耳に逆らう 19
ガブリエル側です。
精霊祭の日に向けて、特別都市・ベルソデニテの街が華やかになっていく。
弟子たちは全員がこの街に籍を置いてあったので、当日はお祭りを楽しむだろうと、ガブリエルもまた冒険者(獣医)としての仕事をお休みにすることを決めていた。
その前日。
またも冒険者ギルドでアークという青年に指定依頼をされていたガブリエルは、嫌な予感をさせながらも仕方なく指定された屋敷へと出向く。
だが、そこにはマモルと、あの魔獣が座って待っていた。
「マモルっ!!」
「ガブリエル!」
マモルはさっと立ち上がり、椅子が倒れたことも無視してガブリエルへと抱きつきに行く。
ガブリエルもまた、マモルが帰国したことをハグで喜んだ。
こうして喜びを分かち合った後、見計らったようにアークが入室する。
そして、マモルの身に起きたこと、聖女キワからの伝言などを、アークとガブリエルへ伝えた。
「マモル、こっちの言葉、上手くなったね」
「何ヶ月もキャラバン? 大きなトラックの荷台みたいな馬車に揺られていたからね。ヒマ過ぎたから、同乗していたリーンや交替で休憩していた冒険者から教えてもらっていたんだよ。たまに道が悪くて舌を噛んだけど」
「そのリーンという者は今、どこに?」
「元勇者、今は犯罪者として指名手配されているナナシと組んでいたからか、衛兵がビックリしている間に街を出たんだと思う。聖女の上司っぽい人にも、そうした方が良いって助言されていたから」
アークは<聖女の上司っぽい人>というのは総司祭のことだろうか、と考えながらも、ずっと幼女が使い続けているベビーベッドの中に眠るトワを見る。
ここに今朝、幼女を帰されると昨晩に報告を受け、大至急、この屋敷に運ばせていた。
「さて。マモルはその総司祭から、その子と共に暮らすよう言われたと言ったね? 君としてはどうしたい?」
「どう、とは?」
「襲撃された部屋か、こちらの屋敷、又はあの小屋で暮らしたいか。
ボクとしては、襲撃された方の部屋に戻って欲しいのだけど」
マモルは少し悩み、うんと一人頷いて返答する。
「トワと一緒なら、あの小屋でまたお世話になりたいです」
「それは、また襲撃されることを考えて?」
「それ以外に何がありますか?」
「もう襲撃は無いと思うんだけど」
「いえ、近いうちに必ずありますよ」
マモルはアークを、否、アークジア王子を見透かすように見つめる。
その王子の未来を、遥か彼方を見ながらマモルは答える。
「元国王が懺悔する出来事が必ず起きます」
そんなマモルにアークは背筋を凍らせた。
しばし、沈黙が場を包む。
「アーク様、お代わりは要りますか?」
それを打ち破ったのは、全身甲冑姿の女性だった。
その頃。
リーンは聞き込みの結果、獣国を目指していた。
「ドラグ王国は隠しているが、前国王は大天使を殺そうと模索したらしい」
「王国の大天使が、今の国王を操って内乱に発展させたってウワサが当時はあったよ」
「もう何百年と前の話しの挙句、最も長寿のエルフ族や龍族は話したがらないし、人族では当時を知る者はもうとっくに死んでるよ。知っているとすれば獣国の亀族の長くらいじゃないかい?」
マモルの名が間違っていたので修正しました。




