鼻を明かす 04
ケイは翌々日、リーンを伴って街を出た。
しばらくは監視の目が付いてきたものの、横には細長く、縦には短い地割れを飛び越えると、そこから先の監視の目は離れていった。
リーンが居るからか、ケイの足取りは軽い。
これまでの経緯を、お互いに話しているからかもしれない。
その代わり、1日の進む距離は短くなった。
だが、リーンは時折、依頼で隣の村まで行っていたこともあり、砂漠を歩きなれていた。
今までは寝ずに進んでいたケイだったが、その夜の分の移動距離がゼロになっただけで、日中の移動距離やスピードは、実はそこまで変わってはいない。
効率重視なケイでも、その点でリーンを仲間として受け入れることが出来た。
あともう1つ。
リーンは街を出る前に、ドラグ王国への順路や情報を調べてくれたらしい。
おかげで、次の村へは8日ほどで辿り着いた。
村の住人は4家族13人のみ。
最初は2人のことを警戒したものの、リーンがある者の名を伝えたら態度がコロッと変わった。
そして、1泊だけしたい、水も食料も不要、と伝えたら空き家を快く貸してくれた。
そんな村を何ヶ所か経由しつつ、時折、商隊が居る大きめの村で水を分けてもらい。
約3ヶ月後には、マルチヨン連合国の首都に到着した。
「ここは……凄い、な」
思わずケイが呟くのも無理はない。
首都の外壁は高かった。
街に入るためには身分証が必須で。
門にも鎧を着た兵士が配備されていて。
門の上には兵器が設置されていて、兵士が等間隔で遠方を見張っていて。
なのに、門の中では多くの住人が笑顔で世間話などを交わしていた。
なお、身分証に関してはリーンが獣国でケイの分も用意してくれていたので問題はなかったが。
「マルチヨン連合国は規律を守らないと粛清される国だから、私から離れないでほしい」
リーンは小声でそう言い、まるで街を知っているように歩き出す。
着いたのは街の端、古びた苔だらけの屋敷の前だった。
「規律が厳しすぎるおかげで残されていた、か」
近くに立っていた兵士が近づいてくる。
リーンは鞄から1枚のカードを取り出して兵士に見せれば、兵士もまたじっくりとカードを念入りに確認してリーンに返した。
「……規律どおり、屋敷に戻っても問題はないでしょうか?」
兵士はリーンの問い掛けに渋い表情をしたものの、頷いてから一言、何かを小声で伝えてから足早に去って行く。
「元々、この屋敷は私の正家の所有物。そして、この国の規律では、例え亡命した者の家であっても、勝手に所有物を売買したり、侵入したりすることは禁じられている。この辺りに空き家が多く、兵士が滞在しているのは、そのため」
「そして、その所有物の後継者が戻って来た、と」
「……今の兵士、名前は忘れたけど知り合いでした」
そう言ってリーンは屋敷へと入った。
これまでの経由地で聞いたのは、
・ 現在のドラグ王国は結界の所為で中が見られない
・ 結界に入った調査員や冒険者が誰も出てこない
・ 魔物は1ヶ月に1度、満月の日に必ず魔物の大暴走が起こる
・ それ以外の日に魔物の大暴走が起こることもあるが、数は少なめ
眉唾物の情報としては、
・ ドラグ王国の方面から子供の泣き声が聞こえる時がある
・ その泣き声を聞き続けると人間も異形の魔物になる
・ 結界から異形の魔物が出てくることもある
・ その時の魔物の大暴走は兵器を使えない場合、何十人もの兵士が死ぬ
という内容だった。




