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#083

メディスンは早朝からレジーナと顔を合わせていた。


彼が敬礼をすると、レジーナは楽にしていいと言って椅子に腰かけるように(うなが)す。


二人が向かい合うように座ると、レジーナの表情が険しいものへと変わっていった。


「メディスン大佐、もう話は聞いているな?」


「はい。ミント·エンチャンテッドがノピア·ラッシクと共に帝国へ行ったと」


メディスンは部下からの報告で聞いていたことを伝えた。


連合国上層部の一人――。


パロット·エンチャンテッドの娘であるミントが、自らの意思でストリング帝国へと行ったことはすでに問題になっていたが。


メディスンはそれ以上に、上層部らが帝国と和平交渉をしていたことに関心が向いている。


「彼女のことは残念ですが。問題は帝国に光学兵器を譲り渡しことでしょう」


「メディスン大佐もそう思うか……」


「和平交渉は見せかけです。ノピアは必ず攻撃を仕掛けてきます。上層部は何故そのことがわからないのでしょうか……」


「大佐の言う通りだ。よし、今からでも上層部に掛け合ってみよう」


そう言ったレジーナは、部屋にあった通信機器を使って帝国との交渉時にいた者たちに連絡を入れた。


おそらくは緊急用の回線なのだろう。


上層部は一分もいないうちに、通信機器から映し出されたホログラム画面にその姿を現す。


《何かありましたかな、レジーナ女王?》


上層部を代表するかのように、ホログラム映像のパロットが訊ねた。


メディスンは、レジーナが説明しようとする前に、身を乗り出してその口を開く。


「あなたがたはノピアの本性がわかっていませんよ。和平交渉だけならまだしも、帝国に光学兵器を渡したことは命取りになる」


その静かながら明らかな敵意を持った言い方に、上層部らの表情が歪んだ。


そのときの彼らの顔は、「またこの男か」とでも言わんばかりだった。


パロットはそんな彼らに落ち着くように言うと、メディスンに説明を始める。


《そうは言ってもな、メディスン大佐。光学兵器を売った金で連合国が、世界が(うるお)うのだよ。これで遅れていた福祉政策も(とどこお)りなく進められるんだ。それに、我々が帝国と交渉しなければ、戦火はさらに広がる。君は、帝国に世界が潰されるのを黙って見てろというのかね?》


「ノピアは世界を潰しません。連合国を、あなたがた上層部を潰すんです」


メディスンの言葉に、上層部たちが失笑が漏れ始めた。


何を言い出すんだと笑みを浮かべながら、メディスンを小馬鹿にするような視線を向けている。


《潰すせるはずがないだろう? 仮にもしノピアが我々を裏切ったとしても、たかが一国程度の勢力では連合国は揺るがんよ》


「それでも速やかな対応をしておくべきです」


《そのために君がいるのだろう? メディスン大佐》


「それは、私の部隊が独自に動いて良いという風に受け取りますが、よろしいんですね?」


《当然だ。帝国がおかしな真似してきたら、君の部隊が真っ先に前線へ出てもらわねば困る。それとな》


それまで落ち着いていたパロットの表情が強張る。


《個人的なことで申し訳ないが、ミントが帝国に行っているようだ。娘のことも頼めるかね?》


「ファルコンヘッドは警察ではありません。それは、我々の仕事は思えませんが」


メディスンがそう答えると、パロットは彼を睨みつける。


《ミントの護衛をしていたのは、君の部隊の者だったと聞いているが?》


「しかし、それはミント嬢が自分の意思で――」


《口答えが過ぎるな、メディスン大佐》


パロットはメディスンを(さえぎ)って言葉を続ける。


《君に汚名をそそぐ機会を与えようと言っているんだ。少しは黙って言うことを聞いてくれたまえ》


「エンチャンテッド殿! それではまるでミント嬢が帝国へ行ったのが、大佐のせいのような言い方ではないですかッ!?」


レジーナが会話に割って入り、声を張り上げた。


だがパロットは何も言い返さず、上層部らがそれを見て笑っている。


《では任せたぞ、メディスン大佐》


「エンチャンテッド殿ッ! 話はまだ終わってないですよ!」


《すまないな、レジーナ女王。これから我々は宇宙へ行かねばならん。あなたは念のために、新兵器の開発を急いでくれたまえ。もっとも、完成しても役に立つとは思えんがね》


パロットはそう言うと、彼を含めた上層部たちは次々と通信を切っていった。


レジーナは歯を食い縛って、側にあったテーブルに手を叩きつける。


肩を落とした彼女のその背中に、メディスンが声をかける。


「礼を言います、レジーナ女王。仕事は増やされてしまいましたが、これでファルコンヘッドは自由に動けます」


「メディスン大佐? まさか、こうなることを狙っていたのか?」


「さあ、どうでしょうかね」


そう言ったメディスンは、穏やかな笑みをレジーナに返した。

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