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#082

車から声をかけてきたのは、連合国軍大佐メディスン·オーガニックだった。


アンはコクッと頷くと、彼の乗る車へと乗り込む。


メディスンは、彼女がドアを閉めたことを確認すると車を走らせる。


「レジーナ女王から、お前とエヌエーが来るのは明日になると聞いていたが?」


「ノピア、彼が現れたんだろう? そうなると優先すべきはここということになる。エヌエーのほうはまだ怪我が完全に癒えてなくてな。まあ、予定通りには到着するはずだ」


「そうか。でも、もうノピアはいないぞ」


「知っている。だが、お前はここにいただろう」


メディスンがそう言うと、アンは何も喋らなくなった。


それはメディスンも同じで、彼は今となってはめずらしくなった自分で操縦する車のハンドルを動かし、ただ前を見て運転している。


街灯のみが光る道中――聞こえるのは不機嫌そうなエンジン音だけだった。


そんな中でアンは考えていた。


ノピア·ラッシクは正しいか?


連合国は間違っているのか?


自分にはわからない。


それは、未だに心が折れていないソウルミューやレジーナ――。


そして、隣に座っているメディスンやこの場にいないエヌエーも同じだ。


何を考えようが、どうせ思い通りになどならない。


自分は彼ら彼女らのように強くない。


だがここでノピアのすることを見過ごすのなら、暴走したコンピュータークロエから世界を救ったときに、自分は死ぬべきだった。


アンの頭の中でそんな声が聞こえた。


《死んだ者の分まで生きろ、バカ。お前は肉から血を絞り尽くし、骨が粉々になるまで戦うんだ》


その声は、よく知っている懐かしい声だった。


アンはその声の主を知っていた。


だが、その声はすぐに頭の中から消えていった。


「ローズ……」


「どうかしたか?」


「いや、なんでもない……。メディスン……。お前は変わったな」


「なんだいきなり?」


神経質そうな顔を歪め、メディスンは明らかに不快感を(あら)わにしていた。


だが、アンは彼のことなどお構い無しに言葉を続ける。


「女性の扱いが上手くなった。アミノさんのおかげか?」


「おい、なんなんだよ? 黙っていたと思ったら当然変なことを訊いてきて」


「家には帰ってるのか? あまり奥さんを悲しませるなよ。子供だってもう六、七歳くらいだったか?」


「お前に心配されんでも細かく連絡は取っているよ。それに、妻はできた女だ。私がいなくとも上手くやっている」


不機嫌そうに言うメディスンを見て、アンは「そうか」と返事をして微笑んだ。


そして、死んでしまった家族のことを想って夜空を見上げた。

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