耳に逆らう 05
結局、幼女に関することは他言無用と言われ、事情を聞くことすら叶わなかった。
その代わり、なのだろう。
今の住居から少し広めの部屋へと引っ越すことになり、そこで魔獣と住むことを許可された。
『やぁ、マモル』
そして何故か、隣の狭めの部屋にはガブリエルが居た。
『君にこの国の言語を指導するよう、国から要請があってね。最低限、言語を話して自力で仕事が出来るようにさせなさい、と。半ば強制で』
ちなみにイラストのことを聞けば、
『あれは、部屋を掃除しに来ていた清掃ギルドの子が持ち帰ってギルド長に渡していたらしい。そのギルド長から巡り巡って国王に開示された後、高価な枠に入れてオークションで販売されていたようだね』
と教えてくれた。
なお、その売上金の半額は商業ギルドに仮登録されたマモルの口座に入っているらしく、売上が全くなかった時期の食費や光熱費、今もかかっている雑費など、そこから引かれていっているとか。
『この家賃も、もちろんそこから引かれるからね』
転生者は、最初の2年間だけ無償で面倒を見てくれていた、らしい。
以降は1年ごとに負担が多くなり、身体に障害が無ければ8年目で市井の者と同じ扱いになる。
その間、外出の際に監視がこっそり尾行しているらしい。
監視に気付いて巻くような者や、悪事を働くような者は、即座に全額負担となる。
ただし、引き籠りの転生者が増えたせいで国庫の財源が減ってきていた。
その筆頭だったのがマモル。
だが、偶然目にしたマモルのイラストを褒め称えた貴族のご令嬢がいたらしく、そこから一気に人気が出たそうだ。
『あと、この国に限らず、この世界ではハンドジェスチャーの意味がテラとは全く違うんだ』
そう言いながらガブリエルが身振り手振り、英語を交えて教えてくれる。
だが、それはマモルにとって衝撃的だった。
毎日、風呂に入りたい。
マモルのジェスチャーでは、硬いパンが好み、になった。
毎日、着替えたい。
マモルのジェスチャーでは、大きいパン1個でお腹いっぱい、になった。
—— あまりの衝撃的な事実に、マモルが叫んだことは言うまでもない。
それから4ヶ月が経とうとする頃。
深夜、不思議な物音と魔獣の唸り声で目覚めたマモルは、ガブリエルが言っていた泥棒が増加している話しを思い出し、護衛用の魔道具の杖を手にした。
ゆっくりとその部屋に近付くと、どこか温かな光を放つ何かが、部屋のドアの隙間から出てきてマモルを一周する。その部屋は、魔獣のための部屋だった。
そして、光はドアノブに座った。
「なに?」
覚えたての言葉で尋ねても返事はない。
代わりに、光はドアノブを軽く叩いた、気がした。
そっとドアを開けば、魔獣が困った様子でマモルの足元にやってくる。
魔獣が無事なことに安心しつつも、念のために杖を構えながら奥へと進めば、わきからすっと一足先に歩んだ光が、普段は魔獣の座っているクッションの辺りを照らし出してくれた。
そこに居たのは、あの幼女だった。




