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77.護児国の追放か 大陸同盟崩壊か?!

前回のあらすじ:続きますよ長〇秀佳シリーズ。

 大捷、敵撃砕の報は大陸を駆け回った。

 サミット城の統合防衛軍司令部はボーコックに偵察軍を派遣したが敵残党も生存者も発見できず、動いているのは動物だけになった事を確認した。


 フロンタと帝国の海軍は更に東の港を調査したが、各地を制圧していたイテキバンの代官は撤収して帰国した事を確認した。


 既に、グランディア大陸西部に、イテキバンの影は無かった。

 各地からの報告を受け、統合防衛軍首脳は戦争の終結を確認した。


******


 この報せは各国に届くや否や、歓喜と興奮を以て迎えられた。

 激戦を繰り広げた部隊は予備部隊と交代し、順次母国へ引き上げた。

 停車する駅では民衆の歓迎を受け、中には負傷した兵に結婚を申し出る娘までいた。国から兵へ下賜される恩賞や年金を狙ったのかも知れないが、傍目には美談に映った。


 帰国した軍は、王都や帝都で群衆の歓喜に包まれ、軍楽隊が勇壮な行進曲を演奏し、彼らを王宮へ導いた。そこで国王、皇帝、女王の祝福を受け、恩賞を授けられた。

 各国の首都は歓喜に溢れ、市民は酒場に溢れ…ここでも城の酒は飛ぶ様に売れた。毎度あり。

 激しい戦いだったにも関わらず、大部分の兵達は歓喜の渦の中、漸く愛する家族へ、恋しい故郷へ帰る事が出来た。僅かに、帰るべき人の来なかった家を除いて。


 戦争に尽力したドワーフの匠達も各国元首に招かれ、祝福と恩賞を受け、一時帰国の車代が下賜され、ドワーフの里で国王ハンマーの祝福を受けた。

 途中我が城に下車して、行きも帰りも城の酒を飲みつくさんばかりだったのだけは解せぬ。

「飲みすぎんなー!帰れー!」アンビーが激怒してドワーフの匠達を追い払おうとしたが無理だった。泣きながら帰って来たアンビーのため、私は反則技で酒を増やして一緒に飲んだ。

「御屋形様おったらウィスキー風呂とかできるなあ!今度せんかの?」早速ゴキゲンになったアンビーが飲みながら無茶を言う。

「やめて急性アル中で死ぬ」「死なんじゃろ!ドワーフ舐めんな!」

「私が死ぬー!」「それこそ死なんじゃろ!はっはっは!」

 故郷は新潟、越後湯沢駅の日本酒アミューズメントショップを思い出した。

 新酒シーズンに不出来の酒で酒風呂やってみようかなあ。新名物になったりして。

「ワイン風呂なら美容にいいかも知れません。その様な贅沢を行う貴族もおりました」ウェーステが妄想に花を添えてくれた。


「アンビーも頑張ったんだし、国に帰らなくていいのか?」

「アタシの国はここじゃけぇ。子供達を迎えたらんとなぁ」すっかり機嫌が直ったアンビーが、子供達を運ぶ鉄道の帰りを待つ様に、南方を見つめた。

「本当。みんな誰も怪我してなければいいんだけど」ステラも南方を見つめる。


 数日後、解体し護児国への引揚げを待つ超弩弓が他国に持ち去られない様見張り続けた城の防衛部が、列車に乗って帰って来た。その威力を知った各国は、あえてこれを襲って横取りしようなどという、無謀な賭けなどしなかった。

 無事帰着した鉄道から若者達が下車した。皆、精悍な顔つきになっていた。しかし、愛する妻や子供の顔を見るや、元の素直な少年の顔に戻った。

 ダンも、憑き物が落ちた様に、元気に帰って来た。


 私と妻達は、正装で三之丸駅まで迎えた。ステラはたまらずに飛び出し、ダンに抱き着いた。後ろでは妻である筈のヤミーがニコニコしていた。大人だなあヤミー。

 下車して整列する青年たちに向かった。

「みんな、よく、戻って来た。全員無事なのが、何よりも一番うれしい。一人も欠ける事無く帰って来てくれた。本当によくやった!」

 特急を降り、城内をパレードするため、無蓋で花に飾られ「祝凱旋」と書かれた花電車に乗り換え、皆の歓迎を受けた。

 そして、本丸御殿で派遣隊の解散宣言、恩賞の授与、そして宴会を行った。宴会は簡単に終え、一同は家族の待つ家へ帰り、陽が落ちる頃には三之丸商店街に繰り出した。

 私達家族も子守り番を残して街へ繰り出し、予約してあった覚悟亭の、店外に並べられた椅子席で街の皆と飲んだ。

 三之丸商店街も色とりどりの灯りに照らされ、お祭りムード満載であった。


 少年達は戦の手柄を誇らしげに語った。

「畜生!俺も志願すればよかったぜ!」誰かが笑いながら言った。

 しかし、得意気に語った青年は、言葉を止めた。

「行かない方がいいよ…出征も戦争も。戦いなんて無いのが一番なんだよ…」

 相方は、深刻そうな彼の表情に、二の句が継げなかった。

「ステラ、マギカ。やはり予定通り明日から皆の家を回って診察を始めよう」

 二人は頷いた。出征組がPTSDを発症していないか。

 戦争の恐怖は、人が人を殺す異常な世界は、人間の心を壊す。戦後になって自殺したり殺人を犯す人もいる。

 故郷の沖縄では有名だったコミックソングがある。沖縄戦のPTSDで子供の首を切り落として自殺した妻を見て、酒に溺れたおじさんを慰める歌だった。実は悲惨な歌だった。

 あの時のダンも、もし本当に戦っていたら、心が壊れていたかもしれない。


 万が一にもそういう事が無い様、出征組の家族にはケアや病院への連絡等を指示してある。

 この夜は、飲んで騒いで、帰って来た事を実感して貰おう。友人と家族と笑って、戦いの前の気持ちに戻る事が大事だ。


 帰還者の心のケアについて同盟各国にも通達したが、総じて関心は薄かった。勝利者の心を弱い物と決めつける通達に抗議する者もいたそうだ。

 優しいオーティーだけは熱心に聞いてくれた。彼女の優しさが戦争に苦しめられる兵達を助けてくれることを祈る。

 私達も、ここですべき事をしよう。


******


 大陸暦1512年7の月(9月)2日。実りの季節を前にして。


 各国元首とその伴侶、そして首脳陣がサミット城に集結した。この戦争に多大な武器や線路、車両を製造したドワーフ王夫妻も招かれた。

 無論、この戦勝式典もどこでやるか散々揉めたけど、「防衛本部がいいんじゃね?」との皇帝の一言で決着した。やっぱり出来る男は違う。


 現地周辺の街や村の群衆が、各国元首たちを熱狂的に歓迎した。

 護児城の歓喜が大陸南東の地で再現される事となった。

 各国元首が到着する度に、鉄道駅前に住民が殺到し、歓迎の声が上がる。

 やはり城とは違って外の世界では王や皇帝というものへの味方が違うもんだなあ。何せウチは王国だけど次代からは民主制に移行する予定だし。

 瞬間的に観衆に交じってパレードを見学した私は列車に戻った。


 私とステラやアンビー、10人の妻を載せた列車が到着すると…迎える群衆はいなかった。少なからずいた市民達は、歓迎するというより物珍しい者を見ようと好奇の目を投げかけていた。

 軍楽隊による歓迎も無い模様。念のため城の楽団を先行させようかという案も出たけど、他人の国でそんな事するのも無粋なんで止めた。


「おお!あれがエルフか」

「ドワーフって、あんなカワイイんか?」

「お!歩いてくるぞ歩いて」

 私達はX〇人か?癌の特効薬なんて持ってないぞ?


 城への送迎もないし、とっとと要件を済ませて帰るか。

「呼びつけておいて迎えも無いとは、大した持て成しじゃな」

「やっぱり平民の王妃だと、こんなもんかしらね」

「まあいいさ、早く用事を済まそう。親からもらった二本の足で、城まで行くか」

 と、観光客気分でまばらな群衆に会釈しつつ進んだ。


 見慣れた日本風の城門前で「止まれ!」と騎士に制止された。

「護児国国王、タイムと妻10名。統合防衛軍の招待により来たけど、帰った方がいいかな?戦い終わったし」

「護児、国…国王?王妃ィ?!!こっこれは…暫しお待ち下さい!!伝令ー!!」

「お?こりゃあもしかして何かの手違いじゃろか?面白そうじゃの」

「ああ。誰かの首が飛ぶな」

「もう人が死ぬのはゴメンだよ!御屋形様、帰ろう!」

「私達が帰ったらそれこそ数人の首じゃすまないよ」


 城門が開き、帝国の騎士が左右に列を成し、奥から何か私を呼ぶ叫び声が聞こえた。全員猛ダッシュで来たのか汗だくで息が上がっている。

 そして騎馬でキオミーとオーティーが駆け付けた。

「たったった…」チ〇ッカーズかな?

「タイム殿!済まない!こんな無礼があろうとは!我が帝国の許されぬ失態だ!」

 馬から降りた皇帝が跪いた。左右の騎士達も平伏した。

「何がどーなっとんじゃかよーわからんのお、はっはっは」

「アンビー、楽しみすぎ」

「我が国の儀典長は処刑する。その領地は貴国の飛び地として割譲する!それで何卒ご容赦を!」

 キオミーの顔面が真っ青だ。何かあったのか?

「何かもヘチマも無い!あんな圧倒的な戦いを見せられて、貴国を恐れぬ者があればそれは敵か間諜か手の付けられない愚か者だよ。

 本っ当に申し訳ない!何卒!何卒許してくれ!」

 オーティーもその横で跪いていた。いやオーティ関係ないでしょ?

「わかったわかった。ただ祝典は辞退させて頂く…」

「許してないじゃん!」キオミー、すげぇ顔!イケメンがしていい顔じゃないよ!


「やはり私達みたいな平民の集まりが理解されたり受け入れてもらえるのは難しいって事が解った。

 国王も王妃も返上、魔の森の、只の魔導士とその妻、気が向いたら現れるってだけでいいだろう?」

「いい訳ないだろ!タイム達はこの世界の、命の恩人だぞ!お前らいなかったら俺も息子もとっくに死んでたかも知れないんだぞ!

 お前達を侮辱する奴等がいたら、全力でブッ殺す!

 それが友人、いや恩人に対する俺の使命だー!!」皇帝陛下、言葉遣いが!


「何を仰せられます陛下!」あ、コイツが犯人か。奥から輿に乗った偉そうな貴族が向かってくる。輿から降りると従者たちが平伏する。

「かような平民にその気高い頭を下げられますな!こ奴はあくまで平みミミンチョ!!」

 キオミーパンチが炸裂した!何か偉そうな貴族が2mは吹っ飛んだ。

「帝国公爵、皇室儀典長ワフラージ!

 9月1日。護児国王タイムという恩人を侮辱したのは貴様か?!」

「違います!私は平民上がりの国王を詐称する者を排除しようと」

「ぎっざっま”っだっな”あ”~!」宮〇洋だこれ。「コウテイアダーッグ!」

 一閃、皇帝御自らドロップキックが決まった。男女平等、じゃない四民平等ドロップキックだー!流石に空中一回転は無理か。


******


 ひらすら茫然とするサミット城大手桝形。

 もう何だ、玉音放送ん時の宮城西の丸大手前より悲惨だ。何か皆様スンマセン。


「護児国王!私は誓う。こんな、過去しか見ていない愚かな奴は、帝国から抹殺する!

 これから未来、何をすべきか、誰にどんな力があるか、それを見極められる者を重用する事を私は誓う!

 どうか!どうか我等と共にあってくれ!」

「あーわかったけど早く帰りたいよ~」「待ってくれー!」

 結局しがみ付かれて城内に連行された。

 城内には温泉が無かったから2km程掘って古代海水組み揚げて即席温泉作って妻達と入った。ああ。みんな綺麗だなあ~。

「止めてくれー!大捷の殊勲がこんな所で大工仕事しないでくれー!」温泉小屋を組み上げる私にしがみついてキオミーがまだ叫んでる。

「あー。君らもあとからのんびりしてね」「出来るかー!」


******


「初っ端から疲れたわよ!」ステラが何故か私に突っ込んだ。

「御屋形様のお志に、この世界が辿り着くのは、遥か未来の話なのでしょうか?」湯に浸かりながらもウェーステは物憂げに溜息を吐く。美しいなあ。

「でもあの皇帝陛下、なんか素敵じゃなかった?凄く必死で、誠実ーって感じで」

「誠に御屋形様に縁を切られたくない感じが必死であり、心に突き刺さるものがあったぞ」

「男と男の何とか?」「「キャー!」」なんだ?モエ、イーナム、ジーミャ、君達そういう腐の方面なの?

「御屋形様は男にもモテるんだねえ~」そのジトーっとした目やめてオイーダ!

「意外に楽しい歓迎だったよね~」ドレスー!

「お、御屋形様が、おホモホモオモ」「違ゃうわマギカ!!」「「キャー!」」


「あのねみんな、こんな助平で女の子大好きおじさんが男なんて好き好む訳ないでしょ?」おおステラ!何かひっかかるがその通りだ!

「御屋形様はおっぱい大好きじゃけえのう」笑うなその通りだアンビー。

 何黙って真っ赤になってんのクッコ!鼻血噴くなマギカ!

 あーホント早く帰りたい。


******


 この過失に見えた無礼は、仕組まれたものだった。

「この大陸に勝利を齎した者は我が帝国!成り上がりのダキンドンや何もせぬフロンタ、ましてや平民の群れや人ならぬドワーフなどを付け上がらせては帝国の足元が揺るぎますぞ!」

「では貴様は私に護児国を討伐せよと言うのか?」「出来得れば!」「あの25万の大群を完璧に撃退した護児国と戦えと?」

「蛮族を撃ち滅ぼしたのは皇帝陛下です!あの平民や亜人共など同盟から追放をぶげ!」顔面を殴り続けられ、罪人として枷に縛られたワフラージがわめいていた。

「我を罰すれば!帝国の秩序が崩れ多くの貴族が反旗を翻しましょうぞ!」


「皇帝陛下。これはミデティリア帝国の意思と受け止めて宜しいのでしょうか?」優しいオーティーが怒りに燃えていた。

「そんな訳無かろ…」「黙れ小国の小娘奴が!」「黙るのは貴様だ!」キオミーがわめく貴族の顔面目掛けて踏みつけた。

「これはもう取り返しがつきませぬ。あのお方が今まで必死に守って来た大陸の平和も、帝国高位の貴族があからさまに侮辱してしまいました」

「た、大陸を侮辱したのはあの平民ぐえ!」更にキオミーは頭を踏みつけた。

「聖女王。貴国はこの様な凝り固まった愚か者を早々に駆逐し果てる事が出来た、あの国王の策によって。しかし我がフロンタにも、こういう愚か者はまだ居る。

 こいつらにはあの戦いの意味も、儂等が何故今生きていられるのかも理解できておらんのだ。

 それをタイム殿は嘆いておられるのだ…」エンタ王が悩まし気に言う。

「戦勝に浮かれていた。こんな奴等を始末しておくべきだった…どうするべきか!」

 勝利の美酒を浴びる前に、三首脳は完全に酔いが醒めていた。

 日本は武士の国から富国強兵へ、軍国主義から平和主義へと物凄い勢いで価値観を転換する事が出来ました。しかし戦争に勝った連合国では遥か昔から続く意識は変わっていないのでしょう。日本は稀有な社会なのかも知れません。


 もし楽しんで頂けたら、下の星を増やして頂けるか、ブックマークして頂けると大変嬉しく思います。

 また、感想を頂けると励みになりますので、

「ここの意味がわからん」

「このネタっぽいのがわからん」

「最終回はやっぱり掃除機か?」

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