耳に逆らう 16
ガブリエル側です。
楽譜の存在は爆発的に広まり、1年と経たずにピアノを弾ける者が増加した。
その楽譜が版権料としてガブリエルの元へ舞い込む。
そして当然、マモルの方にも振り込まれていった。
ガブリエルはその収入をほぼ全て獣医の研究費用とした。
そして感化された魔獣使いの3名が弟子になる。
しかし、ピアノの音階に関しては進展が全くなかった。
ガブリエルは気にしつつも、獣医の弟子をとったことで演奏会から足が遠のいていった。
アイは楽譜を貰ったものの、アイがピアノを触ることはなかった。
「ここは、アイの知っている世界ではないもの」
アイが文句を言うたびに、ウル王女はやんわりとアイに伝えた。
「皆、解ってない!」
アイは独り、憤りを感じていた。
アイとて、別に元の世界の文化を持ち込みたい訳でも、広めたい訳でもない。
ただただ、変な音だったり、意味が解らないマナーだったりするから、教師に問いかけているだけ。
それなのに、誰もがアイを文句ばかり言う問題児と見做す。
こうして音楽の一件から10ヶ月が過ぎる頃。
「アイ、精霊祭に行きましょう?」
ウル王女はアイをお誘いした。
クラスメイトの誰もが2人の様子を伺う中、アイは初めて耳にした祭りの名に首を傾げる。
「精霊祭? お祭りってことは、屋台とかが出るの?」
「ええ、そうよ。私の兄・アークジアが精霊の過激なイタズラを治めたことを住民が感謝して始まった、特別都市・ベルソデニテのお祭りですわ」
アイも特別都市・ベルソデニテのことは耳にしていた。
それだけに、特別都市に入れるならばと、そのお誘いに乗ることにした。
「ウル王女様、」
「解っていますわ」
城へ帰宅後、護衛の1人が険しい表情でウル王女を咎めようと口を開いた。
だが、ウル王女は百も承知で返答する。
「今の兄上と面会するためには、私と貴方達だけではお会い出来ませんもの。アイは聖国アルルドネイカの留学生です。彼女をお連れするとなれば、兄上は無視できませんから」
「ですが、聖女より届いた追加の手紙にも、やはり街を出さないで欲しいと書かれていたようですが?」
「なら尚更、連れて行きましょう。兄上には、そこまでしないとお会い出来ませんもの」
—— こうして精霊祭の日を迎えた。
マモルの名が間違っていたので修正しました。




