93.神よ!新しい異世界に平和を
前回のあらすじ:青年を年増が襲う様だという当時の評判、ヒデぇ。後円谷英二と渡辺明の確執はもう語られる事はないのだろうか?
なんてマイペースな前書きを続けてきましたが、今回最終回、大団円 (主人公除く)。明日は家族連れて実家に帰って教会に行くので前倒し投稿です。
大陸暦は1601年を迎えた。私がこの世界に来て100年が過ぎた。
マギカが「魔力が消え始めてるわ。御屋形様、さよならをゆう時がきたね」と呟いた。
100年、若く元気に、元気過ぎる位に過ごし、あちこちの冒険で時に大技をぶっ放し、時に頭脳をフル回転して人々を救った爆弾娘が、自らの末期を悟った。
「お城に帰るかい?それとも、君の故郷に帰るかい?」
「お城がいいわ。御屋形様に愛して頂けた、子供達と一緒に暮らしたお城。モネラちゃんやヤミーちゃん、プリンさん達がいるお城。姐さん達が子供と暮らしたお城…」
城に着くと、現国王、もとい国家代表は私達を二之丸御殿に招いた。
「懐かしいわね。みんながいるみたい。ステラさんも、オイーダさん達も」
魔力が衰えたマギカは、一月前の元気さも若さも失い、100歳の老婆のあるべき姿に帰りつつあった。
「醜くなっちゃった。御屋形様に愛して貰えないよ…」泣きながら彼女は言う。
皺だらけになったマギカを撫でて口づけして答えた。
「君はいつまでたっても君だよ。元気で楽しくて、大好きなマギカ。愛してる。一緒にいてくれてありがとうね」
帰って来たのは、泣き声だけだった。
ウェーステもアンビーもずっとマギカと一緒に過ごした。
「あんたぼけえもんじゃ。あんだけの子らを立派に育て上げたんじゃあ。流石御屋形様の妻の一人じゃなあ!」
「マギカさんはこのお城だけではありません、大陸大学を通じて、もっと多くの若い人達を世の中に送り出した偉大な方ですものね?」
マギカ帰国の話を聞きつけて、城にはダキンドン王都から、各地の孤児院から、帝都の大陸大学から、ドワーフの里から、フロンタから、あの白蛇病院からも見舞客が来た。
かつてダキンドンの王宮魔導士仲間であったイージワー伯爵家のルイス夫人、その孫も見舞ってくれた。
城の子供達の中で魔力を多く持つ者が集まり、魔石を多く捧げ、マギカを救おうとしたが彼女は断った。
「ありがとう、でもそんな事は駄目。私は、とっても幸せに生きたのよ。その魔力はもっとみんなの為に使ってね」と、感謝を述べて優しく断った。
四人で身を寄せ合って眠るある日、彼女は起きることなく安らかな眠りに入った。
可愛くて、面白くて、何を仕出かすか分かったもんじゃない、私の大好きな眼鏡っ子マギカ。
ついに天の門の向こうに行ってしまった。
葬儀は南之院で行われ、大陸大学での功績を讃えられ、現教皇が葬儀を取り仕切る事となった。
テンポラの弟子達が奏でる音楽は美しく洗練されていた。科学の教師として学校にも行き来していたマギカにとっても、懐かしい演奏だろうな。
そしてマギカは境内北の墓地に葬られた。衛生上火葬が望ましいとの彼女らしい申し出で、火葬され遺骨が埋葬された。
反対する弟子達もいたが、「故人の強い主張です。あまり反対すると彼女の事だから点から何か降って来るかも知れませんよ」と説明したら、皆苦笑交じりに同意してくれた。そして、遺体が焼かれる時に、皆泣き崩れた。
涙を堪えながら泣く人、人目をはばからず泣く人。皆、彼女を失った悲しみに耐えている。
葬儀はそのまま大陸外交の場となり、私達に食いついてくる貴族達も居た。
しかし、各国首脳、かつて共に戦った仲間たちの子孫がそれらを諌めた。
「彼らはあの戦いと、貴方達の祖父達との熱い友情を知らない。あまり責めないでやって欲しい。それより、あの時の想いを伝えて欲しい。利害を超えてこの大陸を守った、激動の大陸史ノキブル決戦を」
各国元首たちは感激し、跪礼を捧げてくれた。
私達は強く請われ、しばらく城に留まり、激動の大陸史ノキブル決戦もといイテキバン戦争の実態についてテキストを纏め、講義した。
何と僅か100年足らずの間に、各国で都合よく史実が曲解されていた。どの国も、自国が大陸同盟を主導し、イテキバンを殲滅したと書き綴っていた。
ダメダコリャ。
私は史実だけを伝え、各国の果たした功績を纏め、護児国で講義した。それをどう外交に反映させるかは当代の責任者に丸投げした。歴史に嘘は禁物だ。
葬儀で会った元首たちは夫々優秀だった。きっと、政治的にヒン曲げられた風説を正してくれるだろう。
そして、私とアンビー、ウェーステは旅に出た。久々の教壇にウェーステは去り難かった様だが、「あまり年寄がいても若い人が育つのを邪魔するだけですからね」と同行してくれた。
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大陸西部諸国は100年の間に相当の進化を遂げていた。
各地に鉄道が巡り、馬の要らない魔導機車が走り、道も整備され魔導通信も拡充した。
印刷業も各地に広まり、平民への教育も充実し、識字率は若年層を中心に過半数に達した。
交通の発達と生活の安定は、「レジャー」という新しい贅沢を生み出した。
各国首都の近郊に聳える謎の城に、都民が尋ね、見物し、温泉に浸り、食事するという娯楽が出来、これに首都のみならず周辺都市の貴族も憧れて訪問し、更に商人達も、有力市民達も、そして多少の財産で安価な鉄道で移動できる様になった農民達までが…
って、そうです。全部私の所為です。
いやいや、ちゃんと蓄えて、遊びに出られる様になった農民の皆さんのがんばりのお蔭です。
城の廻りには観光客目当ての店が出来、故郷の日本風の家や店が立ち並び、中世ヨーロッパ風の首都周辺になんだか和風の街が出来てしまった。しかも首都の駅から城まで街道筋みたいに。
首都周辺の大使館の城だけではなく、イテキバン戦争で各国が築城した裾野城、一関城、サミット城等にも鉄道の便と温泉設備もあって観光客が行き交っていた。
中には騎士団が戦跡に敬意を表し、訓練を兼ねて訪問する事もあり、彼ら目当てに一稼ぎと近くの村から宿屋や酒場を営む者も多く出来ているそうだ。
まるで故郷の日本、戦後レジャーブームだ。
「どーすんじゃこれ」とニヤニヤとアンビーが私に向かって言う。
「いい事です。ニッポンバンザーイ!ペナントと絵葉書を普及させようねー!」
「投げよったがあ」こんなやりとりをウェーステがほほ笑んで聞いている。
「大陸も狭くなったのう」
「わたくしも、随分と色々な所に連れて行って頂けました。小さい頃には信じられない様な事ですわ」ずっと屋敷に閉じ込められていたウェーステ。今ではツアーコンダクターも出来そうだ。
「じゃあ、もっと遠く行くか!東へ!」ニンニキニキニキ。そりゃ西か。
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時には海を渡り、砂漠を越え、世界中を旅したある日。
気が付けば、1600年代も終りに近づいていた。
「どうやらわたくしも、ステラさんやマギカさん達の元へ行く時が来た様ですね…」
空にオーロラが輝く景色の中、ウェーステが魔力の衰えを訴えた。
再度城へ戻った。
城は変わることなく、白亜の天守が金の鯱を頂いて輝いていた。その周囲を二層、三層の櫓が囲み、白壁と石垣が取り囲んでいた。
外周を守る惣構えもそのままで、時折襲う魔獣の群れが傷つける事を許していない様だ。
私達の帰還を城の住民たちが迎える。もう知っている顔はいなかった。
ウェーステは学校の敷地内にある宿舎での生活を希望した。
元王妃とは思えない質素な居室だ。彼女と私達はそこで大好きな子供達の元気な声を聞いて日々を過ごした。元気に走り回る子供達を見て、それは幸せそうだった。
そして。
「みんな、元気。うれし…大きくなって…一杯…楽しんで…」
彼女の教え子たちの子孫である、今の教師たちがウェーステを囲んでいた。皆がウェーステの伝説を聞いて憧れて教壇に立ったのだ。
私とアンビーが彼女の傍にいる。
「オヤカタ…サ、マ。アン、ビー、サマ、アリガト…」
ウェーステも、旅立った。
力を失った彼女の手を優しく擦ってアンビーが呟いた。
「あたし一人になってしもたなあ」
知己が少なくなったウェーステの葬儀に、当代の元首が来る事はなかった。大陸同盟と定期会議は続いており、それに出席していたためと聞き、同盟が健在な事に安心した。
私とアンビー、現護児国の首脳達、そして彼女の曾孫弟子達で慎ましく葬儀は終わった。
既に二之丸学校にはウェーステの像が建っていると聞き、少し我が妻を誇らしく感じた。
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出会った時と変わらぬ、少女の様な愛嬌と、豊かで柔らかな体の愛しいアンビーも、ついにウィスキーを飲めなくなったと話した。
「酒が飲めなくなったら、ドワーフは終りじゃ」
寂しそうに、申し訳なさそうに、アンビーは涙交じりの笑顔で言った。
既に1700年を過ぎていた。
南大陸のアブシン王国から魔動船でポルタに向かい、アンビーの『故郷』、護児城に鉄道で向かう。
ポルタ駅に到着した鉄道に乗ると、何か考え込んだ様だ。
鉄道が北へ走る。アンビーの様子が悪くなっていく。そんなに死期が近いのか?
夕刻発の列車だったので寝台車だ。
「やっぱり列車の中で寝泊まりできるんは、楽しいもんじゃなあ。
これで、酒が飲めりゃあなあ…」
「ってアンビー、何年分寝台車で宴会したとおもっとんじゃあ」
「それもそうじゃな。何せあたしらが作った、走るホテルじゃけんのお…」
ちょっと微笑んだ。
「もう200年近い昔の事なんじゃがの…」おや?また不機嫌になった。
なにせ相変わらずのシン・スーパートレイン(軽便鉄道)なのでダブルベッドは無理だ。二段ベッドで横が通路というスペースで、私達は眠りに就いた。
翌朝、列車は二之丸駅へ着いた。アブシン王国が気を利かせて先触れしてくれたのか、駅には当代の国家元首、もとい総理大臣始め首脳陣が歓迎してくれた。
が。
「この列車を作ったのは誰じゃああー!」
怒号全開でアンビーが下車した!!海〇雄〇かな?!
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歓迎式典も吹き飛ばす勢いで現総理にアンビーの怒号が飛んだ。
「あたしらが鉄道敷いてから何年経っとんと思とんがあ!
未だに軽便かあ?こんだけ人の行き来がありゃあ、倍の広さの線路敷いて、もっと速ぇ魔動機車が出来とってもえかろうがあ!」
「いえ、各国とも魔導士様とアンビー様が作られた物に手を加えるのは良くないだろうと」
「戯けぇ!常に新しい物に挑むのがあたしらドワーフじゃあ!ヒトも同じじゃろ!
そん心構えが無うなったら、あんたらあの疫病と戦争で生き残ったと思とんかあ!
頭入れ替ええ!今の工場の阿保たれ全部呼べえ!」
「いえ御殿で歓迎の」「そんなんしとる場合かあ!!」
アンビーさま、元気になってよかったですわ。ウェーステがそう言った様な気がした。
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城での歓迎会は急遽工房での反省会に大変身した。
「ええかあんたら!何で鉄道が線路の何倍も広いんかその空っぽの頭で考えんかい!」
そこからシン・スーパートレイン(軽便鉄道)のハイパー・スーパートレイン(狭軌化)計画が始まった。
現在鉄道はパンク状態で、運賃のつり上げで魔導馬車に客を割り振っている状態だそうだ。アンビーはポルタ駅の運賃と混雑具合、貨物列車の量から疑問を持っていた様だ。
流石我が可愛い妻は優秀だ。
鉄鉱石の産出量も、各国が負担可能な予算も、今の線路を敷き直すのには充分だ。運行を続けながら狭軌・複線化も問題ない。
それなのに鉄道の改善を怠ったのが余程アンビーの腹に据えかねた様だ。
アンビーと私の指導で主要幹線の狭軌化計画が短期で纏まった。
試験的に見附城地下~護児城~鉱山、鉱山前分岐~ドワーフの里のY字路線が狭軌化される事になった。
同時に狭軌に合う出力とギアを備えた魔動機車の設計が行われた。
「なんじゃこりゃボケぇ!お主ら何年ドワーフやっとんじゃあ!」「これじゃあ金属疲労で軸が折れてしまうがあ!負荷分散考えんかい!」「ほう、こんなやり方が今の主流かあ」「ええ鋼鉄じゃな!こりゃ昔よりよう進んどるで!」
何日も工房に籠って、若いドワーフ、と言っても100歳は超えているが、そして城の技師達の尻を蹴る様にどやし立てて、また最新技術に感心して、鉄道刷新計画を固めていった。
そして。
「これなら行けんで!先ずは試作じゃあ!久々に蔵出しの酒を飲みとうなったで!」
アンビーが、私が、ドワーフ達が、城の若い技師たちが、今尚醸され熟されるウイスキー、その名もマダム・アンビーで。
「御屋形様!音頭頼むで!」
「いや、ここは愛しのマダム・アンビー様が」
「「「おおー!」」」ドワーフ達に技師達が同意した。
「照れるのう、ほな、大陸鉄道刷新に向けて、乾杯!」「「「乾杯!!!」」」
今や普通に流通するガラスのウィスキーグラスが心地よい音を奏でた。
「プハー!旨い!こんな旨い酒久々じゃあ!」
満面の笑顔で、200年前と変わる事の無い、少女の様な愛らしい笑顔で、彼女は笑った。
三之丸の工房から、天守を眺めて、一同は飲んだ。
「やっぱなあ、楽しいもんで。みんなで、御屋形様の、とんでもねえ考えを作り上げるんは」
「今回の計画を形にしたのはアンビーじゃがあ」私もドワーフ弁だ。
「いや、鉄道の軌条を広げて、複線化する場所を広う取ったんは御屋形様じゃがあ!」
まあ、当たり前だよな、なんて二人で笑った。周りはバツが悪そうにしていたが。
「軌条が広うなったらの、早さも上がるし載せる客も増える、荷物も増える!複線になりゃあ事故の心配も無うなんでえ!
この世はもっと豊かになって、皆の暮らしももっと楽になるんじゃあ!それを作り出すのはお主らじゃあ!」
「「「おおー!!」」」
私達は、夜通し飲んだ。
「久々じゃあ、楽しいもんじゃあ…」
そしてその夜、アンビーは私の腕の中で、息を引き取った。笑顔で、眠る様に。
蝋燭の灯が最後に激しく燃え、消える様に。
「アンビー。楽しかったなあ。色々作ったなあ。大好きだ。愛してる。寂しいよ」
愛しい彼女の亡骸を抱きしめて、泣いた。
工房の火は消える事は無かった。高炉の火も、一同の心にアンビーが灯した火も、一層に燃え盛った。
アンビーは、ドワーフの伝統の通り火葬され、南之院に弔われた。彼女の死はドワーフの里にも伝えられたため、彼女の弟子やその孫弟子が大勢押しかけた。
ウェーステ同様、各国元首の参列は無かった。
しかし。
大陸中からドワーフ達が酒樽を抱えて押し寄せた。更にマダム・アンビーを愛する多くの美食愛好家達も葬儀に詰めかけた。
そして、護児城の酒を扱う商会、その筆頭はマテオ商会の子孫だ、彼を筆頭に多くの酒がささげられた。差し詰め葬儀は大陸の酒の品評会の様になった。
加えて、大陸大学から工学、技術系の重鎮まで押し寄せた。
ドワーフ達の悲しみと、最後に彼女が残した鉄道刷新計画への興奮は凄まじく、弔いなのか宴会なのか解らない騒ぎとなった。
「これがドワーフ流だよな」と呟いた。しかし、もう応えてくれる人はいない。集まった酒を飲んでくれるアンビーも、いない。
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彼女が残した鉄道刷新計画は護児国の特別予算が割り振られ、大陸各国に協力要請が出された。並行して試験鉄道が護児国領内で建設された。新型の魔導機関車も完成した。
各国大使を招いての試運転は好評で、各国の協力を得て計画は開始された。
この計画は問題なく進む。間違いない。
「以上が、私がこの地に辿り着いてからの全ての出来事だ。かなり恥ずかしい部分もあるが、包み隠さず言えばこの通りだ。記録として秘匿するなり、各国と情報共有するなり、君達の判断で活用して欲しい。まあ使いようもない話だけどな」
護児城の記録係に請われ、先の講義とは別に、この城の成り立ち、他国の王、皇帝達との関わり、色々と作った物見た事知った事を伝え、記録して貰った。
この世界での私の使命は、終わった。
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「お世話になったね。皆、お互いを大事にして、幸せに暮らして欲しい」
私は一人で旅立つことにした。男は一人で行くものさ。
「この城に御恩がある方を一人で行かせる事など…」私を引き留めるのは、すっかり民主制に移行した現首相の夫人。首相が若い頃シャトー・ダキンドンで見染めた美しい教師だった。
その美貌は、ステラそっくりだ。王都で皆の為に尽くしたステラの子孫なのだろう。
「もうこの城は、君達のものだ。最後にちょっとお節介させてもらったが、これが最後だ」
「初代国王様、もう少しこの地に留まり、私達に教えを聞かせて下さい!」首相が言う。
「頼るな。自分で考え。前に進むんだ。これから世の中は豊かになるが、富は強者に集中する。弱者は貧しく、結局私がここに来た200年前と同じ様な苦しみがやって来る。いや、色々な技術が進歩している分、世の中が崩れれば、犠牲は過去の比ではなくなる。
戦ってくれ。どうしたら皆が幸せになれるか、考え続けて、戦い続けてくれ」
私は、この手で築いた城を、この手で上げた天守を、寺院を背に、銘酒子守歌を飲みながら東へ向かった。
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誰もいない無人の荒野。野営しつつ寝入る中。空間が歪むのが解る。
私は御殿に居た。
小さいたくましいダンが、食いしん坊で料理上手のヤミーが、美しく育ったミッシが、私に甘えて来る。
モネラが微生物の絵を描いて見せてくれる。美しい歌声でムジカが愛の歌を歌う。コマッツェが真っ赤になりながら歌うムジカを女神の様に描いている。テンポラも歌い、ミムラタもみんなを描く。
アグリとロリーが子供達と戯れ、美しく着飾ったオーリーが男たちを従えて高笑いしている。
周りを見渡すと、覚悟亭で多くの男女が城の制服を着て小さい赤ちゃんをあやしている。亭主と女将と子供達が三代揃って料理と酒と笑顔を運んでいる。
私の隣にはレンドリー氏とリベラ卿が談笑し、オーティーがロボシとイチャイチャしている。外から義両親とキオミー夫婦もエンタ夫婦もやって来た。
そして見下ろすと賑わう城下町。天守からの眺めは楽し気だ。
「みんな幸せそうじゃなあ。全部あんたのお蔭じゃよ」とアンビー。
「御屋形様とお会いできなければ、見る事のなかった景色ですわ」とウェーステ。
「サイコー、大好きちゅっちゅ~」「まてコラ」といいつつ口づけをマギカと交わす。
「仲良し様ですねえ?御屋形様はみんなと仲良し様ですけどね」とモエ。
「貴方の愛を授かった事、いつまでも感謝申し上げる」とクッコ。
「くっ!硬い」「くっ!男っぽい!」「「あははー!!」」「くうぅっ!殺せ!」
クッコをからかって笑うイナムとジーミャが私に抱き着く。
ドレスも抱き着いて「夢みたいな人生だった!」と口づけする。
「こんなあたしにも、子供がいっぱいだよ!御屋形様のお蔭だよ!」
周りは、大きく育った子達、そして笑顔のオイーダ。
「子供だったら負けないのよぉ?あっちの数でも、ねぇん?」子供と孫達と幸せそうなプリン、ニップ、ロンゲ、メカク、チャビー。ムッチー達後から城に来たミナトナも私に抱き着いて「ありがとねぇ、御屋形様ぁ」と囁いてくれる。
「親父!モテモテだな!」筋骨隆々のダンと、「おいしーごちそう、ありがとー」と愛らしさと女らしさを兼ね備えたヤミーが子供達を抱いている。
「ごめんなさい。あなたを裏切ってごめんなさい」
聞きたかった声が、聴きたくなかった言葉を囁いた。
「ごめんなさい。私がこんなに子供達に囲まれて…」夫のネートルと、子や孫達も後ろで頭を下げている。
「お別れの時言っただろう?私は君を幸せにするって。子供達といて、幸せだったかい?
「ごめんなさい…ううっ!ごめんなさい!!」
「許すよ。この幸せそうな子供達が、君の許しになるんだ。私は君も、君の家族も幸せになって欲しい。お疲れ様」
「ありがとう…ごめんなさい!」
泣き崩れるステラの肩を、アンビーが叩いた。
「ほれ!御屋形様もこう言っとんじゃ!メソメソしなんな!」
「あなたも、聖女なのですよ?私のお友達ですね?」オーティーがステラを起こす。
そしてもう一人、いや十数人。私達を見上げて、闇の中にいる娘達。
何も言わずにサスラーと近衛の少女達が私達に跪いて見上げている。
「もういいんだよ。君達が命と体を捨てて子供達を守ったんだ。
例え創世教の神が許さなくても!この魔導士タイムが許します!」
妻達が、城の子供達が笑顔で頷いた。
サスラー達は泣いていた。そんなサスラー達を、彼女の子供達が、彼女が保護した孤児達が、あの白蛇病院の院長さんとその家族達が迎えてくれた。
皆が祝福されて進んでいく。
その先には、地球で生きていた時の妻と娘が。前の世界で愛し合った妻達、守った子供達が。命の短さに抗いきれず若くして亡くなった子供達がいた。
会いたかった!待ってくれ、私も今行く!私はここにいるんだ!
しかし私は動けない、皆と逆の方に引かれて行く。皆は次々と笑顔で前に向かって進んでいく。
「またか!何でだよ!待って、待ってくれ。何で前に進めないんだ?誰なんだよ!」
アンビーが、ウェーステが、愛しい妻達が、大事な子供達が幸せな世界に向かって歩いていく。
「待ってくれー!私をいて行かないでくれー!待って、待ってくれー!
また一人になるのかよ!何でだよー!
一生懸命がんばったのに何で俺だけ一人なんだよー!」
ステラが「御屋形様…御屋形様…」と笑顔で呼んでいる。
「置いてかないで!待って!置いてかないでくれー!!ステラー!アンビー!
うがぁあああ~~!!!何でだよ!何でなんだよお~!!畜生~~!!
俺が愛した人なんだー!一緒にいさせてくれよおお~!!
この野郎!次の世界で俺が世界を亡ぼしてもいいって言うのかよ!
俺を向こうに連れてってくれ!さもなきゃ次の世界は皆殺しにしてやる!
次の世界の神を呪って死の世界にしてやるー!!
それが嫌なら俺を向こうに連れて行けー!!
待ってくれー!ステラー!アンビー!俺を一人にしないで!置いてかないで!待って!
畜生!畜生!畜生~~~!!!!」
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朝が来た。
天に上った月が、12あった。
「今度は第〇惑星かよ…」
また、この異世界で頑張らなければいけない様だ。
まあ、好きにやるさ。楽しませてもらうさ。
アンビー。ウェーステ。マギカ。クッコ。モエ。オイーダ。ドレス。イナム。ジーミャ。プリン。ニップ。メカク。ロンゲ。チャビー。
そしてステラ。
見ていてくれ。どこに居ても、二度と会えなくても私は君達が愛してくれた夫なんだ。
とりあえず、住まいを造らねば。あの小高い丘を切り拓くか。
…また泣き声が聞こえる。助けに行こう。
私の戦いは、またまた始まったばかりだ!
「異世界に天守を上げよう」終
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護児城に捧げた200年。護児城を子供達の手に渡し、一人旅立つ魔導士タイムよどこへ行く。
さあ、来×から「イセカイマン」がはじまるよ!みんなで応援しよう!(瑳〇哲朗)
本話を持ちましてこの物語は幕を閉じます。最後までお読み頂きまして、深く感謝申し上げます。
しかし世間はメリークリスマス&ハッピーニューイヤー。子供の頃にはテレビで宇〇からのメッセージとかガ〇ラシリーズとかガ〇マー第三号宇宙大作戦とか胸躍る特撮映画が冬休みプレゼントとか称してTVで放送してましたよね?
よって私めも冬休みチャンピオン祭りと称して、新作の推敲できてねぇパイロット版をピ〇プロみたく公開します。公開は活動報告でお知らせしますが聖誕の夜に…出来たらいいなあ。
今後ともお付き合いの程宜しくお願いします。




