目をつむる 12
魔物の大暴走により、閉門された南門のすぐ外側は大混乱、大波乱に陥っていた。
流石に門番だけでは対処しきれないほどの魔物の数だったので、オークの襲来はかなりの遠方からでも気付けて、かなり早い段階で対処に当たってはいた。
が、完全に押されていたので応援を呼ぶも、向こう側に上位種でもいるのか、軍隊のように動かれてしまっては、団結力で劣る衛兵では厳しかった。
その結果、南門のすぐ外側まで押されてしまった訳である。
「このままじゃぁ門も壊れるぞー!」
「もう矢がないだと?! 魔法は? 反射される、だとっ?!」
「オークメイジがいやがる! くっそ、ちょこまかとビッグオークに隠れやがって!!」
「待て、深追いするな!」
冒険者ギルドだけではなく、商業ギルドと清掃ギルドの戦闘できる者も、チームやパーティが揃ったところから襲撃には対処に当たってはいる。
だが、それでも厳しい戦況から長たちが声を掛け合って集うことになった。
「どうしてこうなるまでオークが増えたのか?」
最初に口火を切ったのは元冒険者ギルド支部長のガードハンド。
毒霧の森は、魔物が住めない域を除いても広めなので魔物が集いやすい。だから冒険者ギルドの週に1回の調査だけではなく、衛兵も毎日見回りを行っているので、オークが集落を作っていたり、繁殖して増えていたりしたら、すぐに上に報告する仕組みになっていた。
「み、南門から人族っぽい少女が出て行ったのは、5日前だ」
衛兵長は震えながらも答えた。
「い、5日間では、ここまで増えるはずがない」
「確かに、オークは繁殖力が強いと言っても1日に1匹しか、どんなに頑張っても生まれない。普通に考えれば、他の集落から連れ去った女性が居たんだろう」
フォローするように商業ギルド長でもあるエドワードは答えた。
「普通に考えれば、ね」
マリアはそう言いつつ、連れて来たシスターと、その老人を見た。
老人は衰弱しきってガタガタと震えてしまい、話しが聞けそうにもない。代わりにシスターが口を開く。
「今朝、いつも通りに出勤したこの方は、普段は先に出勤して開店の準備をしている息子さんの姿が見えないことに気付き、嫌な予感がして門の外に出たそうです。そして牧場で、経営者の家族諸共、オークに襲われている現場を目撃してしまったようです。そこには、息子さんの服を着た少女の姿もあったようです」
「お、ら、は、に、逃げる、しかっ!!」
「逃げてくれてよかった。今は少しでも情報を持って帰ってきてくれただけでも有難い」
エドワードは感謝の言葉を告げ、マリアは老人の前にそっと水を提供する。
「それでね、思い出しちゃったのよ。召喚術の1つに、男性を女性に変える方法があることを。あの子は王城勤めの奴隷召喚士だったから、知っていた可能性もあるのでは?」
「なるほど。そう考えると、オークキングが生まれているかもしれないな」
そして誰もが黙り込んだ。
オークキングは単体だと強くはない。が、オークの数が多いと、このような軍隊の動きをすることがあるという。そうなってしまったら災害級と言われている。
過去に、災害級の魔物の大暴走で他国が滅亡したこともあると耳にした。その時も種族はオークだったはず。
ガードハンドは溜息をつきつつ、
「ドラグ国王に報告してくる。それまで南門を壊されないでくれ」
そう言って重い腰を上げた。




