耳に逆らう 06
この世界にも、時期を定めた一斉長期休暇という概念はある。
そんな時期を狙って、ナナシの計画は動き出した。
リーダーは、王城の様子を監視し、邪魔になりそうなら足止めする役を担った。
なのでリーダー以外の大人2名は、王都からの応援を足止めすべく、騎士団が滞在する箇所を襲撃できるように身を隠した。
以前に侵入したことがあるリーンは、その技術を見込まれて、再度、小屋に侵入する役目を担わされた。
小屋に入ったリーンは、ナナシ特製の精霊の目潰し薬をまき散らした。
その後、精霊特有の隠れ蓑術を封じる札を2階の神棚に貼る。
途端に、隠れていたであろう精霊が一気に1階の床に落ちてきた。
そして、ナナシが見込んだ通り、その中にエルフっぽい耳の幼女が含まれていた。
その者を暴き出し、ナナシに渡すまでがリーンの役目。
だが、精霊たちは全員でリーンに体当たりを仕掛けてきた。
その間に、幼女を隠していた精霊が我に返ったのだろう。
まだ薬の効果は解けていないようだったが、幼女を半透明にさせ、低空飛行で小屋の外へと連れて行ってしまう。
慌てて小屋の外へと出るが、札の効果は小屋の中にしか効かない。
リーンは急ぎナナシへと白い鳥を飛ばすことにした。
白い鳥を受け取ったナナシだったが、目の前にやってきたアークジア王子のせいですぐには動けなかった。
アークジア王子は刀の先をナナシに向ける。
「ボクの領地にナナシが侵入するなんて思ってもいなかったよ。理由を聞いても?」
「・・・」
「まぁ、聖女の依頼……だろうね」
そう答えながらもアークジア王子は刀を鞘にしまう。
「ボクは勘が良い方で、さ。何となく、あの赤子は精霊とただならぬ関係があって、聖女は以前に精霊たちのことを御告げで聞いたと言っていたから、まぁ、関係があるんだろうな、って思ってはいたけど」
「・・・」
「キミ、ここに侵入する計画の前に、顔に出る癖、直した方が良かったんじゃないかな?」
「っるっさいわ」
「多分、キミと話しが出来るの、これで最後になるんじゃないかな。違う?」
「・・・」
アークジア王子の言葉にナナシは答えない。
答えたくなんてなかった。
何せ、その答えを知っているから。
聖女から、今のアークジア王子が本物の王子ではないことを聞かされていたから。
「偽りの王子には、勇者と同じ死に方が出来るって知ってる?」
「・・・」
「まぁ、いいや。連れて行くんでしょ? あの子。
結局、あの子は勇者なの? 勇者じゃないの? それだけは知りたくてね」
「それは、まだ誰も解らない」
聖女キワでさえも、会わないと解らない、そう言っていた。
ナナシからの返事がないことに苛立ちながらも、リーンは幼女を連れた精霊の後を追っていた。
辿り着いたのは1件の集合住宅。その一番上の部屋。
屋根から伝って窓を外して侵入すれば、あの時の魔獣と、太めの少年が立ち塞がっていた。
どうやら、あの時も魔獣はテイマーの少年と一緒に幼女の護衛を担っていたらしい。
だが、幼女の手前に居た精霊の状態を見て、すぐに意図を察する。
リーンは急ぎ、魔獣と少年の奇襲による痛みをも無視し、その精霊へと突撃した。
その直後、精霊が発動した転移術によって部屋からは誰も居なくなるのだった。




