耳に逆らう 17
マモル側です。
聖国アルルドネイカの衛兵が国境付近で冒険者ギルドから引き取ったのは大きなキャラバンだった。
そしてキャラバンに3名の主要人物が乗っていることを確認し、聖国アルルドネイカの首都へと運ばれていく。
その3名が聖女キワの前に登城できたのは、それから約9ヶ月後のことだった。
「ナナシは逃げたのですね?」
聖女キワの第一声で、一部の貴族が鼻で笑ったらしい。
「まぁ、仕方がありません。それよりも、トワを無事に運んでいただき感謝致します」
「恐れ入ります」
そう答えたのはリーン。
マモルはただただ、狼狽えて幼女トワをギュッと抱えていた。
「そして、もう1つ。そこに居ますね? 大罪の精霊マイカ」
基本的に精霊は名を持たない。
だが、トワに隠れていた精霊はビクッと大きく動揺し、光源を一瞬だけ大きくさせてしまった。
「それから、世界の在り方を変えようとして粛清された、元ドラグ国王様」
マモルの傍に寄り添っていた魔獣がニャンと鳴く。
魔獣は既に呼ばれる覚悟ができていたらしい。
「その2名にも、トワを守っていただいたことに変わりはありません。本当に感謝致します」
精霊は安堵したものの、表に出る気はなかった。
聖女キワは壇上をゆっくりと降り、マモルの前へと歩む。
『トワ』
呼ばれた幼女は目を丸くさせた。
『貴方を迎えに行けなくて、御免なさい』
久米 希和は、聖国アルルドネイカに転生する前に大天使とある契約を行った。
希和の願いを大天使が叶える代わりに、大天使の願いである勇者を希和が担うこと。
勇者は特殊な特技など持っていなくても転生者であれば誰でも担える。
だが、この世界での勇者は決してカッコイイ役目ではなかった。
しかも、死に方が選べないし、次の生も選べない。
それでも希和は願いを叶えたかった。
「私の前世は、生まれた時から目が見えませんでした。
旦那もまた弱視でしたが、永和と名付けた子は健康に育ちました。
私たちの視力が弱いことを、あの子は解っていたのでしょう。
あの子は私たちの手伝いを良くしてくれました。優しい子でした。
私たちは永和を驚かせようと、永和が寝ている間に引っ越しをしました。
ですが、あの時から永和は変わってしまいました。
ショックから入退院を繰り返した私は、結局、そのまま心臓発作で死にました」
聖女キワはポロポロと涙を流す。
「永和がこの世界に来るまでに、ここを住みやすい国にしようと決意しました。
そして永和に謝罪し、この国を永和に渡すことが大願でした。
今、この方々のおかげで永和と再会することが出来ました」
聖女キワの発言に貴族が困惑する。
「ですが、永和は皆さんの見立て通り、まだ赤子です。
この国の将来に関しては、この方々と話し合って決めたいと思います」
貴族はホッと安堵していたが、聞かされていたリーンとマモルは目を丸くした。
「とはいえ、この方々は到着したばかり。
1週間ほどはお体を休ませて頂きたいと思います。
この方々を、聖女キワの国賓として丁重におもてなし致します」
—— 聖女の発言はよく解らなかったけど、大変なことになった!
マモルがそう感じたのは、メイド付きの豪華な調度品の煌びやかな部屋に案内された後だった。
マモルの名が間違っていたので修正しました。




