目をつむる 14
奴隷召喚士の少女マイカが生存する限り、無限にオークは湧いてくる。
それならば、別駆動の、少人数の討伐隊を発足させるしかない。
だが、オークキングが居る可能性がある以上、強者を向かわせないとならない。
それも、女性に変化させられないよう、強力な魔術が使える者も必要。
これらの条件に合うパーティなど、王族が最強故に平和なこの国に居るはずもない。
「ま、こうなるよねぇ」
第一王子アークジアはぼやきながらもオークキングを倒す。
しかし、オークキングは1体だけではない。アークジアの護衛を兼ねて付いてきた第一騎士団長とその副団長によって、今ももう1体が倒れようとしている。
しかし、まだ見えるだけで6体は立っている。
「オークキングの“上”って何さ? 聞いたこともないよー?」
そう言いつつも、その6体は何故か、目の前にいるアークジアではなく第一騎士団長の方を向いていたので、アークジアは6体の合間を縫って奥へと進む。
すると、そこにあったのは複数のオークのオスが出産している様だった。
「はい、ごめんねー」
通り過ぎる傍ら、そのオークを胎児諸共、恐らくオークには見えていないだろう風の刃で切り刻む。
「オスを女体にしてヤらせるとか、発想が怖すぎるよ、君!」
先程から誰かに話しかけるアークジアの目には、前を走る半透明な少女しか見えていなかった。
オークキングの前に突き出された少女は、ただただ、なされるがまま、促されるがまま、行動をした。
次第にそれが何を意味しているのかを知り、恐怖から――対象を自分ではなく他者に向けさせるため、召喚術の1つを思い出し、オークビショップに教えた。
しかし、そのオークキングは少女を気に入ったのか、少女を手放さなかった。
首輪を付けたのに、何度も逃げ出そうとした少女を、そのオークキングは体に貼り付けた。
まるで洋服のように。
アークジアが辿り着いた先には立派で大きなテントがあった。
その下では、いきり立った巨大なオークキングが侵入者に対して威嚇の雄叫びを上げている。
その巨大なオークキングの傍にも2体のオークビショップがおり、既にいつでも例の召喚術を放てる状態に入っていた。
「うん、ちょっと無理」
流石のアークジアでも急停止することにした。
後ろから必死に付いてきていた奴隷騎士は、やっと前を向けたのだろう。巨大なオークキングとオークビショップの存在に目を丸くしている。
「あの召喚術……ヤバイねぇ、昇華してある。普通なら、術者が死ねば切れるんだけど、アレ食らったら、一生女性のままになっちゃう。というわけで」
「……えっ」
アークジアは奴隷騎士を前にポンッと押し出した。
途端に両方のアークビショップから術が放たれる。
その間に、アークジアはアークビショップの1体に向かって走り出す。
あっという間に辿り着いた先のアークビショップは縦半分に切られた。
「はい、1体目」
アークジアは、そう言いながら短剣をもう1体のアークビショップに放っている。
それは惜しくも杖に命中したが、召喚術はキズのない綺麗な杖が無ければ、詠唱してもすぐには発動することが出来なくなる。
「さてと。これで準備は整ったけど?」
アークジアは振り返り、奴隷騎士を見つめた。奴隷騎士は胸を抑えて苦しそうにしている。
「あー、ダメそうだね」
「…………」
「僕、言ったよね? 約束を守れない子は嫌いだなぁ」
しかし、奴隷騎士は状態異常で答えられない!
「時間もないから、僕がヤっちゃうね」
アークジアの背後では巨大なオークキングが棍棒をアークジアに振りかざすところだった。
だが、アークジアの放った短剣がオークキングの洋服のように見えるモノに突き刺さる。
棍棒はほぼアークジアの頭上にあったが、オークキングの動きは完全に停止していた。
「魔力に即効性のある石化の短剣だよ。可愛く感じたのかな? 少女の魔力欲しさに融合したことが敗因なんて、オークらしい終わり方だよね!」




