閑話 10
トワちゃんが死亡後、遺品の中からスケッチブックが出て来たらしい。
ケイ達はそれを見ることで、トワちゃんの苦労を垣間見ることになった。
スケッチブックには、幼き日のトワちゃんの、1日の行動予定が絵や文字として描かれてあった。
洗濯機や掃除機、炊飯器など、機械の操作に関しては絵として。
朝食や夕食、お風呂などに関しては文字として。
先頭には数字が振られていたものの、それが時間を示すのか、までは良く解らなかった。
しかし、幼かったケイがお漏らしをし、布団の下にあったスケッチブックまでも濡らしてしまったことで、トワちゃんは覚えていた範囲のことしか出来なくなってしまったのだろう。
「もう、結論は出たでしょ? そろそろ切り上げた方が良いのでは?」
スケッチブックを借りてきて自室でも睨みつけていた浦賀に対し、ドアが開いていたためにソレを見かけた妹分のマイが呆れて声をかけた。
マイも、浦賀たち4人がやっていたことについて知ってはいる。
何よりも、事情を知って謎解きに協力したこともあるので、浦賀の気持ちが解らなくも無かった。
とはいえ、マイは浦賀の性格が嫌いだった。
一度でものめり込むと風呂も食事もそっちのけで止まれない挙句、一度でも止まってしまうと再開する気力が湧かなくなってしまい、最悪の場合には見向きもしなくなる厄介な性格をしている。
マイもまた似たような性格だったが、最近は寝不足という形で顔に現れるようになったため、何とか自制し、何とか気力をもっていくように努力はしていた。
要するに、同族嫌悪というやつだろう。
ただ、それ以上にマイは不安に感じていた。
スケッチブックの後半には、恐らくトワちゃんが描いたであろう両親の笑顔があった。
だが、その絵を見かけるたびに、マイは不気味さを徐々に募らせていた。
ここの所、浦賀はその絵ばかりを見つめている。
まるで浦賀が魅入られてしまったかのように思えて仕方なかった。
しばらく経ち、両親の離婚調停が落ち着いたマイは、父親の元に戻ることになる。
だが、浦賀のことが気になって、マイは時々、施設に顔を出し続けた。
しかし、タイミングが合わず。
マイの方は、父親が再婚相手と一緒になって弟が出来ても、家族仲は良好だった。
何より、産みの母親よりも、新しい母親が良い人だった。
マイのことも娘のように、弟と同じくらい愛情を注ぎ込んでくれた。
そのおかげで、マイの心は満たされ、幸せだったのだろう。
専門を卒業後、社会人になってからは、自然と施設から足が遠のいていった。
ふと気付けば、5年以上の月日が流れていた。
そして浦賀と再会した時には、既に浦賀の顔から感情が消えてしまっていた。




