閑話 12
認知症の仲間入りを果たしたケイは、過去を思い出すたびに頭を横に振り、思考の片隅に追いやる。
結局、トワちゃんを自殺させるまでに追い込んでしまったのはケイなのだろう。
だが、あの時のケイは理解が出来ず、姉のアイに暴力を揮ってしまった。
その結果、アイは寝たきりになり、やがて死んだ。
ケイの復讐が不可と悟った李は、別れの挨拶もなく自国へ帰った。
そして何かに巻き込まれ、事故死したらしい。
重度の鬱病と診断された浦賀は、施設療養から戻って来なかった。
何も言わなかったが、もしかしたら浦賀もトワちゃんと同じ感情を抱いていたのかもしれない。
唯一、真守だけがケイの傍にずっと居続けてくれた。
しかし、2人で飲んだ雪の日、駅の階段で足を滑らせ、打ち所が悪くて死んだらしい。
今だからこそ、思う。
この3人の人生を狂わせてしまったのも、きっとケイなのだろう。
「カゴさん、寒いでしょう? お部屋に、一緒に戻りましょう?」
ケイに向かって手が伸びてくる。
だが、ケイはその手を握り返すことも、振り払うこともせず。
辛い過去に耐え切れず、自らの生に終止符を打った、
はずだった。
『貴方の業は数多に亙る』
『業は呪詛、呪詛は身の錆』
『呪詛を唱えればうつるのは必然』
『自死で業を清算しようなんて言語道断』
『皆を巻き込んだのだ、今度は皆に巻き込まれよ』
何も見えない空間に複数の声だけが響く。
反省は、している。
ただ、自殺はダメだったらしい。
『自然死まであと少しだったというのに馬鹿なことを』
残念なことに、数十年があと少しとは思えなかったのだから仕方ない。
もっとも、平均寿命より短命だった可能性もあっただろうが。
『汝、心残りはないか?』
不意に子供くらいの真っ白の何かが現れた。
思い思いに喋っていた複数の声が一斉に押し黙る。
心残りは2つ。
姉に真実を伝え、理解させることが出来なかったこと。
皆を巻き込んで、不幸にさせてしまったこと。
『汝、不死の勇者となれ。
業を集め、業に飲まれよ。
我が契約、違えず皆と再会せしめた時、本懐を遂げるだろう』




