#068
そんな上の空のアンの背中に、飛行装置ジェットパックが背負わされる。
今から約十三年前に、ストリング王国がまだ帝国だった頃に造り出されたものだ。
現在も推進剤の量や宇宙空間での行動を可能するものへと改良はされているが、基本的には変わらずに使用されている。
当然アンにも使用経験がある。
「これが新兵器?」
一見何の変哲もないジェットパックに彼女は不可解さを覚えていた。
聞いていた話では、帝国の准尉リョウガ·ワスプホーネットが使用していたものと同じはず。
たしかジェットパックから円形のユニットを放出していたように見えたがと、アンはソウルミューに視線を向けた。
「なんだよ? なんかおかしなとこでもあるのか?」
「いや、むしろ何もない」
「それなら問題ねぇな。じゃあ、アン。P-LINKを飛行装置に向けてみてくれ」
P-LINKとは――。
マシーナリーウイルスの適合者や、特殊な人間同士の意思の疎通を可能にする力――Personal linkのことである。
リョウガ·ワスプホーネットが使用していたものもまた、マシーナリーウイルスの適合者、強制者専用の兵器だった。
だが、いきなりそう言われてもアンからすれば勝手が変わらない。
「一つ、伝えておきたいんだが」
「うん? なんだよ?」
「私は自分の意思でP-LINKをコントロールすることはできないぞ」
「はぁッ!?」
ソウルミューはアンの言葉に驚愕する。
アンはこの世界で唯一の適合者であり、強制者のように暗示や投薬施術による人為的にウイルスを適合させる必要がない人間だ。
そんな彼女が、適合者の能力をコントロールできないとは一体どういうことなのだと、ソウルミューだけでなく、レジーナや職員たちも言葉を失っていた。
「嘘だろッ!? だってアンタは完全にウイルスを制御できてるじゃねぇかよッ!?」
「それと能力は別だ。君が知っているジャズやミウムのほうが、私などよりもずっとマシーナリーウイルスの力を使いこなしていたよ」
「でもよ、あんた完全な適合者の証つーか、電撃を放てるだろ?」
これまでも数人は確認されている適合者や強制者だが。
その中でも、機械化させた身体から電撃を放出でいたのは、アンと彼女の妹であるローズ·テネシーグレッチだけだった。
それは彼女たちテネシーグレッチ姉妹だけが、真にマシーナリーウイルスの適合者であるいう証明だと思われていた。
だがアンが言うに、彼女の適合者としての力は年々弱まっているそうだ。
以前だったら感じられた特殊能力者の気配や人の強い感情も、今でもほとんど受け取れなくなったそうだ。
「じゃ、じゃあ……アンタじゃ、新兵器は使えないってことかよ……?」




