表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とわのゆりかご  作者: 葉月雷音
58/90

鼻を明かす 02

 魔王国の勇者・ケイは、依頼してあった漁船に揺られながら黒い大陸を名残惜しそうに眺めていた。


 ケイとて、別に旅に出たかった訳ではない。

 むしろ、契約がなかったら、前世の強い願望がなかったら、優しい両親と平和な国でずっと過ごしていたかった。


 だが、世界情勢は一変してしまった。


 魔王国ではない場所で偽の魔王国と魔王の候補者が誕生したせいで、閻魔の魂の割り振りも2つの国に分割されてしまっている。

 偽の魔王国側になる元ドラグ王国では、手段を知らない魔王の候補者のせいで魔物が適切に配置されず、結界から溢れて魔物の大暴走(スタンピード)を引き起こしているという。


 しかも、各国を守護し、均衡を保っているはずの大天使が、閻魔の一言で下界を去っている。




 —— 俺が契約したのは、最高位の閻魔だと思う。




 漁船に揺られること、数日。


 最も広い大陸に着き、漁船はケイを残して早々に海へ引き返していった。


 首から下げたペンダントを触りながら閻魔に訊ねる。


「酷い業が大陸中を覆っている。これも俺への試練なのか?」


 返事はない。

 まぁ、なんとなく、解っていたが。




 業の影響だろうか。

 数日ほど歩き続けても、永遠に砂漠が続くだけで街の外壁すら見つけられないでいた。


 海辺の方がまだ、雑草が多かったと思う。



 そう思った翌日、やっと街の外壁らしきモノが見えてきた。

 ただし、まだまだ遠い。


 基本的に魔王とその候補者は食事や睡眠を必須としない。

 疲れはするが、生まれてからずっと鍛えていた俺にとって、そこまで辛くも感じられなかった。


 だが、精神的には辛い。

 何せ、砂漠には何もない。


 魔物は居ても餓死寸前でもなければ、魔王や候補者には襲い掛かってこない。


 そして、閻魔からは契約の証明であるペンダントを渡されている。

 これには、いざという時に相手を魂ごと消滅させることが出来る術が仕込まれている。


 大天使との契約であれば、勇者の能力として付与されるのが消滅の術。


 ただし、大天使の場合は犯罪者に限られるが回数は無制限。

 消滅した魂の外郭は再利用されるが、人格などの情報は抹消されるらしい。


 一方、閻魔の場合は契約した願いの数分だけ使用が出来る。

 ケイは2回。

 閻魔曰く、魂の外郭すら抹消されて跡形も残らないらしい。


 説明されたケイでも、その違いは解らなかった。


 だが、魔物はペンダントに仕込まれた術、又は閻魔の気配を感知できるらしい。

 例え砂漠のド真ん中で寝てしまっていても、命を狙って近寄ってくる魔物は皆無だった。




 数日ほどが経ち、街の門の近くまで来たものの、すぐには街に入らなかった。

 3日ほど様子を伺うも、門番が見ているのは魔物か、人間か、目視しているだけの様子。


 以前ならば、魔王国の方面から来た、というだけで追い返されたこともあったらしい。

 が、その様子は見受けられない。


 なので、その調査を終えた日の昼頃には街へと足を踏み入れた。



 街はかなりの広さがあった。


 どうやら元々は聖国アルルドネイカの首都だったようだ。

 ドラグ王国よりも距離があったため、様々な地域から人々が逃げ込んできたらしい。


 食料は支給が主で、1日に1回、大人も子供も関係なく、1人1個の細長いパンを渡される。

 中には他人のを奪おうとする輩も居たが、それらは衛兵によって切り殺されていた。


 何も殺さなくても、という声もあった。


 だが、誰もが瘦せ細っている姿を見るに、酷い空腹から襲撃したのだろう。


 そんな街には活気が全く無かった。


 外壁は石を積み上げられただけの、屋根のない家。

 20年以上前から使われているだろう、砂だらけの絨毯。

 そこで声を潜めるように生活を送る、3組の家族。

 立派な家なのに立派な穴が壁に空いている家の老夫婦と、恐らくその親族。

 最初は教会だったのか、今では数十組の家族が集まっている場所もある。


 誰もが()()に恐怖していた。



 それは街が夜になって判明する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ