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#048

ミントの声がゴングとなり、身構えたアンとブレシングが動き出す。


互いにすり足でゆっくりと距離を詰める静かな立ち上がりだ。


子供らのスパークリングは、どちらが先手を取るかといった激しいものだったが。


アンもブレシングも、不用意に相手の懐へは飛び込まずにいる。


それを見ていた子供たちが口々に言う。


「兄ちゃんがいくね」


「うん、気配が変わったもん」


そんな子供らの横にいたミントは、わかったような言っているとなと笑っていたが、次の瞬間――ブレシングがアンへと襲い掛かった。


踏み込みと同時に一気に間合いを詰め、アンの眼前へと移動する。


それを見て子供らがまた口を開く。


「正面? いやちがう」


「そうだね。あれはフェイントだ」


そして、子供らの予想通りにブレシングが突然アンの前から姿を消した。


ミントは一瞬のことに彼がどこへ行ったのかわからなくなっていた。


だが、子供たちには見えている。


「後ろだ」


ミントは思わず「えッ!?」と声を漏らした。


すると、またも子供たちの言う通りにブレシングがアンの背後へと回り込んでいる。


(この子たち……なんで見えてるの? いや、なんでわかるのッ!?)


驚愕するミントの横では子供たちの実況が続いている。


アンの背後を取ったブレシングは手を伸ばし、腕を掴んだ。


「ありゃりゃムチャだね。あれじゃキメられないよ」


「あれもフェイントでしょ? 狙いは関節じゃなくて投げじゃない?」


「なるほどね。二段構えの戦法かぁ。ブレシング兄ちゃんも腕を上げたなぁ」


そんな会話をしている子供らを見てミントが呟く。


「アンさんは……この子らを戦闘集団にでもするつもりなの……?」


ブレシングが掴んでいた腕からアンの胴体へと手を動かし、腰へと回す。


ガッチリと両腕を組まれたアンは、そのまま持ち上げられてしまった。


体格ではブレシングがのほうが優位なのだ。


体重差もあり、フェイントで目をくらました――この結果は当然いえる。


プロレスの技でいうところのバックドロップ。


アンはこのまま地面に叩きつけられるかと思われた。


ミントが持ち上げられたアンを見ていると、子供たちが声をそろえて言う。


「無理だね」


「えッ!?」


ミントが声を漏らした瞬間――。


アンの身体がブレシングの両腕からすり抜けた。


まるで放り投げられた猫がスルッと着地するように、彼女はブレシングの背後に両足をつける。


そして、お返しとばかりに自分が仕掛けられた技――バックドロップの態勢へと入った。


ブレシングが慌てて踏ん張ると、アンは両腕を引っ込める。


「終わりだね」


「うん、やっぱアン姉ちゃんは強いや」


アンはすぐに引っ込めた両腕をブレシングの首へと回し、そのままチョークスリーパー。


ブレシングが腕を彼女の手にやろうとする前に、一瞬で彼を締め落とした。


「見事な戦法だ。まさかフェイントを二回も入れてくるとは思わなかったよ。だが、まだまだ甘い。……ってブレシング、聞いてるか?」


アンに声をかけられてもブレシングに反応はない。


当然だ。


絞め落とされたブレシングは意識を失っているのだ。


そんな二人の戦いを見ていた子供たちがパチパチと拍手を送る。


一方ミントのほうは、二人の戦い以上に、子供たちの観察眼に舌を巻くのだった。

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