閑話 07
「せ、先生。相談、しても良いですか……?」
高校2年。
本来ならば将来に向けて歩みだすはずの生徒が担任に声をかけていた。
「おう、どうした?」
真守はおどおどとしながらも、意を決したように頷き、話し出す。
「コンクール、の賞金。全額、ケイ君の、耳の器械代に充てて欲しいんです!」
「あ、それ、自分も思ってたネ!!」
そう言って真守の肩を抱き寄せたのは、他クラスの不良・李だった。
「ひぃぃぃぃぃ!!」
「あ、ごめんネッ」
李はかなり慌てたのか、肩を離して真守を突き放したせいで、真守は担任用の机にぶつかって悶絶してしまっている。
「何をやっているのですか……」
そんな2人のコントを呆れて見ていたのは、優等生の浦賀だった。
「しかし、お二人の言っていることは良く解ります。
私にも資金があれば、援助させて頂きたいのですが」
「ビンボー人は辛いネェ。
でも、自分も自販機の下からかき集めたのしか、金は持ってないヨ!」
「貴方、私よりビンボー人じゃぁないですか……」
「でもでも、夢、叶えてあげたいヨ!」
李の一言に浦賀は押し黙った。
痛みが引いてきたのか、真守が答える。
「先生。彼の夢は、2つ、あるんです。
そのどれも、普通の家なら、叶えてあげられる、ことなんです」
その当時、クラウドファンディングのような単語どころか、インターネットという単語ですら、あまり有名ではなかった。
だが、新聞はあった。
記事に載り、時間や日数は年単位でかかったものの、3人が大学を卒業する頃には手術に十分な資金が、高校の元担任の銀行口座には集っていた。
元担任は多少の着服をしてしまったらしいが、大きな問題にはならず。
手術は無事に成功した。
ケイは、音が聴こえること、声が聞こえること、全てを喜び、幸せをかみしめていた。
だが、自身の発する声は、到底“言葉”とは程遠く、擬音に近かった。
だから、頑張った。
とにかく、頑張った。
それには真守、李、浦賀の3人も交替で教え、励ました。
こうして何とか言葉を習得したケイは、真っ先に姉であるアイに会いに行ったのだが、その時は何故か面会すらさせてもらえなかった。




