鼻を明かす 05
マルチヨン連合国は規律が厳しすぎた。
が、12歳~18歳の6年間の強制徴兵制度、又は強制研修制度のおかげで、ドラグ王国の崩壊直後に起きた急な魔物の大暴走でも国民全員がすぐさま対応し、生き残ることが出来た。
なお、連合国の首脳陣も切れ者揃いのようで、魔物の大暴走に関連する情報提供者には割引券などの報酬を、魔物を討伐した功労者には金銭的な報酬を、定収入とは別枠の無課税で与えた。
もっとも偽の情報だった場合は言わずもがな。
それでいて、他国からの亡命者ですら年齢関係なく受け入れ、その時点で12歳以上であった場合、12歳~18歳が受ける強制徴兵制度、又は強制研修制度に放り込んだ。
20年間、報酬額は変われども、それを厳しく続けてきたが故に国も存続できている。
「もちろん、12歳からの強制労働制度に関しては、冒険者は別枠だけどね」
そう教えてくれたのは冒険者ギルドの受付嬢だった。
受付嬢と言っても年齢はケイの祖母くらいの女性だったが、リーンは以前にお世話になったことがあるらしく、相手も嬉しそうに色々と話してくれている。
「まぁ、この国くらいじゃない? 冒険者ギルドが残っているのも」
「あぁ、間違いない。他の国の都市も覗いてきたが、どこも日々の食料を得るだけで必死だった」
「ここでは強制研修制度で農業も畜産も教えていたからねぇ。どんなに悲惨な状況でも、消費しすぎず増やすことを考えろって口酸っぱく指導されるし」
そんな会話をしていると、ドアを蹴破るかのように冒険者風情の5人組が慌てた様子で駆け込んでくる。
身綺麗なのに全員が顔を真っ青にさせていることから、何か起きたのだと注目し、誰もが自らの武器に手をかけている。
「アンタら、一体どうしたんだいっ?!」
「教会で治療中のリーダーが!!」
その一言で悟った数名が武器を携え、決死の表情をしながらギルドを後にする。
が、中にはギョッとした表情をした者もいて、それらは最初の集団より後に、しかし慌てた様子で出て行った。
残されたのは、事情を知らないケイ、リーンと6名ほどの冒険者。
あとは、ガタガタ震える新人3名くらい。
「……異形の魔物となったんだよ」
受付嬢はボソリと、2人に聞こえるように呟いた。
「呪いのような動く紋様が耳元に現れて、それが徐々に全身に回っていって、最後は魔物のように人間を襲い出し、暴れて手が付けられなくなるのさ」
お通夜状態になってしまった冒険者ギルドを後にして街を歩けば、頭部まで甲冑で覆った人がレストランの窓際で食事をしていた。
その姿を滑稽とでも思うのか、その窓際には数人の見物人がジロジロと覗き込んでいる。
—— 失礼ではないのだろうか。
というか、そのあたりは規律で決まっていないのだろうか。
「おれ、清掃ギルド長って美人メイドかおばちゃんのイメージだった……」
「ギルド長が自ら街を歩いている、なんて何年振りだろうな?」
「きっと騎士のように御強いのでしょうね」
「誰かを探しているって言ってたよね?」
ケイは、またリーンと同じパターンか?と一瞬だけ目視して警戒したが、相手はチラリとケイを見ただけで反応はしていない。
しかも、まるで対面に誰かが座っているかのように会話を楽しみながら食事中の様子。誰も座っていないのに。
「おい!」
なお、見物人に見回りの兵士が声を掛けた瞬間、一目散に四散していった。
そしてもう1人の新人っぽい兵士に説明する。もしかしたら強制労働制度の学生なのかもしれない。
「見物人の中に、一般人を装った記者が混じっていた。報道犯罪抑止局に連絡しておけ」
「え? 記者なんて居ました??」
そんな会話を聞きつつ、教会へと足を運んだ。




