#039
その後、目を覚ました子供たちをお風呂に入れるためにブレシングが男の子たちを連れ、浴場用に造られた丸太小屋へ向かった。
女の子たちが後になったのは、ブレシングがお風呂を沸かすことで身体中が煤だらけになったからだった。
すっかり日も暮れ、お昼を食べる時間もなかったのもあってミントの空腹は限界まで来ていた。
目の前には、先ほどアンと彼女が作った野菜スープとジャケットポテト、さらに付け合わせのサラダが用意されている。
「あの、アンさん」
「なんだミント? 食事なら私たちがお風呂から上がってから皆で食べるから、もう少し待っていていてくれ」
「はぁ、そうなんですね……。それと……」
「なんだ? まだ何かあるのか?」
「夕食って……これだけですか? 主食というか……ライスやパンは?」
「主食ならポテトがあるだろう?」
「えぇッ!?」
アンの言葉にミントは顔を引き攣らせる。
ミントはこの家に来てから顔を引き攣らせっぱなしで、いい加減に頬が筋肉痛になっていた。
アンと子供たちが住むこの家には、そもそも主食という考え方がないようだ。
いずれは丸太小屋の側に田んぼを作って米を取ろうと思っているが。
ブレシングが家を出て連合国軍に入り、アンも新米兵士の訓練の仕事があるため、そこまで手が回らないようだ。
「お風呂空いたよ」
顔を引き攣らせているミントとアンに、戻ってきたブレシングが声をかけた。
ミントはワナワナとその身体を震わせながらブツブツと何か呟き続けている。
「ライスも……パン……ないなんてあり得ない……。あり得えないです……」
「よし、ミント。次は私たちの番だ。みんな行くぞ」
そんなミントの首根っこを掴み、アンが強引に彼女のことを運んでいく。
ブレシングは一体に何があったんだと、心配そうな顔をしながら引きずられていくミントと、それを見てはしゃいでいる女の子たちを見送った。
それから浴場がある丸太小屋へと移動。
薪に火をつけて沸かすため、小屋に見える煙突が目印だ。
「あの、アンさん」
「なんだミント? ライスやパンが食べたいなら、今度街で買って来るから今日明日は我慢してくれ」
「いえ、それはもういいですけど……」
ミントはお風呂について疑問に思ったことを訊ねた。
今はブレシングが男の子たちお風呂に入れているが、彼がいない普段はどうしているのだろうと。
「あぁ、私がやってる」
「えぇッ!?」
ミントは思わず仰け反った。
子供たちの年齢ははっきりとはわからないが。
中には十代前半くらいの子もおり、それは色々と不味いのではとミントはアンに言う。
「思春期の男の子もいるのに、教育的にどうなんですかそれッ!?」
「だから、男子と女子は分けているだろう? そこは君に言われないまでも、ちゃんとやっているよ」
「アンさんが一緒に入ってるのが問題なんですよッ!」
声を張り上げたミント。
アンはそんな彼女に相変わらずの無表情を向け、小首を傾げるのだった。




