観し過ぎないでいいような気がした。

 それでも、いつか変わりたいと本気と思うことがあったら、私もあおいちゃんみたいに頑張りたい。

 そんな前向きな気持ちが胸の中に湧いた気がした。


「ゆりちゃん。それで、どれを見てせくれるの?」


「え?」


 私が一人ほっこりとしていると、あおいちゃんがきょとんとした顔で首を傾げた。

 あれ? いい話で終る流れでは?

 私があおいちゃんと同じように首を傾げると、あおいちゃんが本棚を指さした。


「百合漫画とか百合アニメとか観せてくれるんでしょ?」


「はうっ。あー……えっと」


 そうだった。元々その約束があって、あおいちゃんはうちに来たんだった。

 私はあわあわとして、おすすめの奥にしまったはずの本を取ろうとしてぐっと堪える。

 百合を初めて見る人に、ガチ百合系は抵抗があるに決まっている。

 そこまで考えたところで、道中であおいちゃんに勧める百合作品をピックアップしていたことを思い出した。


「さ、最初はアニメとかの方がいいんじゃないかな。入りやすいし」


「そうなの?」


「う、うん。そっちの方がいいはず。ちょっと待ってて」


 私はノートパソコンを立ち上げて、アニメの配信サイトを開いてそれをローテーブルに置いた。


少しでも面白かった、続きが読みたいと感じてもらえたら、

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何卒宜しくお願い致しますm(__)m

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