鼻を明かす 16
大精霊マイカはイザークに道を教えたものの、当人は行く気が無かったので崩れかけた街を見て回っていた。
マイカは何となく、ここで何が起きたのかを知っていた。
ケイと出会ったことで、最後の転生者が今の彼女ではないことも理解できた。
だから、ここに残った。
案の定、ヘドロのような呪詛が森の方角から津波のように押し寄せ、街ごとマイカも飲み込まれる。
これは他者の業。
飲み込まれても影響は少ないが、長いこと居れば異形の魔物になるかもしれない。
が、今頃は結界を聖火で燃やしてもらえているはず。
それに、これはすぐ消える。
下手に逆らっても苦しいだけだ。
流れに身を任せていたら、想定通り、突如として体に掛かっていた負荷が消失する。
そこは、精霊祭の前日に巻き戻されていた。
イザークが目を覚ましたのは門の近くだった。
「世話が焼ける」
そう言ったのはケイだった。
どうやら、ケイがイザークを助け出したらしい。
だが、イザークは違和感があった。
ケイの顔が大きく見えたこともある。
あと、ケイと同じくらいの身長はあったはずなのに、ケイがイザークを御姫様抱っこしているようにしか感じられなかったから。
「降ろすから、自分で確認すればいい」
そして降ろされた後の視線は、かなり低くなっていた。
真上を見上げるようにケイの顔を見た。
それでもケイは少ししゃがんだ状態だったのでイザークは驚愕する。
周囲を見渡せば、どうやらリーンも居たらしい。
だが、リーンの顔の右半分には蔦のような紋様が蠢いていた。
この結界の中では精霊祭の前日と当日、2日間だけが繰り返されていた。
そして住民が食事と称して食べているのは精霊。
それも、転生者として招かれ、この結界内で異常に増殖した特殊な精霊だった。
本来ならば魔物になるはずの魂が、特殊な精霊になってしまった。
異形の魔物は、そんな精霊を摂取した結果の異変だったのかもしれない。
だとすれば。
いったい誰が、その精霊を食料として分け与えているのか。
―― あの子が、そんなことをするのだろうか?




