臍を噛む 11
まず、侵入経路を調査した。
が、そもそも痕跡が一切ない。
次に、盗まれたモノを運び出す手段を考えた。
が、こちらも痕跡が一切ない。
「そもそも、食材をしっかり帳簿につけなかったオレが悪いのか」
何を持ち込んで、どれを使用したのか。
盗まれた物の種類や数どころか、共通点すら解らないのでは、お話にならない。
ガウラはその日から帳簿をつけ始めると、朝もきちんと起きることが出来た。
さらに赤子の散歩も徐々に範囲を伸ばし、森の近くまで行けるようになった。
そして、帳簿をつけ始めた数日間は、盗まれることもなかっただけに、少し油断していたのだろう。
「……え? 帳簿を盗まれた?」
朝、ミリアがいつものようにやってきて、ガウラに真っ先に言われたことだった。
ミリアは赤子に離乳食を与え終えると、先にマリアへ報告した。
マリアは驚きつつも、思いついた事案があったのでアークジア王子に速達を出した。
この世界の速達は、手紙をすぐに届けるという専属の仕事人がいる。
アークジア王子の場合、あちらこちらを飛び回っているので、当然ながら費用も割増しになる。
ミリアが帰った後、赤子の昼寝を挟んだ。
騎士をしていた頃にはありえなかったし、考えられなかったくらい、平穏。
ただ、静かな時間だけが流れていく。
不意に赤子が目を覚ます。
オムツかと思ったが、ドアを指した。散歩の催促だったらしい。
2日前にも催促されたので、赤子の望むがまま、ガウラは赤子を抱いて外へと出た。
代り映えのしない、森の木々に囲われた場所。
それでも、この家の周囲10mくらいは解りやすく刈り取られている。
そこに魔物が出てくることは、今の今までなかった。
赤子が行けと指したので進んでみる。
だが、そこに何かがある感じはしない。
「ぐるるる~」
不意に妙な音がした。鳴き声とは違う音。
よくよく考えれ見れば、人間の腹の虫の音に似ている。
恐らく隠遁、又は幻術でずっとそこに隠れていたのだろう。
だが、腹が減って魔力も切れかかったお陰か。
ガウラの何倍もある、大きな魔獣がすぐ目前に座ってこちらを見下ろしていた。




