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75.南海の大決闘

前回のあらすじ:妖星ゴラスの大阪城、何で全然実物と違うんだと思った子供時代。写真集円谷英二を見て納得。

 ダキンドン北限街道で皇女サスラーが率いる10万の軍が9割を失いつつ西へ隊伍を整え逃走した頃。


 イテキバン侵略軍は南北に長いボーコックの故地を南へ走った。途中の村や町を襲い物資を奪いつくし、南岸へ到達した。

 この行動は予測され、進路上の各地に潜んだ間諜によってつぶさに統合防衛軍に報告された。

 イテキバンは旧ボーコックと帝都マナカを結ぶ朝貢街道を通過し、南下を続けた。


「敵は海岸線から来る。タンエン城が戦場となる」

 第一次防衛線4城塞の内、タンエン城は唯一帝国様式で築かれた城だ。守るは頑固者、偏屈者で知られたタンエン伯爵。

 多くの国境貴族がボーコックの金と美人局に買収された中、帝国への忠義を貫いた頑固者だ。裏切り者達の流した流言飛語の為、彼の評価は最低だった。

 故郷の日本を思い出すなあ。この世界の新聞もきちんと発言とその結果に責任を持たせないと、国を売り渡す尖兵になるな。放った言葉に命を懸けて貰おう。


 そのタンエン領から見ての西、大陸鉄道縦線の終点、港町ポルタに軍勢がひしめいた。統合防衛軍が北方軍を割いて南へ派遣したのだ。

 ミデティリアに潜伏した敵間諜は全て始末され、全面戦争の陣容が整えられた。


 ポルタから司令官代理のロボシが手勢を引き連れてタンエン伯爵の下へ来た。皇子自らの登場に一同が畏れた。が。

「小僧!ここは子供の遊び場ではない!早う皇帝陛下の元へ帰れ!」タンエン伯が怒鳴った。

 これは一族処刑モノの暴言である。だが。

「長くこの国境を守りし英傑の叱咤、光栄と思おう!」毅然と返すロボシ。

「しかし!」

 ロボシの真剣な眼差しを見つめ、タンエン伯は何も言わずに聞いた。

「敵は10万!我等本陣からの派兵で、敵の進路を妨害し、多少なりとも敵勢を削ぐ覚悟で参った。余の手勢を預かる様、貴公に命ずる!」

「あの快速軍団を如何にそぎ落とされるお積りか!」タンエン伯が怒鳴る。出来の悪い子供をしかりつける様に。

「その快速を逆手に取るのだ。土魔法を用いる者と、敵の兵器『火薬』を使い、奴等の足元を爆発させる」

「火薬…」「あれである」中庭の真ん中に黒い粉が盛られ、そこに火が投げ込まれると…轟音が轟いた!

「これで敵を足止めし、そこを」連射クロスボウを構えた兵が爆心地を瞬く間にハリネズミに変えてしまった。

「無理はせぬ。先ず河口で10万を8万程度には減じ、河口からタンエン城まででもう2万を削ぐ。

 この地で6万を4万に削ぎ、西方で6万の我が軍で殲滅する」


 頑固者で知られたタンエン伯が暫く考え、ロボシに言い放った。

「便利な武器のみに頼る事など愚の極み!敵とて…」

「無論敵も馬鹿ではない。進撃の幅を広げ犠牲を抑えて突撃するであろう。敢えて友軍を突撃させ、その屍を踏み越えて来るかも知れない」

「その様な…」

「敵は戦の鬼だ。人の命を、仲間の命すら平気で犠牲に出来る狂気の兵だ。油断は出来ぬ。どんな非道な、どんな奇策を使うか解らぬ。

 余に出来るのは幾重にも罠を巡らせ、確実に敵の馬を、兵を射る。その訓練を余を始め皆で鍛えたのだ」

 弓兵一同が敬礼を捧げた。

「敵を削いだ後は、タンエン伯。貴公が頼りだ。思いっきり敵を引き付け、磨り潰せ!」


 決意に満ちたロボシの瞳を見つめ、

「はっ!」頑固な将が孫の様に若いロボシに頭を下げた。

 周囲のタンエンの兵に戸惑いが広がり、続いて皆が敬礼を捧げた。

「殿下。くれぐれも、無理はなさらぬ様願います。無事に帰還なさる事こそ大事とお思い下され!」

 それは頑固な将の顔ではなかった。地位に甘んじ戦を軽んじる皇族を戒めるものでもなかった。

 若く聡明な努力家を慈しむ、老人の顔であった。


 ロボシは顔を崩した。

「貴公は家族、子や孫にはどんな顔をするのであろうかな?」

 緊張していた周囲の将兵が噴き出す。

「な…このジジイの顔はお気に召さぬと仰せになるか!はっはっは!」年寄の将が笑い始めた。

「いや、その笑いを有難く受け取ろう!タンエン伯。必ず勝利を齎し、貴公の孫に祝いを贈る事を約束しよう。皇族の血に誓って約束する!」

 かくて若造はあっさりと偏屈な老人と邂逅したのであった。チッ、やるな。


******


 そして数日後。タンエン駅に魔道具が運び込まれた。

「これが魔導探知機か…」ロボシは納得いかない顔をしていた。

 愛しのアンビーとドワーフ達、そして港町出身の孤児達が協力して作り上げた、海上の船影を100km先まで捕らえる新兵器だ。それらが見晴らしの良い場に小屋と共に設置された。

 ロボシも手勢5千を河口の堤防に配し、上流の洪水作戦で水浸しとなった対岸を睨みつつ敵を待った。その夜。

 敵が動いた。何千人もの工兵が、泥の上に板を敷く。その距離、300m、クロスボウの射程に入った。「もう少し待て、もっと引き付けよ」ロボシが前線に出て命じる。200m、敵は河口に入った。

 その時、上流から無数の物が流れて来た。そして、敵陣から火矢が放たれた。

「盾隊前列へ!」盾に火矢が刺さると爆発した!敵は矢に火と火薬を付けて放った。

「成程聞いていた通りの威力か、それより少ないかだ」前面に板、背面に鉄を張った複合装甲は破れなかった。

「火矢は虚仮威しだ!爆発に耐えよ!一度矢を受けた盾は下がれ!」


 火矢の支援を受けた敵は、何か所かで簡易な船の様な板を川に浮かべ、浮舟の橋をみるみる伸ばして来た。

「いいぞ、敵を引き付けるだけ引き付けよ。超弩弓を堤防の一段下で待機!敵に見つかるな!」


 ついに敵の尖兵は西岸にたどり着き、浮舟橋を完成させた

 その上を騎馬隊が高速で懸ける!

「弓兵打ち方始め!」

 統合軍が連射クロスボウを放つ、橋を駆ける騎兵が忽ち川に落ちる。クロスボウの射程は通常の弓より遥かに長い。

 幾筋かの橋で、次々と騎馬隊が川に転宅する。しかしその一部は味方の屍を踏みつぶしつつ対岸に辿りつき、堤防上へ矢を射た。

「超弩弓用意!」堤防上に、台車に乗った超弩弓が引き上げられた。

 その頃、対岸で輜重隊が渡河に向かっていた。

「後方の輜重隊を狙え、用ー意、撃て!」

 轟音と共に超弩弓が放たれ、対岸の一角を粉砕した。

 次の矢装填!横第二射用ー意!撃て!」

 更に超弩弓が物資を粉砕し、爆発が起きた!爆発は物資を巻き込み、兵を巻き込んで広がった。

 眼下には敵騎兵が迫る。浮舟橋上にも騎馬が走る。

「次の矢!浮舟橋中央を狙え、用ー意、撃て!」

轟音の直後に、川の中央が弾けた。更に西岸の浮舟橋起点にも着弾し、橋は騎馬隊や物資諸共海へ流れて行った。


 しかし西岸に辿り着いた騎兵は怒涛の勢いで突入する。帝国兵の猛烈な連射を受け先頭集団は倒れるが、その屍を踏み越えて後続の軍が迫る。

 そして堤防を駆け上ろうとした時、敵軍の足元が崩れた。堤防の外側に南北に長い落とし穴が掘られていたのだ。そして。

 穴の底から爆発が巻き起こり、兵馬だった肉片が弾き飛ばされる。

 しかし敵は落とし穴を踏み越え、或いは浮舟橋の一部を落とし穴に投げ込み足場を築いて堤防に迫った。

「堤防守備隊は撤収!」

 敵の速度が怯んだ隙に、犠牲の出ない内に帝国兵は引き上げた。堤防内側に敷かれた鉄道に乗り込み、敵軍が堤防を越える前に遥か遠くへ逃げ去った。

 その後を敵の騎馬が追う。しかし、

「魔力を流せ!」

 数人の魔導兵が魔道具に向かい魔力を流すと、敵の足元で爆発が起きた!

 鉄道は爆破され、数千の敵が四散した。


 この渡河作戦でイテキバン軍は3万を失い、物資は5万分を失った。しかし軍は乱れる事も無く集結し、西へ向かった。


******


 渡河作戦の前夜。支配下の港から出来得る限りの船を帝国に向けた、炭疽菌と工作兵を載せて。

 艦隊の中核を成すのは、イテキバンの船、4本マストで50人は乗れる大型艦だ。

 甲板には敵兵が弓を構え高速船に備えていた。

 そしてノキブル河口の戦いと同じころ。


 周囲を警戒していた水兵は、突如激しい衝撃に襲われ、海に叩き落された。そして爆発が船を割いた。

「敵襲ー!」しかし暗い水平線のどこにも敵は見えない。

「敵は陸上から討ってきている!」


 ミデティリアの海岸線では、魔導レーダーが洋上に敵を捕らえ、位置を超弩弓隊へ伝えていた。火薬を装備した超弩弓が、風向と火薬を備えた超弩弓の重量を含め射角を計算し、敵に命中させたのだ。

 この複雑な計算を行うのは、護児城に留学した帝国兵達。

 観測兵は次々と敵船の爆発を確認し、報告していた。


 闇夜の中、見えない敵に大型艦を沈められた艦体は、更に南方洋上に小舟の集団が白波を立てて迫るのを発見した。その速さは、船の常識を破る速さであった。


 その時激しい衝撃が船を襲った!そして遅れて轟音が届き、兵達は海に叩き落された。

 何事かと艦の将兵が慌てていると再度衝撃と破壊音が艦を覆った。

 敵艦は艦尾側面から艦尾の底まで大穴が開けられていた。浸水は艦を襲い、艦は転覆した。

 帝国を出発した船には魔導機関が積まれ、スクリューを回し高速で敵に迫った。

 更に魔導レーダーと中規模の弩弓が積まれ、敵艦の喫水線を狙い、敵の射程距離より遥か遠くから舷側を撃ち破った。


 主力のイテキバンの巨艦を次々と屠り、恐怖心から散開するボーコックの船を更に追い、

超弩弓の餌食とした。


 夜明け。ほぼ壊滅した艦隊にミデティリア水軍が迫った。彼らの放つ火矢にイテキバンの水軍は炎上し、帝国にばら撒こうとした炭疽菌を抱えて海に沈んだ。レーダーと超弩弓、そして高速艇による一方的な殲滅戦の末、呆気なくイテキバン水軍は消滅した。


******

 

 水軍壊滅の報も知らない南向軍は、広大な海岸線を西へ驀進した。しかし、ある時は南北に広がったぬかるみに足を取られた所を遠距離から射撃され、ある事は谷間の狭い道で火薬攻撃を受け犠牲を出し、城塞都市タンエンに辿り着いた時は3万弱にまで減っていた。

 迎えるタンエンの守備兵は2万。既にイテキバンの勝利の目は無かった。


 しかし敵は死兵となった。城の弱点を突き崩し、守備兵に被害を与えては引き上げ、それを執拗なまでに繰り返した。城兵の負傷者が徐々に増えて行き、死を恐れず肉薄する敵に恐怖心を抱く者が増えた。

「これは思ったより厳しい戦いになるな。参謀部へ打診、タンエン西方の決戦を断念し、この地にて敵殲滅を意見具申する」

 ロボシの報を検討し、良案と判断した統合防衛軍は、4万の軍をタンエンに派遣し、城と呼応した殲滅戦を開始した。


 タンエン城外は帝国軍とイテキバン軍の決戦場となり、彼我9万の軍が激突した。


 鬼神の如きイテキバン軍を、ロボシは根気よく堪えた。騎馬軍による突撃を往なし、敵の塔敵弾を防ぎ、敵の勢いが落ちたところを攻めた。

 更に後方から城兵が城を出、イテキバンを挟撃した。一撃を与えると城兵は直ちに引き返し、敵を城へ引き付けた。

 この連動作戦は更に敵勢力を削ぎ、ついに敵はタンエン攻略を断念し、多大な犠牲を払いつつ増援軍の中央を突破した。

 陽が落ちたにも関わらず、月明りを頼りにイテキバン軍は疾走した。帝国の包囲網を突き破り、西へ抜けた。その数は既に1万を下回っていた。


 これを包囲軍と籠城軍が追い、更に西方で決戦に備えた2万が迎えた。

 驀進するイテキバンを、またしても超弩弓が薙ぎ払った。

 洋上の水軍を殲滅した超弩弓が、鉄道でこの地へ急ぎ運ばれたのだ。

 敵前方からレーダーで位置を補足し、月明りの下、快速の騎兵を肉片に変えていった。

 敵の進撃が止まると、今度は頭上に火薬を使った照明弾が放たれた。帝国軍が倍の数でイテキバンを迎えた。


 角笛が鳴ると、帝国騎兵が敵騎兵へ突入を始めた。照明弾の灯りの中、体制を立て直さんとするイテキバンを叩きつける様に帝国兵の猛攻が始まった。

 そして逆方向からも、帝国軍が迫った。タンエン伯が自ら先頭に立ち、背後からイテキバンを屠った。

 イテキバンも鬼神の如く、刺されても斬られても帝国兵に迫ったが、タンエン伯も地獄の亡者を薙ぎ払うが如く血飛沫を上げた。


 ロボシは、照明弾で照らされる戦場を、本陣から眺め、参謀たちと共に布陣の修正を論じ合ってはいたが、眼前に広がる地獄をどこか遠くで起きた出来事の様に感じていた。


******


 陽が昇る頃には、戦乱の声は収まった。

 敵の負傷者を刺殺する兵が動くだけであった。暫く後、西方の帝国軍本陣で、鬨の声が上がった。そして戦勝を知らせる信号の花火が打ち上げられ、東のタンエンからも雄叫びが聞こえた。

 帝国南方、海岸線と洋上の戦いは完全な勝利に終わった。

「「「ロボシ殿下、万歳!」」」

 平地での決戦に拘らず、籠城軍の支援に走り、敵の遁走を知るや挟み撃ちを仕掛け、更には沿岸砲台を迅速に移動させたロボシの機転に、将達は歓声を上げた。しかし、当のロボシは全く別の事を考えていた。

「敵兵7万、馬を含めると10万以上の腐乱死体。どう迅速に片づけるべきか。

 退去させた村や農地の復興は計画内で収まるかどうか。仕掛けた爆弾の処理も行わなければ。どこまで父上や兄上達が考えていてくれるだろうか。

 ダキンドンと足並み揃える振りをして魔導士殿に知恵を出させるか…それにしても素案は用意しないと馬鹿にされるだろうなあ…」

 今回もヤ〇ト並に快勝でした。長く引っ張った割に呆気なさ過ぎたでしょうか。


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