耳に逆らう 09
アイは聖国アルルドネイカの一般家庭に生まれたが、聖女キワ・アルルドネイカの御告げにより、1歳の時にドラグ王国の貴族に養子として迎い入れられ、ウル王女の側近候補の1人として養育されていた。
その時期にウル王女と護衛の2人とは仲良くなったものの、4歳までに護衛としての能力も、執事やメイドとしての能力も開花しなかったが故に、御告げどおりに聖国アルルドネイカの家族の元へと帰された。
だが、既にそこにはアイの居場所は無かった。
アイは聖女キワに抗議文を送ったが、既に市井に戻った者なので、目を通されるはずもない。
そこで、ドラグ王国滞在中に炎系の攻撃魔法だけは得意になったアイは、聖女キワに会える可能性が高い、聖女候補の試験を受けることにした。
聖女候補の試験は、魔法が使えることと、文字が読めること。
そのくらいなら問題ないと安易な気持ちで2度目の試験を受けて、今年の新年に合格証書を貰う。
しかし、結局は聖女キワには会えないまま、聖女候補のまとめ役である副教皇から、ドラグ王国の貴族学園に留学するよう言われてしまった。
「でも、こうしてドラグ王国に戻って来られたのだもの。良かったわ」
「本当よ! 全く、素直に勉強をしていたらメイドにはなれたでしょうに」
アイの一言に護衛の1人が呆れて答えた。
アイは決して馬鹿ではない。
何せ、魔法の制御には知識が必須なあげく、普通の火ではなく、高度な炎を扱えているのだから。
だが、アイは怠け癖が酷かった。
さらに養育を施していた両親は子供が授かれなかったがために、アイの我儘を受け入れ、アイを甘やかしてしまった。
「いつ到着したの?」
「昨晩よ。お城の一角にある迎賓館でお世話になるわ」
「それなら夜も安心ね!」
ウル王女は嬉しそうにアイと会話をしていたが、護衛の2人は徐々に顔色を悪くする。
そして、あまりにも聞いていられなくなった1人が口を挟んだ。
「アイ、ちょっと良いか?」
「なぁに?」
「我々は護衛だが、アイが来賓として来たことを伝えられていない」
「3人を驚かすためじゃない?」
「最初は私もそう思った。だが、話しを聞くに、迎賓館は国賓ではないと長期滞在は出来ないことになっている」
「こくひん?」
「国が招待する最も格式が高い賓客のことよ。聖女くらいの位がないと、本来は宿泊さえさせてもらえないはずなのよ」
そう答え、困った様子の護衛2人。
「あら? それなら私の名前を使えば良いのよ」
「良いの? やったー!」
「「ウル様!!」」
護衛の2人は即座にウル王女の発言を否定した。
だが、ウル王女は譲らない。
「アイは私にとって大切なお友達だもの。お父様も許してくれるはずよ」
その一言に護衛の2人は溜息をつくことしか出来なかった。
一方、城内では聖女の密書にドラグ国王が頭を悩ませていた。
白い鳥の形で届いた魔法の手紙には、
『大天使の御告げにより、アイを貴族学園に留学させることになりました。彼女はウル王女を不幸にするでしょう。
しかしながら、我が国内に居れば第二の大罪者となり、世界中に波乱が広がる恐れがありました。我が国に帰省すること以外の援助は可能な限り致します。
申し訳ございませんが、アイをよろしくお願い致します。
なお、アイを3ヶ月間は城下町から出さないでください。これは御告げではなく、私個人からのお願いです』
と書かれてあった。




