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「えっと、私に何の用でしょうか、美山くん」
窓から吹きつけてくる秋風が彼女の髪の毛を揺らし、彼女が右手で髪の毛を耳にかけた。白い頬や耳が露わになって、俺は目のやり場に困ってしまう。見てはいけないものではないはずなのに、あの深層の令嬢と呼ばれている羽鳥蘭の白い肌は艶かしく、同級生のそれとは全然違って見えた。
新とピロティで話してから3日が経過していた。ここ3日間、彼女に話しかけるタイミングをずっと窺っていた。彼女は常に一人でいることが多いのだが、話しかけてはいけない神聖なオーラのようなものを放っており、ただ声をかけるだけでこんなにも気力と体力を使うなんて思ってもみなかった。
放課後、誰も使っていない特別教室の鍵を借りて、彼女とそこで話をすることにした。鍵は、「テスト勉強をしたいので」と適当に嘘をついたら担任の早川が貸してくれたものだ。羽鳥蘭には断られるかと思ったが、声をかけると案外素直に応じてくれた。クラスメイトの誰も彼女に話しかけているところなんて見たことがなかったので、こうして二人きりになった今、俺の心臓は破裂しそうなほど激しく音を立てていた。