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第6話 みんなごめんなさい

 求司が丈二の家に来ている頃、ゲームの世界では、ルウ達が洞くつの中でボス敵との戦闘を繰り広げていた。

アリア「これは本当に強敵ですね。守備力が高すぎて手裏剣が効きません。」

カブキ「私の催眠術も魔法封じも操りの特技も通じないですね。もはや手の打ちようがないです。」

バンビーノ「俺の攻撃でも大したダメージにならねえじゃねえか!どうしろってんだよ!」

ルウ「とにかくダメージを与えなければ倒せないわけだから、頑張ろう。」

 スタメンの4人は全力で戦い続けたが、相手の能力の高さに押されて次第に劣勢になっていった。

「私が代わりに入って回復をします。よろしくお願いします!」

 カノンは勇気を振り絞って名乗りを上げ、カブキと交代で戦闘に参加した。

 彼は直接攻撃には参加しないものの、毎ターン回復をしてみんなを支え続けた。

 一方、満足な装備も与えてもらえず、完全に戦闘からカヤの外になっているマドリガルは、背後から傷だらけになって戦う仲間達をひたすら見つめるだけの状態だった。

(あたしだって何とかしたい。攻撃魔法で役に立ちたい。でも、満足な装備を与えてもらっていないこんな状態ではあっという間にやられてしまう。足を引っ張ることになってしまう。もしそんなことになったら、バンビーノやカノンからディスられる…。あたし…、どうすれば…。)

 彼女は役に立てない悔しさを感じながら、戦況を見つめていた。

 そんな中、カノンにHPを回復してもらったアリアは、捨て身の覚悟で相手のところに突っ込んでいき、しびれ薬を塗り込んだ短刀で攻撃をした。

 するとそれが弱点に当たったようで、ボスは「ぐおおおおっ!」と言いながら苦しみだした。

「おのれ!貴様!」

 ボスは怒りに身を任せながらアリアに強烈な一撃をくらわせた。

「きゃあああっ!」

 防御しきれなかった彼女は大ダメージを受けてしまい、マドリガルのところまで飛ばされてしまった。

「しっかりして!アリアさん!」

 彼女は持っていた回復アイテムを使って治療をすることにした。

「おのれ!よくも大切な仲間を!」

 仲間がやられたことにショックを受けたバンビーノはボス目掛けて突っ込んでいき、弱点の場所を力いっぱい攻撃した。

 すると先程とは段違いのダメージが入ったため、続けざまにルウがその場所目掛けて攻撃をした。

「許すまじ。お前達を八つ裂きに…、うっ…。」

 ボスは力任せの攻撃を加えようとしたが、徐々にしびれ薬の効き目が出始めたのか、少し動きが鈍くなり、隙を見せる形になった。

 次のターンではアリアの代わりにカブキが入り、攻撃を加えた。

 しかし弱点には当たらなかったため、ダメージはほとんど入らなかった。

 とはいえ、この後はボスの攻撃が徐々に弱くなっていき、こちらの攻撃によるダメージも増えてきたため、こちらの状況はすっかり好転した。

「あと少しだ!みんな、頑張ろう!」

 ルウのゲキを受けて、バンビーノとカブキは力いっぱい攻撃を加えた。

 すでにしびれ薬の影響でボスの素早さはほぼ0になっており、守備力も下がってきているため、まともにダメージが入った。

(それなら最後は僕が!)

 ルウはダメージを受けながらも自分の攻撃をスマッシュヒットさせた。

 するとボスの動きが止まり、やがてその場に崩れ落ちていった。

(勝ったの?)

 まだアリアの治療をしているマドリガルは、祈るような気持ちでボスを見つめた。

 やがてその敵の体は光に包まれていき、最終的に姿を消していった。

(終わったわね…。良かった…。)

 意識を取り戻したものの、未だに立ち上がれずにいるアリアはほっとしながらその様子を見守った。


 ボスを倒し、重要なアイテムを手に入れた彼らはマドリガルのテレポートで外に出ていき、さらにテレポートで目的の町へと向かっていった。

「おおっ!それはこの町に代々伝わるアイテムでは!」

「あなた達、本当に取り戻してきてくれたんですね!」

「ありがたや、ありがたや!これでこの町も救われます!」

 町に到着し、奪われたアイテムを見せると、住民達は満面の笑みで6人を迎えてくれた。

「ルウさん達、本当にありがとうございます!今夜は皆様を盛大に歓迎します!」

 町長は、涙を流しそうなほど喜びながら、6人の前で頭を下げた。

「それはありがてえ!世話になろうぜ!」

「そうだね。よろしくお願いします。」

 バンビーノの提案をルウは快く受け入れた。

「こちらとしてもうれしいです。よろしく。」

「では、お礼に私が一発芸を披露しましょう。」

「私は…、ちょっと気が引けますけれど…。」

 カノンとカブキも大喜びの一方、アリアは忍者ということもあってか、戸惑いを隠せずにいた。

 その一方、ほとんど何もしていないマドリガルは素直に喜べず、うつむきながら黙り込んでいた。


 その夜。ルウ達は大勢の人達に囲まれながらたくさんの食べ物や飲み物を提供してもらった。

 食いしん坊のバンビーノはガツガツ食いをしながら次々と皿を平らげていった。

 ルウとカノンは町民と楽しく会話をしながら飲み物をついで回り、様々な情報を仕入れていた。

 カブキは食べ物を食べながら、その合間に手品を披露し、さらには強い酒を口に含み、火を吐く芸を披露した。

(※危険なので絶対にマネしないでください。)

 その一方でアリアはどうしても集団の中に入っていくことに抵抗を感じてしまい、お皿に食べ物を盛り付けては部屋の外に出ていき、黙々と食べていた。

 そしてマドリガルは少し腹ごしらえをした後は部屋の隅に座り込み、みんなの楽しそうな様子をじっと見つめるばかりだった。


 やがて就寝時間が近づいてくると、歓迎のイベントはやがてお開きとなり、ルウ達は宿屋に泊まることにした。

「というわけで、住民の人の話によると、次の目的地はここになりそうな感じでした。」

「多分そこに到着すれば、そこで次のイベントに出会うと思う。」

 カノンとルウはこれまでに集めた情報をみんなに打ち明けた。

カブキ「でも、道中には強い敵が待ち構えているのでは?」

「それなら私が一度偵察に行ってきましょうか?」

「アリア、一人でいいのかよ。あぶねえぞ。」

「バンビーノさん、心配しないでください。私は短い距離なら気配を消して歩いていくことが出来るようになりました。ですから地形や近くにいる敵の観察なら任せてください。」

「そうか。それなら任せたぜ。」

「僕からもよろしくお願いします。」

 バンビーノとルウはアリアが新たに覚えた特技を信じて彼女に任せることにした。

「かしこまりました。」

 彼女は気合を入れて返事をした。

 一方、マドリガルは一言もしゃべらず、彼らの会話をかたわらで聞いているだけだった。

 そして寝る準備が整うと、男性4人と女性2人が別々の部屋に分かれていった。


 翌朝。まだ薄暗いうちに目を覚ましたアリアは、となりの布団にマドリガルがいないことに気が付いた。

(ん?普段は私の方が早起きして、彼女を起こすのが定番だったのに、珍しいこともあるもんだな。それともトイレ起きか?)

 彼女は眠い目をこすりながら布団から出ると、自身もお手洗いに向かっていった。

 しかし途中でマドリガルに出くわすことはなく、しかも部屋に戻ってきてからも彼女の姿はなかった。

 胸騒ぎを感じた彼女は部屋を出て、気配を消しながら宿屋の中を歩き回った。

 その甲斐あって、ルウ達を含めて建物の中にいた人達に迷惑をかけることはなかった。

(よし。この特技は大成功だ。しかし、彼女はどうしたんだ?)

 アリアはその後もしばらくの間歩き続けたが、結局マドリガルの姿を見つけることは出来なかった。

(まさか、一人で外に出ていったわけではないだろうな。)

 嫌な予感を感じ取った彼女は部屋に戻っていき、布団を調べてみた。

 するとそこには一枚の紙が折りたたまれた状態で置いてあった。

 アリアが紙を開いてみると、そこにはマドリガルの直筆で「みんなごめんなさい。もう耐えられません。どうかあたしを探さないでください。」と書かれていた。

(まさか。失踪したのか?)

 はっとした彼女が部屋を見渡すと、マドリガルの所持していた道具袋が無かった。

(くっ!くノ一の私としたことが、彼女が出ていくのを見逃すとは!)

 アリアが悔しがっていると、部屋がすっかり明るくなっており、ルウ達が起きる時間になった。

 忍び装束を身に付けた彼女は男性4人のいる部屋に入っていき、彼らに事情を話すことにした。

「えっ?マドリガルが?」

「本当にいないのですか?」

 ルウとカブキは予期せぬ事態に、驚きを隠せなかった。

「すまない。私がいながらこんなことになってしまって…。」

 アリアは両手を握りしめてうつむきながら謝罪をした。

「まあ、まともに戦力になっていなかったしな。」

「いなくなってしまったのは仕方ありませんね。」

 バンビーノとカノンは至って冷静だった。

「ちょっと2人とも!マドリガルは仲間なんだよ!」

「彼女がいなかったら、テレポートはどうするんですか?」

 ルウとカブキが忠告をしても、2人の態度は変わらず、さらに追い打ちをかけるかのように

「とにかくこれからは5人で旅をしようぜ。」

「移動に関しても、何とかなるでしょう。」

 と言い放ってきたため、まるでマドリガルを本当に戦力外通告にしているようだった。

「そんな言い方ってあるか!せっかくの仲間なのに!」

 普段は温厚なルウもこの時ばかりは我を忘れて怒り出し、バンビーノとカノンに食って掛かった。

 するとその騒ぎを聞きつけたのか、他の宿泊者や宿屋の従業員の人が部屋にやってきて「ちょっと!うるさいですよ!」、「静かにしてください!」と言い放ってきた。

「あっ、ごめんなさい。」

「すみませんでした。」

「面目ない。」

 ルウ、カブキ、アリアは頭を下げて謝った。

 それを受けてバンビーノとカノンもそれ以上のことは言わず、彼らも頭を下げて謝った。


 マドリガルがテレポートで瞬間移動が出来る以上、今のルウ達は彼女を探す術はどこにもなかった。

 そのため、これからは本当に5人で旅をすることになった。

(ビーノとカノンはこれで構わないと考えているようだけれど、本当にこれでいいんだろうか…。)

 ルウは彼女を引き留められなかったことを悔やみながら宿屋を後にした。

 そして町の外に出ると、4人はアリアが忍び足で偵察に出かけるのをじっと見つめていた。


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