異世界の八歳ってかなり大人びてるね
日付:春の刻19、20
ナイフで刺されているわけではない腹部の傷は三日目には塞がっていたためもう王宮に泊まる必要はない。
はずなのに、自分はまだ王宮に居る。
理由は、王国陛下直々に体調と傷の具合を聞きに来られた際にお声をかけられたからだ。
「そういえば君はフリーク家の訓練に参加して興奮して帰ってきたって聞いたのだけれど、もしよければモカの側近になってほしいんだ。」
国王陛下は滅多なことがない限り命令や強制はしないお人だ。
その時の顔つきも娘を心配している父の顔で優しいものだった。
【ちなみにフリーク家は母の実家であり公爵家の一つ。武術系が優れていて王宮騎士の訓練指導なども行うほどフリーク家に生まれる方々は皆猛者揃い。訓練の内容は若い成人男性でも泣くくらい過酷で、年齢に関係なく行われる指導は飴と鞭のバランスはとれている。】
訓練に対しては自分の実力が知れたし、なにより現役の騎士の方々の筋肉は程よく引き締まっていて興奮していただけだ。普通に訓練はきつかった。
側近になるのは気持ちとしては構わないと思っているがまだ未熟な自分に出来るだろうかという不安もある。
「もちろん君だけの判断に任せるわけではないよ。ちゃんと君のお父上にも伝えるつもりだ。私が娘の側近を勝手に推薦したなんてモカからしたら迷惑なんだろうけど、君ならモカを外の世界に連れて行ってくれそうなんだ」
「…前向きに検討します。すぐには決められないのでもう少しお時間をいただきたいです。」
「!ああ、もちろん大丈夫だ。その間に君のお父上にもそしてフリーク家の先代頭首とも話をしておくよ。ありがとう」
そう言って部屋から出ていったのが刻の13のとき。
そこから二日後に父と祖父との話し合いの元、側近になることが決定した。
しかしいざモカ様と会うとなると、モカ様は部屋に鍵を閉め部屋にこもる。
扉をノックをして挨拶だけしている状態がこの日まで続いていた。
ちなみに側近という名の護衛と専属召使もあるようで、現在は住み込みで働いている。
護衛は祖父からの修行時の課題として、専属召使は自分から立候補した。
そのため暇があるときは鍛錬とマナー指導をさせられている。
この世界で生きていくには必要な知識だし、何より経験を積むことに際限などない。
今まで令嬢らしいスカートをはいていたが、執事さん方のような制服のパンツスタイルを準備してもらった。
護衛するにあたってスカートは流石に動きにくいし、そもそもスカートは前の世界から履くのが苦手だったため利点だ。
髪は一本にまとめて、全体を鏡で見た自分はびっくりするほどにカッコいい女の姿だった。
「モカ様、イヴでございます。…本日のお加減はいかがでしょうか」
返答が返ってこない。
流石にショックを受けざる。
扉の前にいつものように食事を置いて、少し離れて時間を置く。
すると扉が少し開き、トローリーを引く白い手が見える。
引きこもった詳細を聞いてみるけれど、三年前から理由もわからず引きこもっているそうだ。
「お困りのようだね相棒」
「察しよすぎて怖いんだけど。」
「オレと会えなかったことに悩んでいたのかな~?」
「昨日も会ったのに悩むわけないでしょ。それに、その察しのよさから大体の悩みは想像ついてるんだろ?」
「ご名答~。モカ様のことでしょ~。相棒が側近になったって聞いて見に来てみれば、会った時の可憐だった印象からカッコよさの暴力に驚いたことはまだ記憶に新しいし。モカ様の部屋のこもりっぷりは流石に知ってたからね~。ね?手伝ってほしい?」
「こういうのって一人で解決するものじゃないのか?」
「そういう規則とかないんだし手伝っても問題ないと思うよ~。それに一人で解決しようとして今のところ成功してるのかな?なら一回他人にも手伝ってもらうのも手だと思うよ~」
「一理あるな…。でも手伝ってくれるにしてもその対価に何してほしいの?」
「ふふん、オレのことをだいぶ分かって来たね。そうだな~、じゃあ何か対決でもしようよ。負けた方が勝った方の言うことを一つ聞くってのでさ。」
「乗った。じゃあまず何個かプランがあるから手伝って」
「早くない?もしかして最初から手伝わせる気でいた??」
無論そのとおりである。
一人で解決するものだとは思ってはいたが、協力することも大事だということも自覚していたため、手伝うという提案を遠慮なく使わせてもらうことにした。
あらかじめプランをいくつか立てておき、そこから一人でもできそうなものを総当たりでやっていただけで他にもある。
ニコラスの手をつかんで私達は外に出た。
ちょうどモカ様の部屋の前には大きな木があり、モカ様の部屋の窓から中の様子を(申し訳ないが)見ようとした。
「…ちなみに聞くが木は登れるか?」
「登ったことないけど…相棒はあるの?」
「(元の世界では)あるが得意ではない」
そのためこのプランは一人だけでは無理かとあきらめていた。
だが手伝ってくれるのなら話は別だ。
脚立…はないため王宮の庭師の方から許可をもらい大きめの梯子を貸してもらった。
「私は下で梯子を持つから、ニコラスが梯子を上って姫様の部屋を見てほしいんだけど」
「男が女の子を窓から覗くって流石に変態のすることなんじゃないかな⁉」
「だって白髪だとさすがに目立つし、それにニコラスは察しがいいから少ない情報でも何かわかるような気がする」
「君もだいぶ察しがいい方だと思うんだけど」
「………高いところあんまり得意じゃない…」
「え…。ふ~~~ん、そっかそっか~~~~。しっかたないな~相棒は~~」
ニコラスはにやにやしながらこちらを見る。
ちなみに高所恐怖症ではないため登れるっちゃ登れるんだが、梯子を持つという生殺与奪の権すら持たれることは断じて嫌なため梯子に登りたくなかっただけであり断じて高所恐怖症ではない。
ニコラスはしっかたないな~と言いながら梯子を上り、姫様の様子を見始めたようだ。
見始めて数十秒後ニコラスは降りてきた。
「モカ様は読書中だったよ。かなり真剣に読んでてこっちの様子は気づかなさそうでよかった。多分読んでる本は最近流行りのロマンス小説だと思うよ」
「あの距離から本のタイトルまで見れるなんてすごいな」
「いや、正直勘だよ。本の色と分厚さとかでかな」
「それでもすごいぞ。その視力、生かせる場がかなりあるから羨ましいものだ」
「あはは、ありがとう相棒。お役に立ててうれしいよ。それで、これからどうする?」
「そのロマンス小説とやらを読んでみようと思う。小説の内容を再現できればもしかしたらお話だけでもしてくれるかもしれない」
「もしお話しできないとしたら、相棒のその後のプランは?」
「扉を蹴破って無理やりにでも話す」
「Wow。命知らずで豪快なプランだ」
さっそく城下町に行き噂のロマンス小説を購入した。
題名は『愛を射る狩り人』。
内容としては、とある狩り人の平民と一国の姫が恋に落ちるというお話。
平民である狩り人は一目ぼれした姫様に、毎日愛の言葉を書いた矢文を送り続けた。
最初は物騒に思った姫様だったが次第に心を開くようになり、狩り人を探すように命じた。
弓の大会が国で行われ優勝者がその狩り人だと信して見守る中、当の本人である狩り人は大会には参加せずにいた。
大会の参加者の中に敵国の兵が紛れ込んでいて狙われる姫様に狩り人は弓で兵の腕を貫く。
そして二人は結ばれたという感じの話だ。
「へ~これが噂の小説の内容か~。こういう感じの小説は何で毎回同じ展開だってわかるのに人気になるんだろうね~」
「そのおなじみの展開までの過程やそれまでのストーリーの構成が作者さん方の違いによって変化するからじゃない?この小説の作者の人以外が書くと、もしかしたら狩り人は大会に出てたかもしれないし、似てる展開と言えど完全に一緒ってわけじゃないでしょ。ないものを作り出す才能もすごいけど、そこから枝分かれのように本質を変えないで全く違う作品を作り上げれるのもその人だから出来ることなんだと思うよ。」
「う~ん。そういうものかな?」
「別に押し付けてるわけじゃなくて、あくまで私個人が思ってることを言っただけだよ。アンタのその思ってることも一つの意見で感想だから大事だしね。賞賛だけじゃなくて指摘も時には大事になるけど、指摘のしすぎは批判になることもあるから。飴と鞭の使い分けは大事だよね。でも主張することは悪いことじゃないから、アンタのそういうところは見習いたい。」
「相棒の視点は面白いね。なら相棒ならこの小説みたいな恋愛はどう思う?こういうのに憧れたりはするの?」
「正直、狩り人が敵国の兵の矢から姫を身を挺して守って死ぬんじゃないかと思ってた。でもハッピーエンドでよかったとも思ってる。こういう恋愛は自分でするより、小説とかで読んだりする方が楽しいから私は憧れない。」
「そっかぁ。なら姫様はこういう恋愛に憧れたりするのかな?」
「それはわかんない、でも一つ考えは思いついたよ」
矢文の再現をしたい。でも弓道はやったことないしなぁ…。
見たことはあるけど実際にやるのとは違うし、何より礼儀を知らずにやるのはやっている人たちに対して失礼だ。
一日二日で上達するようなことでもないし…そもそも矢は危ないから謀反だと思われたら元も子もない。
玩具の吸盤の矢なら…でもそもそも吸盤なんてものはこの世界に普及してないし…。
「相棒?どうしたの黙り込んで?」
「矢文を再現するって考えなんだけど、どう実行しようかで悩んでて…。」
「オレは弓に関しては専門外だよ。それに先端が危ないしね~。あっ!じゃあ魔法を使って出来ないかな?氷で先端を作って刺せたら溶けてなくなるだろうし、浮遊魔法と風の魔法で刺すのも可能なんじゃない?」
「確かにそれなら出来る…かも?」
「やってみなくちゃわかんないよ!あ、でも今からやっても怪しまれそうだし…。そうだ!この小説の狩り人みたいに、深夜に行って、翌日の朝に姫が起きると矢文があるっていうのをやればいいんじゃないかな」
「いい考えだと思うけど…見張りとかに見つからない?それに私は王宮に住み込みだけど、アンタは違うじゃん。」
「え⁉相棒の部屋に泊めてくれると思って提案したんだけど⁉」
異性を自室に招くなんてことは前の世界から父親以外はしたことのない。
いきなりハードルが高すぎる。
友達でも異性というだけで意識してしまうような思考回路の人間なんだぞ自分は。
恋愛感情とかは関係なく、ただそういう経験がないのが原因だ。
基本異性は誰かしら恋人がいる前提で最低限しか交流してなかったからな…。
というより、貴族社会では婚約者であろうと自室に入るという行為は婚姻が成立した後だとマナー指導の際に言われたな。
しかし、風の魔法は得意じゃないし…提案してきたってことはニコラスは出来るのだろう。
婚約者はいないと言っていたし、この様子だとあんまり気にはしていないようだ。
腹をくくれ
「ああ…そういうことか。なら許可を取ってみるよ。風の魔法は任せた」
「…提案してなんだけど、いくら婚約者がいないからって自室に異性を簡単にまねいちゃだめだからね」
「知っとるわ!…安心しろ、泊めると言っても私は今日自室に戻る気はないから大丈夫だ」
「え~、じゃあ相棒はずっと起きてるってことでしょ?駄目だよ!女の人にとって夜更かしは美容の天敵でしょ⁉」
「肌なんて気にしたことはない。まあオールをするのは(この世界でも前の世界でも)初めてだけど、眠くなってもどうにかなるだろ」
「ならないよ⁉それに夜中の作戦を提案しといてなんだけど、いくら王宮といえ女の子一人でいるのは危ないよ!」
「でも他の部屋は借りれそうにないだろうし、一緒の部屋で寝るのは…私の心臓が持たない」
「え?それって、ちょっとは意識してくれてるってこと?」
「意識はするだろう。家族以外の他人と同じ空間で寝る、同性でも緊張するのに異性となれば尚更な。」
何もされないという信頼はあるんだけど、もしものこと…殺人系があってはいけないしな。
寝てるとかなり熟睡するタイプの自分は、寝てる間に殺されるようなことがあれば無抵抗でそのままぽっくりだろう。
ニコラスがそういうことはしないとはわかっていても、一度悪い考えが浮かぶと確証がない限り不安は消えない。
不安要素は少しあるだけでも警戒する方がいいだろう。
それに顔のいいニコラスと一緒の部屋に泊まったなどと知られて、あの令嬢のように嫉妬に染まった憎悪で殺されそうになることも回避しておきたい。
というより今の自分の外見もそこはかとなくいいため、他の人から見たら美男美女なのだろうか?
本人としてこの場にいるんじゃなくて遠くから見て~~~~
漫画とかで見てる側の方がよかった…。
夢系は見ないし苦手だから自分がいざその立場になると無理という感情でしかない。
自分も含めて、オタクとは厄介で複雑だ。
「梯子の時も同じだが、生死にかかわりそうなことは少しでもなくしておきたい」
「いきなり何の話???もー!相棒がちゃんと自室にいないなら、オレは今日帰るし協力できないけどいいの!」
「そっそれは困る。私だけじゃ無理だ!ニコラスの力が必要だ。」
「なら相棒もちゃんと自室で寝ること!いいね?」
「わっ…わかった」
こうしてニコラスが自室で泊まることとなった。
改めて考えると焦って判断をミスったと思う。
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多分深夜12時頃だと思う。
自分とニコラスは昼間と同じように外から姫様の自室の窓があるところまできた。
さっそく作戦開始と思い、手紙を書いたものを括り付けた先端のない矢に鋭利な氷を魔法で作った。
『魔法には火属性、水属性、木属性、雷属性の四属性に主に分かれており、そこから枝分かれのような類似の魔法が存在する。四属性によりその者の強大に使える魔法は変わる。ちなみに自分は無属性に当たるらしく、ある程度の複数の属性を満遍なく使えるらしい。満遍なくなため属性として分けられている人の強力な魔法にはかなわないことが多い。そして異世界あるあるで有名な光魔法に闇魔法はもちろんあるし属性として分類される人は希少だ。補足だが学べば光魔法や闇魔法は使える。これも属性の人が発動する魔法と比較すると違いは大幅にある。』
浮遊魔法も使えるが、生憎風魔法は苦手だ。
なので浮遊魔法を二人で行い、風魔法はニコラスに全任せすることにした。
ニコラスも無属性らしく、特に風魔法が得意で水魔法は苦手らしい。
なので水属性の系統魔法である氷魔法も同様に苦手らしく、私が氷を作った理由はそれにある。
「いくよ相棒!オレが風魔法を展開するまでの浮遊は任せた!」
「承知した。微調整は任せたからね相棒」
弓矢を姫様の窓の斜め上で浮遊させる。
ニコラスが風魔法を展開し、風に乗って勢いよく窓の額縁に刺さった。
氷が解けると窓の額縁に乗っかるちょうどいい位置でもある。
「やったね相棒!大成功だ」
「まだ作戦が完全に成功したわけじゃないけど、まあ達成感はあるね。あとは部屋に戻ってから話そう。見張りが来た」
遠くから光が見える。
自分たちはそそくさとその場から去り、無事に自室に戻ると先ほどの魔法での連携に興奮しながら語り合った。
「まずはお疲れ様。風魔法と浮遊魔法の微調整が完璧で見ててすごかったぞ」
「ふひひひ、相棒の氷魔法も綺麗だったよ!オレたちが協力すれば無敵だな!」
「ああ、そうだな。それにしても魔法の訓練でもしてるのかってくらい魔力の波が安定してたけど、年齢的に早いけど習ってんの?」
「いや独学。早めに扱えたりできた方がいいと思って練習したんだ。そっちも訓練とかしたの?」
「独学でこっそり練習してるだけ。魔法って面白いしやりがいがあるからね」
「オレも同じ理由~。やっぱり俺らって気が合うね!」
おそらく一時間くらいは語り合ったと思う。
思うっていうのは途中から記憶がないからで、多分二人して寝落ちしたんだよね。
あれだけ自室に一緒にいることすら渋ってたのに、他のことに熱心になると違うところに意識が行かないのは直さないとないといけないところだな。
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朝の七時頃だろうか。
メイド長さんがいつもより遅い私を心配して部屋をノックして入ってきた。
寝ていた私とニコラスはメイド長さんの悲鳴で起きることになり二時間の説教を受けることとなった。
どうやら一緒のベットで寝ていたんだそう。
自分でも思うがそれは駄目だろう。
泊まることに決定したときは自分は床で寝ようと考えていたのに。
幸い日頃の行いから不純異性行為などの疑いはなく、ただただ婚約もしていない男女の同じ寝床の使用について怒られた。
私は罰としてマナー指導の時間が増え、当分の掃除当番を甘んじて受け入れた。
ニコラスの方はお父上であるホークジーク家頭首様が急いで王宮に来て、隣に並んで説教をしていた。
「今日から一週間の外出禁止と二週間の王宮に行くことを禁じます!」
「そんな!父さん、あんまりですよ」
「文句は受け付けません!さあ帰りますよ!」
「あいぼ~~~~~」っと悲痛な声を廊下に響かせながら、ニコラスは彼のお父さんに引きずられる感じで部屋から出ていった。
説教が終わり十二時になったころ、自分は姫様の部屋の前に昼食を運んだ。
「姫様、昼食のお時間です。お持ちしましたので、お召し上がりください」
今日も変化はなく、扉は開かなさそうだ。
それでも矢文をしているのでとりあえず扉の前で数分待ってみる。
『姫様初めまして
このような形であいさつすることをお許しください
数日前から側近と護衛と専属使用人として王宮で住み込みをしているイヴ・レリブローです
もしよければお話をさせていただけませんか
本日の昼頃、昼食をお持ちいたします
お話をさせていただけるのなら、扉を三回ノックしていただけますか』
手紙の内容はこうだ。
正直かなり怪しい。
あんなので話してくれるかは賭けだが、話してくれることを願う。
数分待ってもノックの音は聞こえない。
やはり無理だったかと肩を落とすと、扉が少し開いた。
昼食をとるのだろうと思い去ろうとするととても小さく呼ぶような声がした。
「まだそこに…いらっしゃいますか…。…あの…対面ではお話は…恥ずかしいので…扉越しでお話させてください…」
その声は鈴が鳴るように可愛らしかった。
即答で了承し、話を得る機会ができたことにガッツポーズをした。
「お話の機会を下さりありがとうございます姫様。」
「いえ…私の方こそ…ごめんなさい…」
「いえそれは大丈夫です。緊張なさらず気軽にお話しください。私に敬称は不要ですよ」
「は…うっ…うん…。わかった…。それで…話っていうのは…」
やっべ考えてなかった。
いきなりなんで引きこもっているのかなんて聞けないし、話の話題なんて共通の趣味があること前提じゃないと話せん…。
とりあえずロマンス小説関連の話で行くか
「まず矢文を読んでくださりありがとうございます。矢文と言えば、最近流行りのロマンス小説にも出てきましたが姫様はご存じですか?」
「『愛を射る狩り人』だよね!何度も読んでるから知ってるよ。あ…貴方も、読んでたりする…?」
「はいお読みしました。読んだのは最近なのですが、早めに読んでいればよかったなと後悔しています。姫様はどんなところが一番好きでしたか?」
「私は…お姫様と狩り人様が結婚なさるところが一番好き…。…笑っちゃうよね…。私も一国の姫なのに…平民との恋愛の物語を好きなんて…」
「いえ別に。むしろ恋愛への興味があることはいいことだと思いますよ。誰しも幸せになりたいという願いはありますから。そんなことを笑う人なんていませんよ。いるのなら私が何とかいたしましょう。」
「…本当に?私も…恋愛なんてしていいのかな…?」
「むしろしてほしいです。姫様の恋愛するお姿を私は見たいと思っています。恋愛に限らず私は姫様の幸せを望みます。なので、よろしければ貴方様のお手伝いをさせていただいてもよろしいですか?」
「でも…それだと貴方も…自由になれなくなるよ…?いっぱい怪我もしちゃうかもしれないし…死んじゃうかもしれないんだよ…」
「フフ、ご心配ありがとうございます。怪我なんて怖くはありませんし、貴方様の前で死なないことを約束しましょう。それに私が今この場にいるのは私の判断ですよ。そうそう自由はなくなりません。」
「…」
姫様が黙り込んでしまったようだ。
まずいことでも言っただろうか。
もしや地雷でも踏んだか…?
「明日も…またお話してくれる…?」
「はい、喜んで!」
「うん…ありがとう…」
そう言って姫様は昼食のおいてあるトローリーを部屋の中に居れた。
声だけだが姫様と話せてよかった。
同い年だと聞いていたが、八歳にしては責任を感じている中学生のような話し方だ。
そりゃあ王族なら政略結婚などが主になりそうだし、ロマンス小説は俗世のものとされていることもありふしだらだと思っている人もいるそうだ。
ロマンス小説でも政略結婚物などはあるらしいし、そういうので思い悩んでいたのだろうか。
それ以外にも要因はありそうだが、ともかく明日も姫様と話せる機会を本人からいただけた。
やはり同世代の同性と話す方があまり緊張しないな。
この調子で仲を深められればうれしいものだ。
内容:姫様と対面する作戦
感想と反省:
・ロマンス小説はたまに息抜きで読むけど、コミカライズしてほしいものが多い
・自分は乗せられやすい性格なのだろうか…
・姫様の声が可愛すぎる件(萌え声の少女ボイス)
・自分の会話のレパートリーがなさすぎる