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とわのゆりかご  作者: 葉月雷音
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耳に逆らう 12

 一晩悩んでも埒が明かない。

 相手は王族、嘘をつくわけにもいかない。


 だったら、前日は休みにして、たっぷり眠って頭をスッキリさせることにした。




 そして、当日。


 覚悟を決めて登城したガブリエルだったが、通されたのはありがたいことに会議室のような場所で大広間ではなかった。

 さらに座っていたのはドラグ国王と御付きの4人、少女2人という比較的少ない人数だった。


 少女のどちらかがウル王女なのだろう。

 もっとも、装飾品の数の違いから何となく察しはついているが。


 事前に商業ギルドでマナーを聞いていたガブリエルは、その通りに名乗り、形式通りの言葉を使う。

 ドラグ国王は、使われ慣れているのだろう。


「うむ、仔細は調べさせた者から聞いている。頭を上げ、そちらに座りなさい」


 そう言われ、執事に案内された席へと座る。


「さて、来てもらったのは、聖国アルルドネイカからの留学生が、汝の作曲した音楽について物申したいとのことでな」


「聖国アルルドネイカの聖女候補、アイ・アルルドネイカと申します!」


 ドラグ国王が発言の許可をする前に、少女の1人がテーブルをタンッと叩いて立ち上がり、ガブリエルに食って掛かる。


 装飾品が()()()少女の方がウル王女だったらしい。

 ウル王女はもう1人の少女の態度に驚くこともなく紅茶の香りを楽しんでいる様子。


「何ですか、あの曲は! 原曲とは程遠いモノを広めるなんて!!」


 一方、少女はガブリエルを怒鳴りつける。


 ドラグ国王の前で、非公式の場とはいえ王族ではない者がゲストに声を荒げることは、どの国の使者であったとしてもやってはならないこと。

 まして、国王から発言の許可を貰わず話し始めるなど、この場の王族に対して失礼にも程がある。

 あげくに、装飾品の数が多すぎる。いくら質が悪くても、ウル王女より数が多いことは宜しくない。


 色々とマナー違反をする少女にガブリエルはただ唖然としてしまう。


「アイ、少し落ち着きなさい」

「でもっ」

「まだ国王がアイの発言を許可していませんよ?」


 少女アイの隣に座っているウル王女が窘めると、マナー違反に気付いたアイはやっと冷静になれたのだろう。

 椅子に腰かけ直し、ドラグ国王に対して謝罪する。


 ドラグ国王は少女の謝罪を無視してガブリエルに向き合う。


「という感じゆえ、汝から説明をしてほしい」


 恐らくドラグ国王は商業ギルドから真実を聞いているのだろう。

 だが、隠している内容をどこまで話して良いのか解らない。

 まして、相手は他国の留学生。それも、恐らく前世はテラ、日本人だった可能性が高い。


 この国に今、マモルが居なくて良かった。


 ガブリエルは心底から天の計らいに感謝する。


「あの曲は、ある転生者が思い出しながら楽譜にしたモノです」


「でも間違っているわ!」

「アイ!」


「私は『テラ(地球)フレンチ(フランス人)』、転生者です」


 ガブリエルの日本語の発言にアイは目を丸くした。


「楽譜は読めますし、『ジャパン(日本)』の曲は大好きでした。ですが、プロの演奏者ではありません。それに、この曲に関しては、『リメイク』された方しか聞いたことがありません。そして、その転生者の彼も私と同じです。プロではありません。ですが、私の練習を見に来た人から曲が広がり、さも『オリジナル(原曲)』のようになってしまいました。それで気分を害されたのであれば、申し訳ございませんでした」


 ()()()()()()説明したガブリエルは執事に合図し、事前に準備してもらっていた1枚の紙を()()()()()()出してもらった。


「楽譜の複製はお持ちしました。そちらは()()()献上します。が、恐らくはテラ出身ではないと読めないでしょう。私も彼もプロではないですが、基本的な読み方であればお教え出来ます」


 ドラグ国王は楽譜の複製を手にし、隣に座っている者へと渡した。


 渡された者は音楽家なのか、楽譜をじっくりと見、頭を横に振る。

 だが、ドラグ国王には聞こえる音量で何か言っていることは確かだったので、ガブリエルはただドラグ国王の判断を待った。


 アイは首を長くして覗き込もうとし、ウル王女に膝を叩かれる。


「大儀である」


 ドラグ国王はガブリエルに答えつつ、楽譜を手にしたままの音楽家に言う。


首席奏者(プリンシパル)、後で読み方を教わるように」

「承知いたしました」


 流れ的には終わってしまいそうだが、これでは少女アイが納得いかないだろう。


「テラの言葉で発言してもよろしいでしょうか?」

「許そう」


 ドラグ国王はガブリエルの意図を汲んでくれたのだろう。

 ()()()()()()()()()()ガブリエルは少女アイを見て伝える。


 ちなみに、ガブリエルが頑張っていたのは仕事だけではない。

 マモルと話す内に日本語も理解し、上達している。


『これはただの儀式(セレモニー)です。儀式で楽譜の清書(コピー)陛下(キング)の所持品になりました。謁見の許可をもらえば、原曲(オリジナル)を知っているであろう貴方であれば、許可されて見ることもできるでしょう。もし楽譜が間違っているのであれば、どうかご教授ください』


「わ、私にも発言の許可をください!」

「ならぬ」


 ガブリエルを真似すればアイも話せると思ったのだろうが、ドラグ国王は許可しなかった。

 むしろ、無視されずに返答があっただけでもありがたいことなのだが、アイにはただただ悔しがることしか出来なかった。

(9.15)一部を修正しましたが、脈絡は変わっていません。

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