鼻を明かす 18
精霊ガウラは、自由になれたはずだった。
だが、精霊になった直後にウル王女に拘束され、あろうことか目の前で赤子が何度も少女に殺されて。
今度は首輪を付けられた挙句、オジサンと少年の前に連れて来られて。
—— 過去を、思い出してしまって。
ガウラは発狂した。
逃げ出そうとして、鎖で繋がった先の少女に引っ張られ、止められた。
何度も何度も、転移の魔術を使えと脳が囁いた。
だが、魔力の無いガウラでは無情にも発動はしなかった。
『逃がさないわよ』
大精霊マイカは呆れた表情でガウラに言う。
『前世での貴方の犯罪のせいで、地獄では私まで奴隷から開始だったんだもの。
というか、貴方のせいで前世の私、だいぶ苦労したのよ?
……まぁ、前世と同じ罪を犯したわけだけど』
「まさか2人の間に子供が居たとは、ね。
どおりで連絡が取れなくなったわけだよ」
少年ケイは答え、軽蔑する目でガウラを見つめる。
見つめられたガウラはブルブルと震えた。
ウル王女はイザーク王子と共にお茶会の場へと向かう。
いつもなら、アイが歩いている位置にイザーク王子が居る。
アイとはまだ、合流していない時間帯なので問題なく森を通り過ぎた。
小屋の前には椅子に座る少女トワと、その後ろに立つ付き添いの少年マモルが待ち構えている。
「こんにちは、トワ様」
ウル王女は3mくらい離れた場所に立ち止まり、そう言って優雅にカーテンシーをする。
「私はウル・ドラグ。こちらは私の兄、イザーク・ドラグです。
どうか、少しお話をさせていただけないでしょうか?
私どもは、これから起こる殺人事件を阻止しに参りました」
「断る」
トワの代わりにマモルは即答する。
「トワ様が殺される、とお伝えしても、ですか?」
「やはり、殺されるのですか。……まぁ、仕方のないことですね」
「そのせいで街が魔の国に変わるのですが?」
「すでに堕ちている、の間違いでしょう?」
マモルはニヤリと嗤って答えた。
途端に周囲から異形の魔物が何十体も現れる。
その手には、全てに精霊が握られていた。
だが、その動きはかなり遅い。
その包囲網は、今やって来た道だけがポッカリと空いていた。
―― 罠かもしれない。
だが、ウル王女は冷静に答える。
「今回は出直しますわ。戻りましょう、お兄様」
「しかし、」
「騎士の方々には、わざとゆっくり歩かせておられるのですもの。
手土産を1つもお持ちしていなかった私どもに非がありますわ」
ウル王女はマモルにも聞こえるように答え、マモルの様子を伺った。
が、マモルは何も言わなかったし、動こうともしていない。
イザーク王子はウル王女の発言に驚きつつも、出直すことを決めたのだった。




