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とわのゆりかご  作者: 葉月雷音
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耳に逆らう 18

マモル側です。

 リーンは国賓として扱われた経験など一度もない。

 なので、マナー違反をしていないか気が気でなかったが。


「マナーなどは気にしなくて大丈夫ですよ」


 聖女キワがいるテーブルで食事中、まるで心中を読んだように聖女キワは返答した。


「マルチヨン連合国はとてもマナーに厳しい国ですが、ここは聖国アルルドネイカ……恐らくは、ドラグ王国よりもマナーは緩いはずですよ」

「我が国は、連合国で虐げられている光属性や聖属性の魔法使い、獣国の祈祷に目覚めなかった術者を救済すべく建国されました。文化が異なるため、マナー違反で検挙されることはございません」


 聖女キワの後ろに立つ獣人のメイドが解説した。



 食後には軽く今までのことを話し、聖女キワの質問に答え、あとは自由を与えられる。



 そんな日々が1週間過ぎた頃。


「さて、そろそろ私に御迎えが来そうですので、これからについてお話ししましょう」


 病気とは思えないほど健康的な聖女キワが、メイドを通じて皆を会議室へ招いた。




 会議室には、既に着席している聖女キワと、その背後に真っ黒いロングコートを羽織ったフードの者が立っていた。

 マモルが何故かギョッとして幼女をしっかりと抱きかかえる。


「後ろの人物は気になさらないで下さい。全てが終わるまでは、恐らく動きませんので」


 こうして着席してみても、不気味な姿が目に入ってしまう。


「まずは、マモル様」

「はっ! はいっ!」

「トワを、こちらにお願いできますか?」


 聖女キワは両手を出した。

 骨と皮ばかりの、筋肉がほぼ無い、細すぎる腕。

 それを見れば、聖女キワが病気だと納得できる。


 マモルは恐る恐る、その腕に幼女トワをゆっくりと乗せた。


 だが、存外力はあったらしい。

 しっかりと幼女トワを腕の力だけで支えると、聖女キワは自らの心臓の傍へと抱きかかえた。


 少しだけ幼女トワを温かな光が包んだかと思えば、聖女キワは悲しそうな表情をしてから、幼女トワをゆっくりとマモルへと差し出す。

 マモルは受け取り、緊張させたままの足取りで自席へと戻った。



「結論を言いましょう。


 トワは、勇者ではありません」



「……えっ?」



「驚くのも無理はありません。確かに、トワは最後の転生者ではあります。ですが、元々ドラグ王国には勇者が既に居るのでしょう。その勇者が大天使を裏切ったがために、トワは<ゆうしゃをせんていするししゃ>として、勇者を選定し直す役目を担わされて、こちらに転生したようです」


 聖女キワはリーンの疑問に答え、悩まし気に大きな溜息をつく。


「もしかしたらと、最悪の事態を想定していましたが……ふぅ。少々、私も想定外でした。少し、情報を整理させて頂いても宜しいかしら? ああ、この場に居て下さいね。2分くらいで大丈夫ですので」



 聖女キワは紅茶を4杯もお代わりしただけで、誰も立ち上がることはなかった。

 そして2分が経ったのだろう。



「お待たせいたしました、再開しましょう。

 私からは、最後にトワに謝罪するだけです。後のことは、全て後任の聖女に引き継いであります」


 そう聖女キワが言うと、ドアをノックして1人の少女が入室してきた。

 リーンとマモルに対して深々と頭を下げている。


「トワはマモル様を信用している様子ですので、トワの代わりにお答え下さい。

 我が国に残られるか、ドラグ王国にお戻りになられるかを」


「戻りたいです」


 マモルは即答した。リーンも頷き返す。


「畏まりました。後のことはお任せ下さい、キワ様」


 答えたのは後任の聖女の方だった。


「トワ、」


 聖女キワは目に涙を溜めながらマモルの元へと歩き、幼女トワの視線に合うよう跪く。

 幼女トワもどこか哀愁漂う表情で聖女キワを見つめた。


「迎えに行けなくて、ごめんなさい。私は、貴方を悲しませたくはなかったの。

 だけど、今の貴方はもう、私の知るトワではないのね……。

 それでも、これだけは、どうしても伝えたいの。


 例え死んでもずっと愛しているわ、トワ」


 聖女キワは、そう言って幼女トワの頭を撫でて、不気味なフードの者と共に部屋を後にした。




 2人が後任の聖女に転移の術式が描かれた部屋に案内されると、真っ白い翼を生やした人物が部屋のほぼ中央に立っていた。

 後任の聖女が頭を下げれば、その白い人物が2人を見て目を細める。


『マモル。主は帰国後、トワと共に過ごし、時を守れ』

『リーン。主は帰国後、囚われる前に国を出よ』


 ほぼ同時に本人のみに聞こえた声に、マモルとリーンは目を見合わせた。


『マイカ。主はここに残ることを命じる』


 精霊は言葉を耳にした途端、浮くことが出来なくなって床の上に落ちた。


『魔獣。主は帰国後、懺悔することがあれば、この宝玉を魔王へと献上せよ』


 いつの間にか、魔獣の首にはペンダントが着けられていた。


『聖女キワの代理として、我ミカエルが主らをルシファーの国へとお返しする』



 こうして3人と1匹は強制的にドラグ王国の王城の衛兵の前へ転移させられた。

 なお、この件でドラグ国王は度肝を抜かれたことは言うまでもない。




『後任の聖女よ。大天使の均衡は破られた。今を以て神は世界に試練を科す』


 大天使ミカエルは、不審にもそう言い残して下界を去った。


マモルの名が間違っていたので修正しました。

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