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尋ね人の東日録  作者: 播磨
幼少期の日記
2/8

周りに美形が多すぎる‼

日付:春の刻11、12


『前記:

 この世界での両親の表記を父と母として、前の世界での両親をお父さんお母さんとしておく』


今日は書庫でまだ読んでない本を読もうと自室から出るとピリカ姉さんが顔に笑みを浮かべてこちらに歩み寄ってきた。


「おはようございますピリカ姉上。綺麗な笑顔を咲かされて何かいいことでもあったのですか?」


「イヴったら、私たちは血のつながった家族なんだからそんなかしこまらなくていいって言ってるのに…。気軽にお姉ちゃん、あるいはお姉様って呼んでくれていいのよ?」


前の世界でも年上には基本敬語で話してたし、こんな綺麗な人にタメ口で話せるわけがない。

両親の美形をこれでもかと詰め込まれ、顔立ちは父に似て儚げだ。

瞳の色も父に似てブラウンで、髪は母に似た黄金よりの黄色。

表情がころころ変わり可愛い印象を持つけれど、時節魅せる鋭さはカッコよさもある。

礼儀作法も完璧で齢10にして淑女の中の淑女という噂を持っているほどだ。

現在12歳になって美しさが増し、ファンは増え続けている。自分のファンの中の一人だ。

前の世界で姉として姉ちゃんと言われているのに慣れてはいるが、自身の口で言うのは恥ずかしい。

姉上はその中でも特に言いやすかったためそう呼ぶようにしている。

ちなみに父と母にも父上と母上と呼んでいる。

ふざけてはいない。半分は



「お姉ちゃん…は恥ずかしいのでよしてください。そういえば私に何か用があるのですか?」


「そうなのよ!用を話す前にまずはお父様とお母さまのところに行きましょう!」



ピリカ姉さんはそういうとある部屋に手を引いて案内した。

中にはすでに父と母がいて、数人のメイドさん方もいる。



「用っていうのはね、今日のお城のパーティーにイヴも一緒にご招待されたっていうお話をしに来たの。イヴももう八歳なんだし、きっといい人が見つかるわ!一緒に行きましょう♪」



輝かんばかりの笑顔でいう姉さんに思わずうなずきそうになる。

いい人というのは婚約者ということだろう。

ピリカ姉さんは八歳の時にすでに婚約をしていた。

お相手はアルマニ公爵家の長男ヒムトラ様。

お嫁に行く形のこの婚約により、この家は私が婿養子の婚約者を見つけるかホーチマが跡を継ぐかしかない。

そんなことは関係なしに、姉さんは私に婚約者という愛する人を作ってもらいたいのだろう。

姉さんと婚約者のヒムトラ様の中は睦まじく、恋愛での婚約と言っても過言ではないほどだ。

ロマンス小説が好きな姉さんからしたら、妹にも幸せな恋愛をしてもらいたいという願いなのだろう。

目から伝わる『絶対にパーティーに行かせる』という圧がある。

今までそういうパーティーは休んでいた身だからなあ…。



「もうそろそろいい歳なんだし、イヴも観念してパーティーに行きなさい。それに今回は国王陛下主催のパーティーだからね。今までみたいにお休みは難しいんだ。私たちも行くから、一緒に行こう。ね?」


「でも父上、私は…」


「断るのであれば、清く鍛錬の時間はなしですよ。フフ、どうしますかイヴ?」



母が笑顔で愉快に問う。

流石母だ。

鍛錬の時間が無くなれば一気に暇になるし体力も衰える。

いくら貴族と言えど自分を自分で守れた方がいいだろう。

私が断れないことを知っている母からの問いにしぶしぶ了承すると待機していたメイドさんたちが動き出した。

何処から取り出したと思えるほどのたくさんのドレスと装飾品が見え、パーティに行く時間まで私は母と姉さんとメイドさんのお人形になった。

いつの間にか部屋から出ていた父を馬車の中で不満気に見つめていると困ったような笑みをして目線で母を見ていた。

なるほど、父も母には逆らえないようだ。


______________________


お城につきパーティーが始まる前に国王陛下に挨拶をする。



「カフルワ国王陛下、本日はお招きいただき有難うございます」



私は馬車の中で何度も教わった言葉を述べた。

それから大人と子どもでそれぞれ分かれパーティーが開催された。

開催されたと同時に王族の方の周りには人が集まっていく。

第一王子であるリオマー様。

第二王子であるイルジー様。

姫君であるモカ様はうわさでよく聞いた通り今回のパーティーもお休みしているようだ。

私からしたら王子よりも姫様の方を拝見したい気持ちがあったためがっかりしている。

姉さんの方はヒムトラ様と仲睦まじくお話しされているし、ホーチマは父といる。

そう、私は今ボッチだ。

友達でも作りたいところだが貴族の社交場では腹を探るようなお話が多いと聞くため、友情というものは作りにくそうだ。

そもそも前の世界で妹から「男性恐怖症なんか?」と言われるほどあまり異性と話さずにいたくらいの自分に話しかけることなどできない。

同性の子たちはこぞって誰かと話している以上それを邪魔するわけにもいかないし…。

小さなころから恋愛相談を聞きまくった影響で恋愛は見る専になった自分には婚約というものにもさほど興味がわかない。

ただ一人でいると物語上おもしれー女認定になるため王子に群がる女性の最後尾に隠れるように混ざってみた。

話を聞いていると質問ばかりで飽き飽きする。

顔を見るに王子のお二人も愛想笑いっぽいし、質問攻めにつかれているのだろう。

しばらくしてその集団から抜け出したが、せっかくセットしてもらった髪がぼさっとしていた。


両親よりも母方の祖父に似たのであろう自分は、女性にしてはカッコイイ寄りの顔立ちだ。

イケ女にはあこがれていたため喜ばしい。

髪の色は銀髪で瞳の色は黒。

父が黒色寄りで母が白色寄りだったためか色彩が極端に分かれたのだろう。

両親そして両家も浮ついた話が大嫌いなため不貞などはないが遺伝子とは本当に不思議なものだ。

乱れた自身の白い髪を一本にくくり直して落ち着けそうな場所で腰を下ろした。

そろそろダンスでも始まりそうな雰囲気になり、王子を囲む女性たちは勢いを増す。

ちなみに第一王子のリオマー様は婚約者が既にいるが今回は婚約者であるお相手が風邪をひいてしまったためお休みしているらしい。

この機会を逃すまいと息巻く女性たちに単純にすごいなと感想がわく。

あんなに積極的にもなれないしダンスなんて異性と踊れるという自信は私にはないし、そもそもダンスが無理そうだ。

履きなれない靴は靴づれを起こし、今もズキズキと痛む。

男性側も婚約者がいない方は相手を探して声をかけて回っている光景が見える。

出来るだけ気配を消しているつもりだがこちらに来る男性が一人。



「麗しのレディー。よければ僕と一曲踊りませんか?」


「お誘い感謝します。ですがお恥ずかしながら足を痛めてしまいまして、残念ながらご一緒にはできそうにありません。」


「それはいけない。今すぐに誰か呼んですぐに手当てをしてもらわねば」


「いえお気になさらず…」



お互いに微妙な空気が漂い沈黙する。

初対面の男性と話すのは足の痛みよりもずっと耐え難い。

目を見て話すのが苦手なのも相まって気まずさが増す。

ちらっと顔の方を見ると紺色の髪に若葉色の瞳でなかなか顔のいい方だと思う。

正直顔の良し悪しはわからないため感覚だ。

幼さがまだ残っているとはいえ成長したら化けるんじゃないのか?

見すぎていると目が合うのがこういう場面での鉄則なため早々に目線を変えて姉を探す。

見つけた姉の姿は、頬をうっすらと染めて愛おしそうにヒムトラ様を見つめていた。

愛するヒムトラ様とダンスを踊れることに馬車でうれしそうに語っていたのを知っているので、なんだかこちらまでうれしくなる。

遠くから見ても綺麗でかわいらしい。

そんな姉を見ている女性は私だけではなくもう一人いて、食事をしていたのかフォークが握られていた。



「危ない…」



頭の中で危険信号が鳴る。気のせいであってほしい。

でも万が一のことも考えて、私は足の痛みなど気に止めないで姉の元に走る。

淑女としてはあるまじき走り方なのだろうがそんなことかまっている暇ではない。

速足で姉に近づく女性の間に正面で割り込むと、腹部に痛みが生じた。

先端がとんがっているものは勢いをつけて差すと三角定規でも人を殺めてしまえるほどというのをどこかで見たが、正解だったようだ。

自身の腹部に刺さったフォークを見て、「急所じゃないから大丈夫だろ」なんて思っている自身でもずれていると感じる。

刺した張本人の女性は悔しそうに、そしてやってしまったという顔で呆然としている。

このまま自分がこの場から去れば、姉は怖い思いをせずに済むしこの女性は殺人未遂の罪を背負わないで済むのだろうか。

そんなことを考えていられるほど現実は甘くない。

思ったよりも刺さっていたフォークは、ドレスに血の染みをつくっていく。

フォークの取っ手からも血が伝わっていき、綺麗な大理石のタイルの床に赤い液体が滴る。


「ヒッ…」


刺した張本人が怯えたように顔を真っ青にする。

そんなつもりじゃ…とでも思っているのだろう。

私はというとフォークが刺さり血が出るほどの勢いを受け止めきれない腹筋に対し「鍛え方が足りなかったか…」と思えるほど多分冷静だ。

下手にフォークを抜いて出血量を増やすより、このままの方がいいだろうとこの場から動けないでいると騒ぎが大きくなる。

血を見て叫ぶ女性の声とざわめき、集中がこちらに集まる人の視線。

注目されるのは苦手なんだよな。特に何か悪いことでの注目は。

何かうまい言葉が出ないかと頭を回転していると、父が私を抱えて会場を後にした。


______________________


向かった先は王宮の医務室。

手当てをしてもらっている間はアドレナリンが出ているのか痛覚はあまりなかったけど、しばらくすると激痛が走ってきた。

なるほど、これが腹部に刃物が刺さる感覚なのか…。

馬車でこのまま帰ってまた傷口が開くのを防ぐため、しばらく王宮に泊まるという話になった。

ちなみに鍛錬も禁止された。こんちくしょう。

手当てが終わると医師の先生が状態を話す前に姉が泣きながら医務室に入ってきた。



「姉上、申し訳ございません。せっかく楽しみになさっていたのに、パーティーそのものを台無しにしてしまいました。それに姉上と母上から選んでもらったこのドレスも汚してしまい、申し訳ございません」


「なんでイヴが謝るの!ドレスやパーティーよりイヴが死んじゃうかもしれないってことが悲しいのよ!」


「姉上、私は死なないと何度も言っています。ただ刺されて血が出ただけです。どうか落ち着いて」


「落ち着けるわけないじゃない!」



姉は何度も死なないといいっても涙は止まらなかった。

トラウマになってしまっただろうか…。

傷なんかよりもトラウマを植え付けてしまったかもしれないということの方が心が痛い。

なんと声をかけようがきっと変わらないのだろうと早々とあきらめの態勢に入っりベッドに寝転ぶ。

パーティーでの張り詰めた空気と緊張、それに負傷したときの焦りからなどでどっと疲れていたのだろう。寝転ぶと自然と瞼が閉まる。

そのまま眠気に体を預け私は眠りについた。


================================


次の日。

目を開けると見知らぬ天井があった。

しばらく王宮に泊まることになったのだと頭が理解していき窓の外を見る。

だいぶ寝ていたようで太陽は昼頃の位置にいた。寝すぎたか?


コンコン


誰かが扉をノックしている。

家族の誰かかはたまたお医者さんかと思い「どうぞ」と声を出すと、入ってきたのは紺色の髪に若葉色の瞳を持つ少年。

何故入ってきたとかパーティーは終わっているのに何故まだいるとか疑問に思うところは多々あるが、とりあえず愛想笑いをしておく。



「ご容態の方はいかがですか?痛みなどはありませんか?」


「ご心配ありがとうございます。大丈夫です。」


「おや、それは何よりです。フフ、何故ここに僕がいるのか?と聞かないんですね。」


顔に出ていただろうか。

聞きたい気持ちもあるけど、これ以上関わるとこういう場面での嫌な予感は的中するのが鉄則だ。

しかし私にはこの後どうやって丁寧にお引き取りをしてもらう言葉なんてわからない。

というより面白がってないかコイツ?


「聞いた方がよろしかったのでしょうか?」


「聞いてほしかったですね。」


「そうですか…」


メンドクセーーーーーなんだコイツーーーーー‼

これ以上話すとボロがでそうだ…黙っとこう


「はやく帰ってほしいという雰囲気をビシバシ感じますね」


「いえ…ソンナコトハアリマセンヨ」


「嘘がへたくそですね~。そんなに僕とお話しするのはお嫌ですか?」


「誰が不審者とも捉えられそうな人と話したくなるねん(誰が不審者とも捉えられそうな人と話したくなるねん)」


「おや」


やっべ独り言いったような気がする。

気のせいであってくれ…

せめてもの楽しみとして、この世界では敬語の似合うイケ女を目指したいんだ…

口元を手で隠しぷるぷると我慢するような少年を見て切実に願う。


「あははは!やはり面白い予感は当たるものですね」


「急に笑い出したコワ…なんやコイツ」


「予想以上に口が悪い。それ独り言ですか?」


前の世界の悪い癖~~~~~

もう開き直っていいだろうか…

でもこの少年が自分より身分が高い場合もある…


「独り言ですよ。なので聞かなかったことにしてくだせー」


「お断りさせていただきます。もっと貴方を知りたいので聞き耳を立ててでも独り言を聞き取ってやりましょう」


「私は知られてたくねーんで全力で回避させていただきます」


「ではこちらは全力で独り言を出させていただきましょうか」


にやにやと面のいい顔でこちらを見てくる。

物語的によく見るおもしれー物を見つけた目だろう。

しくじったな


「そうですね~。敬語だと独り言を引き出せないかもしれませんので、、こちらもやめにしようか。」


「身分が上かもしれねー相手にはなんちゃってでも敬語は使いますよ。初対面の相手なら尚更で」


「でも初対面じゃないだろ?昨日ダンスを誘ったじゃないか」


「それ素の話し方ですか?だとしたら敬語とか頑張ってたんですね。ダンスは断ったので会話は初対面ですよ」


「えー…オレは初対面だと思はないんだけど。あ、じゃあ身分とか関係なしに敬語なしで話してよ。」


「名前も知らん人にですか~?それはハードル(ハードルってこの世界にあるのか?)…あー難易度が高いですし後から脅されそうでいやっす」


「脅しはしないよ。オレがいいって言ったんだもん。あ、オレの名前はニコラス・ホークジークっていうんだ。今後ともよろしくね、イヴ・レリブローちゃん。」


「あ、ちゃん付けやめてください鳥肌立つキモチワルイ」


「あはは。うんうんその意気その意気。そんな感じでどんどん敬語とか礼儀とかなくしてしゃべってねー」


ここまで立ち話をしていたがさすがに疲れてきた。

とりあえずこの少年、もといニコラス・ホークジーク君を部屋にある椅子に座らせ、向かい合うような形だが自分はベッドに座る。

ホークジーク家は確か海沿いに住む貿易関連で有名な侯爵家と資料で読んだことがある。

ご子息がいることは噂程度で聞いたがほとんど貿易関係で留守や滞在していないことが多いとも言われている。

そのご子息…なのだろうか


「じゃあ聞くんすけど何でこの部屋に来たんすか?」


「君がいたからかな」


「その理由を聞いてんすよ」


「う~ん、どこから離せばいいかな~。まあ最初から話すか!昨日のパーティーの時に君を見つけてさ、綺麗な白い髪だなーって思ってみてると王子に群がっている女の子たちのところに無表情で入ったかと思えば憂鬱だと言いそうな顔で抜け出してきてさ。綺麗で整っていた白い髪はぼさってしてて、鏡を見て気づいた君は使用人を呼ぶわけでもなく自分で髪をくくってさ~。王子の方に行った時も思ったけど義務って感じに見えて面白くなったんだよね。」


そんなに顔に出ていただろうか…。

誰も見てないと思い息を抜きすぎたな


「足がふらふらしてたし、多分靴づれかなーって思ってダンスの誘いをしたんだ。案の定、君は靴づれを起こしていてオレの誘いを断った。断られたら断られたでこのままお話しとこーって思ってたのに、君は急に真剣な顔をして走っていった。足が速いなーなんて思ってると、君の向かう先に不自然な動きの女がフォークをもってたんだよね。それだけならいいんだけど、女の顔は嫉妬で歪むそれだったし何かやらかすんだろうなーって思ってたんだ。上から振りかぶれば即バレるって思うような知識があったのか腰に手を当ててフォークをみえにくくしてさ、早歩きでぶつかってそのまま刺そうとしたのかな。その間に入って、君は腹部にフォークが刺さって血を流し、刺した本人はやってしまったとでもいうように顔を青くしていった。」


あの一連を見られていたとは…

てっきり他にダンスの相手を探していると思っていたのに



「それでなんだけど、今そのことについて会議してんだよね。君のお父さんとこの国の国王さん。あとはその子とその子の父親とか他にいろんな人がいてさ。その子伯爵家だけど侯爵家の子を刺しちゃったわけだし立場は危ういんだよね~。会議の今のところは不注意であって故意じゃないって感じで殺人未遂っていう判断にはならなさそーだけど…あれは故意でやってたし刺さりどころ次第では君は死んでたかもしれないって思うとこのままでいいのかな~て思って君のところに来たんだ」


「この部屋に私がいることが分かった理由なってない」


「あー…オレって王子とはそれなりに仲いいしさ、刺された子がどこにいるのか聞いたら教えてくれたんだよね。で、どうする?君からの証言とオレの証言を合わせたら君のお姉さんに向けたであろう殺意という危険分子が一つなくなると思うんだけど」


「…どうでもいい」


「え~。君も君のお姉さんも怪我を負わされて死んでたかもしれないのに?」


「姉さんに被害が出てたら徹底的に潰してただろうけど、結果は自分が傷を負っただけだし。嫉妬で殺したくなるって動機も(物語的には)よくあることでしょ?」


「そんなことよくあったら殺人なんて起こりまくってるだろうね」


「なんにせよ私は別に怒ってない。まあ次はないからって釘を刺すくらいでいいんじゃないかな?あ、その子のためじゃなくてその子の家族のためにね。その子が別にどうなろうと興味ないんだけど、連帯責任で関係のない人が罪をかぶんのは違うじゃん。私は責任を取るなら本人だけでとってほしいからね。」


「ふ~ん。でもいいのかな?その傷残っちゃうんじゃないの?これから婚約者を見つけるなら、それはまずいじゃん。」


「ちょうどいいよ。婚約とかめんどくさかったしこれで誰からも婚約することもされることもなくなるしね。」


よく見たことがある物語では傷物のご令嬢は婚約できる可能性がなくなっている。

自分からしたら好都合だ。

これから鍛錬するときに大怪我をしても気にする必要がなくなった。

それに関してはあの令嬢に感謝しないといけないな。


「君は婚約したいとか思ったことがないの?女の子とか大抵婚約して幸せになりたいーとか思うんじゃない?」


「それ偏見じゃね?少なくとも私は思ったことがないかな。それに婚約・結婚だけが幸せじゃないし、そういうこというのは他の人には言わない方がいいんじゃない。いつか反感を買うかもよ。」


「まっさか~。誰にでもこんなやばいこと言うわけなくない。そもそもそういう仲じゃない奴には言わないだろうし、こんな思想を言うのも大丈夫だって思った相手にしか言わないよ~。」


「大丈夫判定されてるのかなめられてるのか判定が難しいな。あと仲良くなってるって認識は私はしてないんだけど」


「でも敬語なくしてくれてるじゃん。それって少しは仲がよくなったって思ってくれてるんじゃない?」


「率直に言うと敬語使うような相手ではないと判断したからかな。なめてるんじゃなくて敬語使ってると疲れるような相手ってだけで別に敬語使うような相手じゃないななんて思ってないよ。それとも敬語の方がよろしいですかなニコラス・ホークジーク様?」


「ああやめてやめて。なんか君が敬語で話されるとむずがゆくなる。それに気のおける仲って感じで敬語なしの方がオレは話しやすい。優しい君なら、話しやすい方を取ってくれるよね」


「そんな義理もないでしょうに…まあいっか…」


「やったー!ありがと相棒!」


「相棒になった覚えはないしいきなり抱き着かない!いくら女っぽくなくとも異性を急に抱きしめたら失礼って習わなかったんか⁉」


「そんなの常識的に知ってるよ~。でも相棒は女の子扱いとか苦手そうだし、この衝動は抑えなくても受け止めてくれるって思ってたからね~」


「顔のいい相手が急に抱き着かれるとか心臓に悪いんだけど。恋とかの恋愛感情とかじゃなくて恐怖で。年下だから許すけどさー」


「え?オレたち同い年なはずだよ?」


やっべ忘れてた。

中身は19歳だからこの少年のことを勝手に年下扱いしていた、本来の自分は8歳の少女であることをすっかり忘れていた。

にしてもこの顔と察しの良さとかで8歳とかこの少年大人びてんな。


「ちょくちょく思うけどこっちの情報知りすぎてない?」


「それは秘密でーす」


この後ニコラス・ホークジーク少年となんやかんや昼食も一緒に取り、仲良くなった…と思う。

この世界で初めての友達が異性というのは自分でも驚きだがなんにせよ敬語を使わずに気軽に話せるような相手が見つかりよかった。

よく見る物語とかだとこれがフラグが立ったことになるのだろうが、なんにでも恋愛という方向に思考がいってはならないだろう。

×ではなく+という単位もあることだしそういうことにしておきたい。

というよりこんなんでフラグが立ったなど自意識過剰にもほどがあるだろう。

ニコラス・ホークジーク少年にも失礼だしな。

ともかくパーティーに行ったことでボッチ回避は免れたようだ。


              以上



内容:お城の災難なパーティー

感想と反省:

・鍛錬をもっと積んで腹筋を鍛える

・料理はおいしかった(ほぼ洋食)

・顔のいい男に抱き着かれるのは解釈違い

・顔に出さないように努力しよう

・雰囲気に出さないように努力しよう

・独り言をあまり言わないように努力しよう


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