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とわのゆりかご  作者: 葉月雷音
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臍を嚙む 02

 ガウラが入れられたのは、奇しくも義妹も入ったところと同じ部屋だった。


 その独房に第一王子アークジアがやってくる。



 最初こそ、ガウラはあの時の恐怖からアークジア王子を避けていた。

 団員も気付いていたので合わせないようにしてくれていた。

 しばらくして、強制連行されるようになった。

 逃げ場など死しかない。

 だから仕方なく従い続けた。


 どんなに嫌でも向き合うしかない。

 ガウラは覚悟を決めた。


「君、僕のモノになったから」


 アークジア王子の冷たい態度から、これで騎士の生活も終わりか、と察したガウラは溜息をつく。



 大罪者マイカの禁術は、おそらく優秀な魔族にでも知られてしまったのか、各地でオークが増殖して魔物の大暴走(スタンピード)を引き起こしていた。

 そして国として責任を取るようにと、アークジア王子は転移魔法を使える者と一緒に討伐を買って出た。

 そこに、ガウラのことも連れて行った。

 その度に、アークジア王子は禁術の盾としてガウラを使っていた。


 ——何度も禁術を受けたというのに。

 禁術は、女から男には戻してくれなかった。


 もはや自棄になったガウラは、禁術の盾として自ら前に出るようになった。



 なお、アークジア王子は大罪者マイカ討伐の報告の際、奴隷騎士ガウラが先んじて禁術の盾になってくれたと言ったので、ガウラが第二騎士団の所属から変わることはなかった。

 しかし、王子直属の騎士団は風紀を守るため女人禁制だったので、今まで通りとはいかなかった。


 一緒に寝起きを共にしていた同室の奴隷騎士仲間から身体を触られるようになり、別室にされてからも、夜な夜な他の部屋の騎士がドアの前までやってくるようになった。

 食堂でも獲物として不快な視線を感じるようになったので、時間を後ろにズラして食べるようになった結果、肉にありつけなくなった。

 さらには、胸が邪魔して剣が持ち難くなり、月経が始まって激痛を伴って護衛中に貧血で倒れたり、そもそも自分の身体で興奮して冷静になってから気持ち悪く感じたり。


 何よりも傷付いたのはガウラ自身だったのだが、女性が不在で未婚の多い騎士達では察しようもなく、ガウラが誘ってくるせいだと、騎士達はガウラにフラれて傷付けられたと口を揃えた。


 だから判っていた、いずれ騎士として終わりが来ることは。



 アークジア王子は、第二騎士団の風紀が乱れていることに気付いていた。

 だが、奴隷騎士の所属の変更には、数多くの功績と軽い刑罰、その両方がないと難しかった。


 功績には少し足りないが、今回ばかりは時間も無かったので、第一騎士団長に決勝戦で負けてもらうよう指示を出した。

 もっとも、第一騎士団長は本気でやりあって負けた様子だったが。



 ガウラは、アークジア王子の“禁術の盾”になれ、または“実験動物(モルモット)になれ”と言われたのだと思った。

 アークジア王子もわざと勘違いするように発言したので、そんなガウラの表情からクツクツと笑い出す。


「なぁに、第二騎士団のほとぼりが冷めるまで、君は第一騎士団の所属になるだけだよ。それも、嫌いな僕の顔を見なくて済む、ある者の護衛についてもらう予定」


「……へ?」


「だから、僕のモノになる、と言ってるの。第一騎士団は僕のモノだからね。所属するのだから、当然、僕のモノになるでしょ?」


 未だに言葉を理解できていないガウラは、アークジア王子の言葉を脳内で反復した。


「ちなみに、所属しても団員とは別の場所に1人で派遣する予定だから、心地良かっただろう寮生活ではなくなるけどね。まぁ、第一騎士団は僕の指示でみーんな個別に動いてもらっているから、団長以外とは会う機会もほぼ無いよ。ただ、給料の支給額は微量に上がるけど、食事などの経費はしっかり引かせてもらうから、下がったように感じるかもね? それと――」


 ガウラは混乱していたが、アークジア王子は早口言葉のように説明を続けた。



 説明し終えた時、アークジア王子は満足そうに頷いたが、ガウラの混乱は未だに治っていなかった。


「まぁ、聡明な君のことだから、流されてやっていけば理解できると思うよ。それでも解らないことがあったら、君の様子を見に行った時にでも聞いてくれて構わないから。あ、第一騎士(ぼくの)団長や、後で紹介する僕の秘書でも構わないよ」

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