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とわのゆりかご  作者: 葉月雷音
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耳に逆らう 03

 リーンは愕然とした。



 元々、リーンは他国の貴族の子息だったが、両親が暗殺された際に、暗殺者がリーンを見逃してくれたおかげでスラムに辿り着くことが出来ていた。

 なお、さらに運が良いことに、ドラグ王国の前国王がお忍びでスラムを視察しており、その際にリーンを含めた貴族の子息を保護、ドラグ王国の特別都市・ベルソデニテの外周区に住まわせてくれることに。


 以来、リーンは冒険者ギルドに登録し、すぐ近くの王都の冒険者ギルドと共同で魔物狩りを行い、生計を立てていた。

 ただし、ベルソデニテを出られるのは共同で魔物狩りを行う時のみ。

 パーティであっても、街を出ることは決して許されなかった。


 どうにかして街を出たかったリーンは、外壁をよじ登ったり、穴を空けようと奮闘したりしたが、どれもセキュリティが厳しくて断念した。


 そして、冒険者ギルドで耳にした、ガードハンド・フォクスという有名人の逸話。


 彼は元々、転生者だったので王城に匿われていた。

 だが、騎士になれば郊外に出られると聞いて騎士になったという。

 もっとも、その見習い期間中だった1ヶ月後には辞めてしまったらしいが。


 ならば、自分も騎士に志願すれば郊外に出られるのではないか。


 こうして騎士見習いになったリーンだったが、配属されたのは新設第三騎士団で、将来的にはウル王女の直下になる予定の、まだ規律すらも定まっていないような騎士団だった。

 だが、既に王都には第三騎士団の寮があった。

 これは好機とばかりに移住してみたものの、有事の際に休暇を返上できるよう、例え長期休暇でも王都を出ることは許してもらえなかった。



 そんな自由の無い生活を2年も送る中、ある時から、門からベルソデニテを眺める第一騎士団長の姿を見かけるようになった。


 第一騎士団はアークジア王子の直下になるためか、王都とベルソデニテを高頻度で行き来している。

 それに、確か王子はベルソデニテの中央区に居を構えていたはず。


 気になって声をかけてみるが、軽い世間話程度で、結果的には相手にされなかった。


 それでも、めげずに声を掛け続ける。




 ある日、唐突に第一騎士団長は言った。


「お前は、この世界の何を知る?

 今期で私は団を抜けるつもりだ。こんな私に関われば、この世界を壊すことになる。それでも私についてくるならば、好きにしろ。ただし、私は責任が取れん。あと、死ぬ覚悟はしろ。必ず最後には死ぬ。それだけは言っておく」


 何を言っているのか、このおじさんは。

 リーンは困惑して返答できなかった。




 それでも、リーンは自由になれることを期待して、第一騎士団長、もといリーダーについて行った。




「(この選択は、失敗だったのだろうか)」


 リーンは現状から過去を後悔していた。


 真後ろの化物相手に失禁してしまったというのに、リーダーはそれと握手を交わしている。


 元勇者ナナシと言えば、聞こえはいいが怖い噂もある。

 マルチヨン連合国の飼犬、盗賊の死神、跡形無しの暗殺者、など。


 今だって、ナナシが真後ろに居なくなったというのに、未だに身体を動かせていない。

 他の2人だって、ただただリーダーを見つめていることしか出来ていなかった。




「つまり、マモルではない他の者が小屋に侵入したから魔獣は襲い掛かったが、その者がナイフで威嚇しつつ出て行ったのではないか、ということかな」


 ガブリエルを介してアークの話しを聞いたマモルは頷き返した。


 結果的に、数日間も通い続けたマモルは魔獣を手懐けることに成功させた。

 魔獣がネコ科に近い生態だったことも功を成したのだろう。


 そして魔獣も悩んだ末に頷いていたことからも、その線が高いとアークは結論を出す。


『この家には何か秘密がある、とか?』

『宝石の類だと何も無いが、転生者の精霊が住んでいて、過去に1人と1匹の失踪事件があったらしい』


 マモルの質問に答えたガブリエルは、一応、念のためにアークにも今の話しを翻訳しておいた。

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