#075
ミントは拳銃を構えながらノピアのほうへと近づいていく。
「アンさん、動かないでください。あなたを撃ちたくない……」
銃を撃った経験などないと思われるが。
ミントは震えることもなく、冷静にアンに向かって口を開いた。
彼女が動いたせいなのか、アンは普段の無表情に戻っている。
だが、ブレシングのほうは激しく動揺していた。
「ミントッ!? なんで銃なんかッ!? っていうか、どうしてアンさんに銃を向けるんだよッ!?」
「ブレシング……。あなたも動かないで……」
ミントは静かにそう言うと、ノピアの横に並んだ。
隣に来たミントの肩に、ノピアはポンッと手を乗せる。
「私と来るか? ミント」
「……はい。ノピア将軍について行きます」
ミントの言葉を聞いたブレシングは、さらに心が乱れていく。
たしかにノピアの言っていたことは正しいかもしれない。
だが、それでも彼がムーグツーを襲撃し、戦闘態勢に入っていないベクトルの兵たちを皆殺しにしたのは、正しいことなのか。
ブレシングはミントにそのことを訴えかけた。
だが、それでも彼女は揺るがない。
連合国のやり方には、もうついて行けないと答えた。
「私にはノピア将軍の言葉のほうが正しく聞こえる……。それだけのことです」
「ダメだよミントッ! そんなこと……君のお父さんが悲しむよ!」
「父がなんだっていうんですかッ!」
突然、それまで冷静だったミントが怒鳴り返した。
そんな彼女を見ても、ブレシングには何がなんだかわからない。
何故いきなり声を張り上げたのか理解できない。
だが、ノピアにはわかっていた。
ブレシングとは違い、ノピアは怒り狂ったミントを見て思う。
やはりこの娘は、父が――連合国上層部がいかに腐っているかを知っているのだと。
しかし、ブレシングも引かない。
ストリング帝国へ行く言い出したミントを止めようと、彼女に向かって走り出す。
「動かないでッ!」
「撃ちたきゃ撃ちなよ! たとえ鉛玉を喰らったって、君を帝国に行かせるもんかッ!」
アンに向けていた銃口を走り出したブレシングへと向けたミント。
だが、彼女には撃てなかった。
真っ直ぐブレシングのことを見据えていても、引き金にかけた指を動かせずにいた。
「無理はするな。君は下がっているといい」
そんなミントを自分の後ろに下がらせ、ノピアが向かってくるブレシングの前に立つ。
ブレシングは邪魔だと叫ばんばかりに咆哮をあげ、ノピアへと飛び掛かった。
だが簡単に転ばされ、ブレシングは無様に放り投げられてしまう。
「ブレシング、君も私のもとへ来い。そのほうがマナもラスグリーンも喜ぶ」
倒れたブレシングに向かって手を差し出すノピア。
ブレシングが立ち上がるのに手を貸そうとしたそのとき、彼の身体が突然吹き飛ばされた。
「私がいることを、忘れるなよノピアッ!」
アンはそう声を張り上げると、ノピアへと振るった機械の拳を前へと突き出した。




