第4話 6人の仲間
リメイク中のゲームの世界ではストーリーがある程度進んでいき、ルウ、バンビーノ、カノン、マドリガルの4人は和風な感じの漂う町にやってきた。
ここでは日本刀や侍の鎧に加え、手裏剣、弓矢が販売されていた。
ルウ「すみません。この刀、試しに素振りされてもらっていいですか?」
「いいですよ。どうぞ。」
店主から了解を得ると、ルウは早速それを受け取り、素振りをしてみた。
「これ、結構攻撃力も高そうだし、ちょうど良さそうだな。ぜひ買ってみたいです。」
「では、2700ゴールドいただきます。」
「えっ?ちょっと高いですね。」
バンビーノ「少し値引きしてくれねえか?」
「いえ。ちゃんとした職人が手作業で一本一本丹念に作っていますから、びた1ゴールド負けるわけにはいきません。でもそれに見合った攻撃力はあるはずですので、買って損はありませんよ。」
「分かりました。では、今使っている青銅の剣を売ることにしましょう。」
ルウはそう言うと、その剣を差し出した。
「どれどれ…。200ゴールドでなら買い取ってもいいですよ。」
カノン「買値が800ゴールドだったのに、ずいぶん安いですね。」
バンビーノ「ああ。俺としては500ゴールドにはなると思っていたのによ。」
「この剣はずいぶん使い込んでいるようですからね。」
ルウ「分かりました。でもお金が足りないので、この場では買えないですね。どうしよう…。」
バンビーノ「それならよ、マドリガルの持っている杖を売っちまおうぜ。」
「えっ?何で?あたしの武器なのに。」
「お前は魔法主体だから、あまり武器使ってねえだろ?」
カノン「それに武器で攻撃しても大したダメージにならないじゃないですか?」
「……。」
マドリガルは杖をしっかり握りしめながら無言で拒否する仕草を見せた。
(確かにその杖はあまり使っていないから、売れば300ゴールドにはなるだろう。そうすれば日本刀が買える。でも、そんなことをしたら彼女がかわいそうだし…。)
ルウがどうすればいいのか分からずにいると、ふと彼らの隣に一人の女性がやってきた。
「すみません。その手裏剣をください。」
「おおっ、アリアさん。これからお出かけですか?」
「はい。上の者に頼まれて、敵の城に忍び込み、お頭を成敗して密書を手に入れに行きます。」
アリアと呼ばれた女性は、これから行こうとしている目的地について話した。
「そこは強敵もいるし、一人では危険です。仲間を見つけた方がいいと思いますよ。」
「仲間と言われても私は忍者であるが故に、これまで単独行動が多かったので…。」
彼女が戸惑っていると、となりにいたルウが「それなら僕達の仲間に加わってくれませんか?」と問いかけてきた。
「えっ?」
アリアは思わぬ依頼に思わずビックリした。
「実は、ちょうど僕達もそのボス敵を倒しに行こうとしていたんです。だから、ぜひ協力してくれませんか?」
「いいのか?私は忍者なのに。」
彼女は最初、とまどうばかりでなかなか同意をしてくれなかった。
しかし、ルウ達の説得を受けるうちに、少しずつ気持ちが変化していった。
「分かった。そこまで言うのなら、協力してくれないか?」
「喜んで協力させていただきます。一緒に頑張りましょう。」
ルウは笑顔で承諾すると、まず自分の名前を伝え、さらにバンビーノ、カノン、マドリガルの紹介をした。
「私はアリア。くノ一の忍者だ。よろしくな。」
彼女は仲間に加わると、早速手裏剣を手に入れ、さらに防具も買って装備を整えた。
「それでも私にはまだこれだけお金が残っているのだが、君達は何か欲しいものはあるか?」
バンビーノ「それならよ。300ゴールドでいいから恵んでくれないか?」
「300ゴールドか?」
カノン「はい。ルウさんがこの刀を買いたがっているんです。」
ルウ「でも少しだけお金が足りなくて、困っていたんです。」
「分かった。では私がその分を払うことにしよう。」
「ありがとうございます!」
「その分は結果で返してもらうぞ。」
「もちろんです。頑張ります!」
こうして、5人パーティーになった一行は、まず地道なレベル上げを行った。
さらには依頼された仕事をこなしながらお金をため、バンビーノも日本刀を装備した状態で城へと乗り込んでいった。
城内には落とし穴や天井から武器が落ちてくる仕掛けなど、いくつものトラップが仕掛けられていた。
また、敵もルウ達を侵入者とみなして襲い掛かってきたため、手加減無しの攻撃を加えてきた。
一方のルウ達はマドリガルを除く4人で相手を迎え撃つと、ルウとバンビーノは日本刀の威力を存分に発揮した。
カノンは攻撃もしながら回復を担当し、アリアは手裏剣で遠隔攻撃をしたり、相手の武器や盾などを叩き落として能力を下げながら戦った。
(こんな時、あたしも魔法で貢献したいのに…。)
マドリガルはすでに敵全員を攻撃出来るボムという魔法(※ドラクエのイオと考えてくれれば結構です。)をマスターしており、しかもメンバーの中で敵全員を対象とする攻撃手段はこれしかないだけに、スタメンに加わりたい気持ちでいっぱいだった。
しかしHPが一番低いことがあだとなってそれが叶わず、戦闘後のアイテム係と移動中にボムで壁を壊す役割でしか貢献出来なかった。
(あたし、これからもこのままなのかしら…。こんな日々がずっと続いていくのかしら…。)
彼女は途方に暮れそうになるほどの不安に襲われていた。
そんな中でもストーリーは進んで行き、5人はボス敵を撃破した後、すっかり廃墟と化してしまった町にやってきた。
家を失い、お腹をすかせている町の人達がルウ達を見かけると、食料や水を分けてもらえないか聞いてきた。
アリア「では、私の携帯食料である兵糧丸を渡しましょう。」
バンビーノ「いいのかよ。恵んだら何かされそうな気がするんだけれど…。」
ルウ「でもやっぱりあげることにしようよ。」
カノン「はい。これは緊急事態ですから。」
マドリガル「じゃああたし、持っている薬草を渡します。」
5人は早速手分けして困っている人達を助けるための行動を開始した。
その後、作業が一段落すると、彼らは町の広場で一人の男の人が子供達を前にジャグリングや手品をしている光景を見かけた。
周囲にいた大人達からは
「そんなことをして何になるのかしらねえ。」
「お腹がいっぱいになるわけでもないのに。」
「せめて手伝いの一つでもしてくれればいいのに。」
という声も聞かれたが、子供達は素直に喜んでいる感じだった。
10分後。芸が終了すると、彼らは
「お兄ちゃん、どうもありがとう!」
「おかげで元気が出ました!」
「サインしてください!」
と言って、男性のところにやってきた。
彼は喜んでそれに応じると、子供達は喜んで親のところに向かっていった。
やがて男性一人になると、彼は途端に力が抜けたのか、はあっとため息をついた。
「これからどうしようか…。」
彼は広場でうつむきながら立ち尽くしていた。
「何だか寂しそうね。」
「行ってみましょうか。」
マドリガルとアリアの提案を受けて、ルウもそれに同意し、5人は彼のところに向かっていった。
話によると、彼の名前はカブキ。旅芸人として手品などを駆使してお金を稼ぐかたわら、催眠術などの特技を駆使して戦闘を切り抜けてきた。
しかしここでの救援活動でこれまで稼いでいたお金を使い果たしてしまい、さらに今回の芸も無償でやっていたため、このままでは旅が続けられなくなってしまうということだった。
「それなら僕達のパーティーに加わりませんか?」
「えっ?君達の?」
「はい。僕達はこの世界で起きている様々なことを解決したり、凶暴化した敵と戦ったりしながら旅をしているんです。」
「そうそう。そうしながらお金も稼いでいるんだぜ。」
ルウとバンビーノは自分達がこれまでやってきたことをカブキに話した。
ちょうど一人旅では限界を感じていた彼は、話を聞いているうちにルウ達のパーティーに興味を持つようになった。
「では、僕も加えてくれませんか?戦闘面はどうか分かりませんが、お金を稼いだり、みんなを元気にしたりする点ではきっと役に立つと思いますよ。」
「あなたなら、きっと役に立ちます。」
「一緒に協力していきましょう。」
カノンとアリアの後押しを受けて、カブキは仲間に加わることを決意し、一緒についてきてくれることになった。
ルウ「これで頼もしい人が加わりましたね。」
カノン「はい。でも彼の装備を整えないといけませんね。」
アリア「ですが、今の私達はもうお金がないですけれど。」
バンビーノ「じゃあ、別の場所に飛んで行って、仕事を探そうぜ。」
「じゃあ、マドリガル。移動の魔法を頼む。」
「えっ?あっ、はい…。」
ルウに提案されて、マドリガルはテレポートを使い、全員で一つ前の町に移動していった。
そしてまだお世辞にも強いとは言えないカブキのレベルアップと並行して、仕事を見つけてお金を稼ぐことにした。
(新しい仲間が加わったのはいいけれど、こうなったらあたしはこれからどうなるのかしら…。ますます空気みたいな存在になってしまわないかしら…。もしそうなったら、あたし…。)
仲間が6人になったことで、マドリガルの心の中にはさらなる危機感が芽生えていた。
その予感は見事に的中してしまい、その後、彼女は…。