#081
食事をしながら会話をした後、アンはホテルへと戻ることに。
レジーナと別れ、彼女は自動運転車を呼ばずに歩いて帰ることにする。
外は陽が落ち、すでに夜になっていた。
すっかりと暗くなった街の中を進む。
夕食時も過ぎているせいか、街からは人気も消えていた。
それは、昼間に観光地――この国にある滝にストリング帝国が現れたのもあったのだろう。
街灯が照らす道を歩くのもアンだけで、車すらも走っていない。
静かな街を眺めながらアンは考えていた。
ソウルミューやレジーナの言っていたことを。
(二人は……私などよりも強いな……)
ソウルミューは連合国を嫌いながらも協力している。
そして、レジーナもまた権力や大衆に飲み込まれそうになりながらも、なんとか踏ん張っている。
それに比べて自分はどうだ?
人間は自分の手が届く範囲を守れればそれでいい――。
そう思うことで、子供たちを盾にして中途半端に戦場に赴いている。
アンは先ほど――研究所の食堂でレジーナが話してくれたことを思い出す。
「アン大尉……。呼び出した私が言うもなんだが、無理する必要はないと思う……」
レジーナが話したいこととは、アンに連合国軍を辞めてはどうかと言うことだった。
望まないのならもう戦うことはないと、レジーナは静かに言葉を続ける。
「久しぶりに会ってみてわかったよ。あなたは無理をしているって……」
それからレジーナは、友人から聞かされた話を始めた。
アンが元々戦うことが好きではない人間だと聞いていると。
「あいつが……ジャズが言っていたよ。私はずっと信じられなかったが、こうやって何度か会っているうちに理解した……。それに、あなたはもう十分戦った。ここからは私たちが世界を守る」
ノピアがストリング帝国を連れて現れ、メディスンは自分の部隊――ファルコンヘッドにアンを入れることを連合国上層部へ進言した。
そして今回の新兵器のテストもまた、メディスンの意向に沿ったものであることをレジーナは伝える。
「メディスン大佐……彼は、私などよりもあなたと付き合いが長い。だから、実際にあなたがどう思っているのかはわからないが……。あなたが無理していることは感じた……。だから、もし私の勘違いでないのなら……」
アンはそのとき、レジーナに答えることができなかった。
彼女の言う通り、アンは戦うことを望んではない。
それは今から十三年前に起きたバイオニクス共和国とストリング帝国の戦争で、彼女が逃げたことからも明らかだった。
だが一人の少女の奮闘を知り、再び戦場に戻ってきたアン。
しかし、唯一の血を分けた妹と和解すらできずに死に別れ、彼女は以前以上に戦うことが嫌いになっていた。
アンの歩く速度が落ちる。
(いつもそうだ……。何一つ思い通りにいかない……。戦いから離れても無意味だった……。だから私は……)
アンは以前に暴走したコンピューターから世界を救った。
だが、それでも世界は平和になったりしなかった。
現在は戦争こそなくなったが、連合国による管理という支配は年々酷くなり、そしてついにはあのノピア·ラッシクが敵として現れた。
しかし、ノピアでさえ世界を平和にできないだろう。
武力では――人殺しでは何も変わらないことを、アンは知っているのだ。
「私は……何がしたいのだろうな……」
ボソッと呟きながら歩くアン横に、一台の自動車が停車する。
アンが足を止めると、車の窓が開いて中にいた男が声をかけてきた。
「乗っていくか?」
「メディスン……?」




