プロローグ
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BL転生小説/美形×平凡/一部暴力・性的暴力・欠陥・流血の表現があります(その際は事前に前書きにて記載しておきます)
豪華な晩餐会や式典などを執り行っていたシンプルでありながらも威厳のある美しい大広間は、今や見る影もなく無惨な姿に変わり果てていた。
赤黒い液体が床や美しい装飾品を汚し、騎士たちの事切れた姿がそこかしこに転がっていた。
そんな殺伐とした光景の中、床に座り込んでいる俺は真っ直ぐと目の前の青年を見上げた。
銀色の髪に海をそのままガラス玉に閉じ込めたような青い目、陶器のような白い肌をした青年はまるで温室の中で大切に育てられた花のように繊細で美しかった。
しかし目の前に立つ青年の手には血に染まった剣が握りしめられ、青と白を基調とした軍服には返り血が付いていた。
つい先ほどまで青年が人を殺していた証拠だ。
青年はじっと俺を見下ろしてる。
その青い目には無様で滑稽な姿の俺が映っているだろう。
俺は手に持っていたものを床に落とした。俺の手から離れたそれ……オルディウス帝国の支配者であり……父であった男の首が石ころのように床の上を転がっていく。
(ああ……やっと……)
俺は青年に向けて両手を広げた。
ベルナルド・アレニウス・ウォーガン。
オルディウス帝国に滅ぼされたヴァルトス国の王族であり、……ヴァルトス国の希望の光。
そして……。
そして、題名のない小説の主人公。
「ヴァルトス国の王よ。オルディウス帝国の王族は俺で最後だ」
俺は笑った。
俺の願いは叶ったのだ。
あとは悪役の息子として死ぬだけ……。
俺の言葉にベルナルドが動く。
彼の持っていた剣の先端がゆっくりと持ち上がるのを見て俺はそっと目を閉じた。
瞼の裏にこの世界には存在しない自分の故郷の……青い海が広がった。
<ヒリスの最後の願い>