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尋ね人の東日録  作者: 播磨
幼少期の日記
5/8

話の方向性重くなってきた?

春の刻36


姫様の側近公認があって二週間が経った。

この二週間の間に姫様が部屋から出ることから始まり、今は庭まで散歩に行けるほど部屋の外に出られるようになった。

その合間合間に鍛錬したり、勉学をしたり、マナー指導をしたり、罰である当番をこなしていたりと相変わらず毎日が大変で楽しい日々である。

姫様の側近になったということで鍛錬の内容もだいぶ厳しくなってきてやりがいが出てきた。

それと万が一にと考え毒や薬に対する耐性をつけるようにもしている。

小さいころから慣れていけば多少耐性はつくと聞くし、ついていて損…はあるだろうけどやらないよりはマシだろう。

それと二週間を過ぎたことによりニコラスが王宮に来れるようになった。



「あいぼー!ひっさしぶり~!オレに会いたかった?手紙出したんだけど読んでくれた?」


「毎日送って配達員さんを困らせないでよ。最初の二日は読んでたけどそこから読んでないよ。姫様のこともあるし」


「あ、手紙送ってくれたの読んだよ!姫様の側近、改めておめでとう。でも側近になってオレとの時間も減るって考えると複雑なんだよね~」


「側近と召使だからって四六時中一緒にはいないよ。護衛というのもあるから鍛錬中は離れてるし、姫様がおけいこの時間の時は暇あるしね。あ、鍛錬一緒に受ける?二週間前に約束した勝負ならその時に出来ると思うけど」


「手伝ったやつね。勝負内容は何にしようか。剣術でもいいし魔法もいいよね~。学術でもいいしかくれんぼみたいに遊びでの対決も面白そう!」



ニコラスがう~んと楽しそうに頭を悩ませている。

手紙が毎日来たことには驚きだったが、作戦の協力者でもあるため報告と称し一度手紙は送っておいた。

振り返って手紙を書いていて思ったが、『一から十までここは共感してほしいとかここは拒否してほしいなどなんでもいいので教えてください』って言った自分の言葉はAIに近いのだろう。

実際AIも最初は学習しない限り自分の思う通りに動かないし。

ニコラスが悩んでいるのをボーっと眺めていると、遠くから走って戻ってくる人影が見える。

祖父から直々に送られてきた武術と魔力の鍛錬の先生であり師でもあるソーハウ・メアランド先生がランニングから帰ってきているのだろう。

ソー師匠は一言でいうと強い。

武術も魔力も強いのはもちろんだが、外見も一目で分かるし記憶に残りやすい。

おまけに博識で男性女性のどちらの理解もあるため相談しやすい。


「あっら~こんなところにいい男がいるじゃない。もしかしてイヴちゃんが言ってたお友達?もう、早めに言ってよ~。お化粧の時間をしてくればよかったわ」


なにより、このお方はおかまという部類なのである。

体は筋肉がもりもりのボディービルダーのような漢だが、口調がお姉であり心は女でもあり男でもある。

メアランド家はレリブロー家と同じ侯爵家だがソー師匠が一代で築いたものであり、その内部の情報はあまり知られていない。

興味本位で一度恋人や奥さんは居るのかと聞いてみたが「秘密♡」と照れながら言われ、手加減はされているが関節技を決められた。

勿論周りからは変なものを見る目で見られているそうだが、ソー師匠自身は気にしていないらしい。

おかまに対しアニメなどで見た偏見から面白い人だということしかないため、この人が先生だと紹介されたとき自分はガッツポーズをした。

ニコラスは声の主である師匠を目にすると、目が見開き驚いている様子だ。

前々から師匠の話はしていたが、やはり実物で見ると驚きなのだろう。

話を聞いている時の様子から特にそういう系統に嫌悪感を抱いている様子でもなかったため、大丈夫だとは思う。


「え⁉相棒がオレの事紹介してくれてたんですか⁉どんな風に⁉」


あ、そっち⁉


「顔が整っていて魔力も優れていて学もある相棒だって言っていたわ。確かに可愛らしい坊やね。イヴちゃんにぴったりだわ」


「へ~~。相棒ってオレのことそんな風に思ってるんだ~。」


「顔が整ってるのは本当だし魔法の腕も頭もいいだろう。私は本当のことしか言ってないぞ、その揶揄うような視線やめな」


「そっそうなんだけどさ~、もうちょっと照れたりするものなんじゃない?ほら、褒めてるとこをその本人に聞かれるのって恥ずかしいじゃん?」


「褒めることについては恥ずかしくはないだろ。照れるようなことも言ってないしね。多分、『オレのことどう思ってる?』って聞かれたら同じこと言うよ」


「え~…、相棒ってそっけないようで実はオレのことかなり好きな感じ?」


「そっけないようにしてはいないと思うけど、そんなにそっけない?」


「なんか一線引いたような感じしてたんだよ。それで、オレのこと好き?」


「好印象ではあるから部類的には好きだと思う」


「おッおう…。そんなはっきり言われるとは…」


「相棒って言ってくれるってことはアンタも私のことは好印象だと思ってくれてると思うんだけど」


「もちろん相棒のことは好印象だよ~。でも好印象と好きってなんか違くない?」


「好きにも種類があるじゃん。好きな食べ物がイチゴだったとして、イチゴを恋愛対象としているわけにはならないでしょ?それと同じ」


「確かに…!そう考えたら好きって言っても何にも問題ないね!」


時と場合によっては問題にはなります。


「問題にはなるからあんまり言い周らない方がいいんじゃないかしら。それに、いざ好きな子ができたときにあまりにも好き好き言いまくってたら効果がなくなるわよ。」


「そういう時は愛してるって言った方がいいですよ師匠。愛してるは好きの上位互換です」


「好意を伝えるのって大変なんだね」


「だからと言って、愛の言葉を囁きまくってる輩は気をつけなさい。誰彼構わず愛を囁く輩は、不貞行為をしてくる、もしくはしている可能性があるわ。」


「「体験談ですか?」」


発言直後、自分とニコラスは師匠にしごかれた。

「乙女の古傷を聞こうなんて無粋なことは考えないの」らしい。

「乙女…」と言えば睨まれた。

これ以上言うとまた関節技を決められそうなので黙っておこう。


「そもそも不貞行為するような奴には引っかかりませんよ~」


「甘いわよ坊や「あっオレ、ニコラス・ホークジークって言います。」そう、じゃあニコちゃんね。いいニコちゃん、そういってる人ほど引っかかりやすいものなのよ。もしくはする側になる可能性だってあるわ。」


「浮気は確かに悪いことですけど、一人だけを愛するなんて本当にできるんですかなね。だって世界にはいろんな人がいて一人だけしか愛せないなんてもったいないじゃないですか。」


「じゃあ例えば、イヴちゃんがニコちゃん以外に相棒を作ったらって予想してみて?」


空気に徹してたのに!

師匠の方を見ると今度はウインクされた。

何を期待しているんだこの人は…


「相棒って一人だけしか作れないんじゃないですか?」


「確かにそうね。ならイヴちゃんがニコちゃんから他の人に相棒を乗り換えたとしましょう。ニコちゃんの目の前で相棒~って言いながら他の人の元に行くイヴちゃんをどう思う?」


ニコラスは真剣に想像しているのか顔から笑顔が抜けた。

自分ももしニコラスが相棒を乗り換えたことを想像してみた。

きっと自分の力不足でニコラスは離れていったのだろうと予想できる。

少し悲しいが友人が高みを目指すのに協力できる相手ができたことは喜ばしいことだ。

その時が来たら、自分は賞賛の言葉を送って清く身を引こう。

覚悟をそっと決めニコラスの方を見ると、あちらも自分をじっと見ている。


「…オレが相棒でしょって腕をつかむと思う。だって相棒はオレだけの相棒だもん。」


「それが独占欲ってやつよ。独占欲があるから、人は一人だけを愛することが出来るの。それとその時の他人に向けた感情は嫉妬って言ってやきもちとも言うわ。」


「なるほど…。なら相棒は?相棒はオレが他のヤツを相棒って呼んだらやきもちを焼いてくれる?」


「他に仲いい子ができたんだな~って思うかな。安心して、もしそんな相手が現れたらそっと身を引く準備は出来てる。」


「なんでぇ⁉」


「だってその新しい相棒さんに失礼だし、それに相棒を変えられたってことは何か理由があるんだと思うからね。もしやきもちを焼かせたくてって作戦なら、私には逆効果だしね。というか逆効果にしかならないと思う。」


「そうよニコちゃん、やきもちって心身共に疲れやすくて傷つくものなの。燃えた火がいつか冷めるように、嫉妬しすぎると冷めるものなの。たしかに嫉妬をされるのはうれしいことだけど、嫉妬はしたくないでしょう?自分の嫌なことは好意的に思っている人には特にしてはいけないことよ。じゃないと、好意的に思っている人から嫌われちゃうわ。」


「難しいんだね、恋愛って。ねえ相棒、これからオレ以外に相棒は作らないでね。」


「アンタが私を相棒って思い続けてる限り、私はアンタの相棒なんだと思うよ。もしニコラスが私を相棒という括りから外したとしても、私は他の相棒を探そうとは思わない。だから私の相棒は生涯、アンタだけになるね。…ごめんキモイ?」


「キモくなんてない!そんなことを思ってくれてたんだって…とっても嬉しくて…。相棒は、あんまりオレのこと相棒って言ってくれないからさ、オレは相棒じゃないんじゃって…思ってて」


「私は出来るだけ、名前で呼びたい派だからね」


「ふふ、青春ね~」


その後ニコラスも今後は鍛錬に付き合うこととなり、今後はこの三人で日々鍛錬していくらしい。

ちなみに勝負はどうなったかというと三人で徒競走になった。

もちろん師匠がぶっちぎりで勝利している。

勝利した師匠からの命令で腕立て腹筋背筋スクワットを各100回するか相手をニックネーム呼びにするかと、天秤にのせると明らかに傾きそうな二択を出された。

ニックネーム呼びは特に支障はないし、今から各100回なんてしていたら姫様のところに行く時間に遅れる。


「ニックネーム呼びで」「各100回で」


ニコラス、もといニックは各100回を終わらせるまで帰れませんをやることになった。

相棒呼びも見方を変えればニックネームか。

そう思うと元からニックネーム呼びの時点でほぼ一択だったんだな。


「がんばれニック。応援してる、じゃね」


「おう!相棒も姫様のお世話頑張れ~」


といってニックは腕立て伏せを開始しだした。

度々思うが、ニックの中で私の名前は相棒になっているのではなかろうか。

そう思いながら急いで風呂場に向かう。

汗を流して清潔な服装で姫様を迎えなくては。


____________________________


風呂場で汗を流しとって着替え、急いで姫様のお部屋に向かう。

まだお稽古の最中だったようで間に合った。

稽古中の姫様を見ていると、この二週間で大分変化がみられる。

家族と話し合うことから始まり、今では城内の使用人さん方とも少しだけ話せるようになった。

側近が公認になり姫様が家族と久しぶりの会話を行った後、引きこもる前よりも明るくなったと国王陛下と女王陛下、そして王子殿下お二人からも感謝をもらった。

自分としてはただ無礼を働いていただけだと思っているので素直には受け取りずらいんだが…。

それにしても兄であるリオマー王子も弟であるイルジー王子も、そして国王夫妻のお二人も姫様のことを溺愛しているご様子だった。

姫様にそのことを伝えてみると

「知ってるわ。ずっとあんな感じなのよ」

と困った笑顔でおっしゃられていた。可愛いかった。

前々から家族仲がとてつもなくいいということはよく聞いていた。

実際に見て尚更、姫様が引きこもった理由がわからなくなる。

王族という責務の重さ、家族からの期待などの身内の要因に押しつぶされそうになっていたのもあるのだろう。

しかし三年前から、つまりは五歳の頃から先過ぎる未来について頭を悩しているとは想像しにくい。

となれば外部からの要因で引きこもって、そこから悪い方向にしか頭がいかなくなったと想像する方が容易い。

身内以外の外部…メイドさん方、執事さん方、騎士の方々が主に城内にはいるが共に行動していてもそのような貶すなどの会話や殺意は感じない。

むしろ好意的なものの眼差しでしかなかった。

この三年間で新しい人員は、私以外増えていないと聞いたことから、メイドさん方、執事さん方、騎士の方々は原因ではないと候補から外している。

確か姫様はあの日『殺されそうになったり聞こえてくる陰口の日々』と言っていた。

怒りが表に出ているときはその人の本性が出てくる、だからこれについては嘘じゃないのだろう。

殺されそうになったというのはどこで起こったことなのだろうか…。

それに聞こえてくる陰口の日々というのも毎日言ってくる誰かがいたような言い方だ。

原因を探すにしても情報が少なすぎる…。

姫様に無理をしてトラウマを呼び起こさせたくはないし…


「ヴ…イヴ!大丈夫?さっきからだんまりして貴方らしくないわよ?」


姫様のお声で意識を現実に戻す。

お稽古の時間はすでに終わったようだ。


「申し訳ございません。少し考え事をしておりました。」


「またいつもの考え事?今回は何を考えていたのかしら」


「姫様のことです」【即答】


「率直ね~。(わたくし)のどんなところを考えていたの?」


「今日もお可愛らしいなと思っていまして。そんな姫様にお茶会の招待状が届いていましたので、姫様の可愛さが城内以外の方々に知れ渡ってしまうなと嬉しいような自分だけ知ってればよかったのにという感情がせめぎあっていました。危うく、この招待状を破っていたかもしれません」


「!お茶会……」


招待状を姫様に渡した。

後半の推しを布教できる歓喜オタクと同担拒否のオタクの両方が出た自分の言葉が聞こえなかったかのように姫様はお茶会と聞いた途端、顔が怯えるように青ざめている。

側近になった次の日にお部屋家ら出てまずはご両親に「その元気な姿を見せましょう」と部屋から出そうとした時も何かにおびえる顔はしていなかった。

ご兄弟のお二方と会いに行きましょう、城内をお散歩しましょう、お稽古を受けてみましょう、メイド長さんに相談しましょう、と城内の誰かと必ず面と向かうような提案をしても怯えるようなことはなかった。

やはりトラウマの主な原因を作ったのはは城外の人間のようだ。


「ポネット様に会うのはお嫌ですか?」


招待状の送り主はポネット・ドニーテン様。

モカ様とは従妹という関係性であり同い年だ。

明るく元気で歌とダンスがお上手で国民からの人気も高い。

この数日間に何度かお会いしたことはあるが、姫様がお部屋から出てこれたことに喜んでいる様子だった。

姫様と同じ瞳である青い瞳と茶髪にも見えるオレンジ色の髪。

姫様の方もポネット様を見かけた際は駆け寄っていたほど二人の仲はとても良好だ。

ポネット様も身内だし、それにあの様子から見るにトラウマの原因ではないだろう。

だとするとお茶会に来る貴族のうちの誰かだろうか…。


ポネット様のお茶会は毎年春に行われることで有名だ。

ポネット様のお母様のご実家が保有する領土は花の名産地として知られていて、花の一輪一輪が芸術品のように綺麗だと有名だ。

勿論お屋敷も花がたくさんの花に囲まれていてその中でお茶会をするのだ。

日本でいうお花見のようなもんだな。

まぁ、私はお花見なんてしたことはないから適当にそう思っているだけだが。

春全般は花粉症で外に出るのも嫌なのに、なぜわざわざ花粉を浴びに行かないといけないんだ。

外国では花粉症の人の数が非常に少ないとどこかで聞いたが、杉みたいなアホほど花粉をまき散らす木がないからだろう。

ヨーロッパ文化に近いこの国も杉も檜もないため、今の人生では花粉症にはなっていない。

春に呼吸を悩まず過ごせることにこの世界に初めて感謝した。


「断られますか?」


「…いえ…。…今の(わたくし)は前までとは違うのよ…!」


体が震えてはいるが反応的にお茶会に行くようだ。

久しぶりに姉さんとも会えるかもしれないなと思いもありつつ、警戒を強めないといけないと覚悟を決める。

ポネット様にも連絡もしておこう。

トラウマはそう簡単に断ち切れはしないが、向き合おうとしている姫様を守ることは出来る。

今日、護衛としての最初の任務が決まった日であった。


内容:恋愛観とトラウマ

感想と反省:

・今思うと恥ずかしいこといっぱい言った気がする

・師匠とニックが初対面で秒で仲が良くなったことに驚きが隠せない(これが陽キャ…)

・相棒って聞いていると某超能力者主人公の漫画を思い出すな…

・姫様の急成長がすごい伸びをしている

・ボーっとする癖はせめて姫様の前ではしないでおこう


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