鼻を明かす 11
結界の中は、1つの綺麗な街になっていた。
「……は?」
レンガ調の建物に、緑が多く取り入れられた風景。
結界の影響で暗かったはずの空は明るく、人々は活き活きと行き交っている。
いつでも剣を抜けるようにしていたリーンは、ただただ、言葉を失くした。
何となく、後ろを振り返る。
そこには黒い結界などはなく、白くて巨大な壁が立ち塞がっていた。
街を歩き、人に声を掛け、情報を得る。
屋台で食べ物を買い、食べてもみたが、味はきちんと感じられた。
もちろん、壁にも触れてみた。
が、結界ではなく特別都市・ベルソデニテの外壁だと思った。
「なんだ? どうなっているんだ、ここは……?」
宿屋は無いが、冒険者ギルドで横になることは出来るはず。
だが、結界が出来る前はお尋ね者だったので少々心配したが。
受付嬢に声をかければ、怪訝な顔もされず、あっさりと3階の鍵を手渡された。
「明日は精霊祭なので、冒険者の方以外も無料でご利用できます。
ただ、3日後のお昼までには出て行って下さいね?」
しかも、その部屋というのは4人で使えるように2段ベッドが2つ設置されていた。
奥には窓があり、小さめのテーブルと椅子がある。
リーンが知っていたのは、大部屋で雑魚寝のイメージだっただけに、驚きを隠せない。
宿は無事に確保できたので、リーンは街を歩くことにした。
「外は魔物で溢れているのに、ここは平和ですね?」
「精霊様に守られている街だからねえ!」
見えないのに、外の世界の魔物は退治してくれているという。
「食べ物はどこから仕入れを?」
「精霊様に頼めば何でも手に入るぜ!」
見えないのに、日々の食べ物は家や店の前に置かれてあるという。
「精霊様はどこに居るんです?」
「そのあたりを漂っているよ。見えないけどね」
見えないのに、街の中には空気のように漂っているという。
情報を得ようにも、そんな住民の思考が理解できなかった。
諦めて宿に戻り、しばらく椅子に座って窓から外を覗いていると、部屋に1人の男が入って来た。
リーンはその男を見、目を丸くする。
そして思わず立ち上がり、部屋の中央あたりまで移動し、じっくりと見つめた。
「ガブリエル、か?」
ガブリエルと呼ばれた男もまた、リーンを見て目を丸くしていた。




