表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/95

73.ダキンドン・イテキバン大会戦 大陸西の嵐

前回のあらすじ:昭和白黒顔出しヒーローが大好きな人はもう年寄だ。

 はっ60年代そのものが既に半世紀以上昔なんだった!私に取っちゃ「最近の作品」なんてウ〇トラマン80とか84ゴ〇ラで止まっちゃってるよ。どうしよ。

 といいつつ今回も思いっきり開幕昭和30年代ネタ。

 大陸暦1512年8月、大陸・ボーコック関係は最悪の状態にあった。

 最後の外交使節がダキンドンで面会し、この結果如何に於いてダキンドン・ミデティリア・フロンタ・護児国は開戦も止む無しとの廟儀が決定された。

 この事態に対応するため統合防衛軍の主力城塞4城を主力とする軍勢が一路進路東方ノキブル川国境線へ集結しつつあった。

 交渉妥結の場合は「コウショウダケツ、ヒキカエセ」、交渉決裂開戦の場合は「イニロトナス ノボレ」。

 この二種類の魔道具による信号にすべての運命を託して。

 8月10日、統合防衛軍司令キオミルニー31世より魔導信号あり、「イニロトナス ノボレ」。


******


「敵は降伏勧告を拒否しました。既に国内は疫病が蔓延しているにも関わらず」

 今やイテキバンの前線基地と化したボーコック王城で降伏使節の報告をサスラー皇女は受けた。

 作戦参謀の将軍が続ける。

「宜しい。計画通り、先遣隊を派遣する。ノキブル川の西側に渡り、保護されている乞食共に騒ぎを起こさせ、先遣隊を渡河させる。乞食の役目はそこで終だ。

 後は街道に拠点を設ける。敵内部は内乱で情勢不安定との情報もあるが、逆に武装勢力による抵抗も考えられる。

 先遣隊は安全な場所に拠点を設ける。

 その成功を以て、全軍この地を後にし、20万の軍勢を二手に分け、二か所で一気に渡河する。

 先ず10万と先遣隊2万5千がダキンドンを制圧し、先住民を皆殺しとする。

 並行して10万は同様に先遣隊と合流し、南の港に毒を撒き、最強のミデティリア帝国の体力を極限まで削ぎ落す。

 しかる後に、南と北から帝国を一気に亡ぼす」


 サスラーは悩んだ。

「事が順調すぎる。敵の欺瞞工作の疑いはないか?」

「各地で病死者を焼き捨てるのを全ての間者が目撃しています」

「護児国とかいう連中は?」

「何も動いていません。奴等が作ったという鉄道も、日々動きを止めています。

 皇女殿下の策で死滅したかと存じます」


 そりゃそうだ。敵の間諜がいる間は休日ダイヤで減便してたしね。


「よし。攻撃を開始する。先遣隊、出陣!」


 ダキンドン軍5万の兵が前線基地を出動した。

 兵はわずかに残った元ボーコックの流民に暴行を加え、略奪し、生存者は西へ逃げた。

 その内の極一部が対岸に辿り着き、横柄な者や無礼な者は矢を射られ、礼節を以て救いを請う者だけが8ケ所のキャンプに招き入れられた。

 無論、その中にはイテキバンの間者が多数まぎれていた。

 先に潜入した間者と合流し、各地で暴動に賛同する者達の様子を把握した。


「〇日後、この地を奪う」敵の間者は指示した。無論、それは守備兵によって把握されていた。


 その日、夜明け。

「天誅ー!」

 各地で保護したボーコック流民の一部が守備兵の兵舎を襲った。暴徒は松明を兵舎に投げ込み、火の手が上がった。

 施設の物見櫓から松明が大きく振られた。それは対岸への合図だった。

 対岸から先遣隊5万が4方面へ散開し、それでも各1万強の軍勢となってノキブル川を渡り始めた。


 キャンプでは暴動の首謀者が叫んだ。

「この砦は我等ボーコックの物だ!我等はここを王城とする!

 俺が王となってこの地をボーコック再興の礎とするのだ!」

 ダキンドンへ、ミデティリアへの恭順を誓って保護された筈の流民たちは、歓喜の声を上げた。

「もう俺達があいつらに頭を下げる必要は無いんだ!」「コノウラミハラサデオクベキカ!」

「私達はダキンドンに買われたのよ!」「ふるえる!」「ダキンドンと戦うわ」

 女達も賛同し、子供達もはしゃぐ。

 極一部の者が、家族を連れてキャンプを逃げ出した。


 先遣隊が各キャンプに入城すると、流民たちは忽ち制圧され、抵抗する者は容赦なく殺された。キャンプ地は、先に居た流民と先遣隊でひしめいていた。

 そして、城門は閉ざされた。「何だ?足元が濡れて…雨か?」

 各キャンプは、暴動や敵に確保される事を想定し、上流から地下を通じ城内を沈没させる水道を設けていた。水門は魔道具で開かれ、静かに大量の水を流した。

 先遣隊が気付いた時には遅かった。場内の水門から水が溢れ、キャンプを囲う城壁は水没した。

 かくして、先遣隊5万は各地のキャンプで、寝返った流民と共に全滅した。


「静かな戦争だ。鬨の声も、剣戟も聞こえない」

 ノキブル川の氾濫に備えて、西岸に築かれた堤防。その上からキャンプの水没を確認した守備兵は作戦成功を統合防衛軍本部へ報告した。そして。

「一丁、『渡河成功』って敵に報告して来るか」と、敵伝令に扮して後続の連絡兵に向かった。


 各地の大陸兵による偽情報はイテキバンを安心させた。

 その数日後、暗号化された偽情報「敵城落つ」の報を受けた敵軍は麾下に命じた。

「全軍出撃!」


******


 前線基地、元ボーコック王城は炎に包まれた。

 背水の陣を敷くかの様に自らの拠点を破壊するのは、不退転の決意の表れだそうだ。

 後続の軍が来れば天幕で陣を成し更に前に進む。自らが敗北し逃げ込む城は要らない、破壊と侵略の権化ならではの凶行だ。


 西方侵略軍20万は、王都を出た後南北の二手に分かれた。皇女は北軍を率いた。

 進むはボーコックとダキンドンを結ぶ北限街道。そのすぐ北は峻険な山脈で、敵襲の危険性は無い。

 南向軍は占領下にある港から、接収した船に炭疽菌を満載し西の港へ向かわせ、陸海攻撃を仕掛ける算段だ。

 これがもし先遣隊5万と相まって南北両国を直撃していたら。


******


「南に10万、北に10万か」

 サミット城に情報が集まる。

「潜伏させた間諜による報告では南北両端から西進する模様です」

「敵は当方が内乱の最中で、しかも先遣隊が拠点を確保したとの虚報を信じて進んでいる。

 まずは川で半分は削ぎたいな」参謀が語る。

「北を選んでくれたのは有難い。半分は兎に角、三分の一は行けるだろう」

「南はどうだ?」

「洋上の敵は洋上で刈り取る。陸上の10万をどうするか、だ。若き大将はどうなさりますか?」

 壮年の将が若き大将、キオミルニ31世の代理であるロボシ皇子に皮肉を交え質問した。


「敵配下の船では1万も載せることはできない。海に近い、大河となったノキブル川を渡るのも容易ではない。

 それでも奴等は馬を飛ばして何分の一かだけでも渡らせ、我が国を混乱させんと企むであろう」ロボシは迷わず答えた。

「敵影の無い二街道は?」

「予定通り守備兵を配し、万一に備える。このサミット城も、若者達が軍神を返り討ちにした一関城も、簡単には落ちぬ」

「主戦場は北限街道の裾野城、南洋街道のタンエン城、で宜しいか?」

「引続き敵の動向を監視するが、恐らく敵は我が同盟の分裂を画策していると思われる。そうなれば」

「我等フロンタの軍にも活躍の場は残して欲しいものですな」事ある毎に口を挟んで来たフロンタが、褒章目当てに前のめりになって来た。

「万の兵を鉄道で戦場に向かわせよ。イテキバンの快速軍団を上回る速さで敵を防ぐのだ」

「では我等本陣は」

「敵の侵入を確認出来次第急行する。

 ダキンドン軍はガーディオンへ、ミデティリア軍はポルタへ移動!

 本軍は出陣用意の上待機!」

「「「はっ!!!」」」ロボシの采配に並みいる将は敬礼した。


******


 サスラー皇女率いる北行軍は夜陰に乗じてノキブル川に迫った。対岸には進軍を促す松明が焚かれ、街道の奥には煙が昇っていた。

「我等に呼応した先遣隊です。渡河の指示を!」将が前進を促す。

「伝令は来たのか?」「はっ!」「その者を我が前に連れてこい」「既に対岸に戻っております」「符丁は?」「合っています」

「何もかもが上手く行き過ぎている。一軍は予定通り前身。二軍はこれより南方に降り、一軍に一刻遅れて渡河せよ」

「殿下!我等の矜持は迅速ですぞ!ここで一刻を無駄にするのは!」

「我にはあの魔導士が何もせず病に倒れたとは思えぬ。この一刻を惜しむべきではない」

「戦を前に気弱になられましたか?」将が皇女を煽った。

「皇女殿下を相手に無礼な!」近衛が将を諌めた。

「戦は勢いが大事です。ここで進軍を躊躇えば兵の士気は下がるばかり。何卒迅速な渡河を!」

「次に口を拓けば首を刎ねる。二軍は待機!」冷徹に言い渡すサスラーに、無礼な将は恐怖を感じた。


 北行軍は敵のいない中、順調に渡河を進めた。

 サスラー率いる先頭部隊がキャンプに到着すると…

 そこは無人であった。先遣隊の守備もなく、無論流民の姿も無い。

 望楼の上で松明を振りかざすのは…魔道具であった!

「謀られた!全員ここを出よ!西の堤防…も罠があるだろう。周囲の木に登れ!」

「皇女!何を血迷った事を!」

「あの松明を見よ!この砦は罠だ!皆散れ!敵は今ここを見ている!」

 しかしサスラーの叫びを無視して後続の軍はキャンプ周辺に向かってくる。


 そして。北から音がした。

「皆の者!木に登れ!水が来る!木に登れー!」

 サスラーと近衛の少女達は馬を走らせ川岸の木に急ぎ、木をよじ登った。

「早く登れ!間に合わぬぞ!」サスラーは立ち尽くす兵達に向かって叫んだ。

 音は徐々に大きくなってきた。

「臆病にも程が…」呆れた将達が北を見ると。

 巨大な水の壁が目の前に迫っていた。そして、一同は厖大な質量に叩き潰された。

 渡河を終えていない水上の軍団も、東岸で渡河準備していた後続の部隊も、巨大な水の壁に叩き潰され、下流に押し流されていった。

 10万の軍の内、無事だったのはサスラーの命により渡河を贈らせた5万の軍と、サスラー以下15名の近衛だけであった。

 この僅かな時間で、北行軍は戦力の半分を失った。


******


「明日には河口まで増水するでしょう」

「流域の街や村は大丈夫だろうね」

「全て高地へ非難していますし、この程度の洪水も何度かありました。アッチ側は兎に角ダキンドンも帝国も大丈夫でしょう。

 ノキブル川上流でダキンドンの兵が言う。ボーコックに堤防は存在しなかった。厖大な水が東に流れ、流域一帯を水浸しにした。

「南に向かった敵軍は難渋するだろうが、死に物狂いで渡るだろうなあ」

 洪水作戦のため一時的な堰を上流に作った私は、補助の兵に答えた。

「5万かあ。それでも大軍だ。きっちり輜重隊も温存してやがる。迎撃戦が始まるな」

 実のところ、待機していた二軍も鉄砲水の被害を受け、戦力も物資も半分が流された。


 それでもイテキバンは、川の流れがある程度収まった所で渡河を強行した。

 ダキンドン軍はこれを斉射し、戦力を削ぎ、早々に撤退した。

 結局堤防を越え渡河に成功した勢力は2万。全滅と言っていい。しかし軍隊の全滅とは指揮系統の喪失を基準に考えている。イテキバンは全員が一個の軍団と言っていい。

 彼らは生き延びたサスラーと近衛と合流し、新しい体制を僅かな時間で整えていた。

「ダキンドンの軍は約5万。街道を西進し丘に城を構え敵と対抗する」

「先遣隊が拠点を構築しているのでは?」

「その情報は偽物だ。先遣隊が生きていたら、こんな罠妨害していただろう。むしろこの先に敵が待ち構えていると思うべきだ。心して進め!」


 部隊を編成し、軍団は驀進した。行軍速度は大陸の常識を超えていた。

 だが、その驀進は程なく止まった。斥候が先の道に不規則に穴が掘られている事を報告したのだ。

 更に街道後方からダキンドン軍が現れた。兵の数にしては多すぎる矢を射て軍の後方を削って行った。更に爆音が響いた。

「敵も火薬を持っていたのか?!」爆音の先から火の手が上がった。油と爆弾が同時に投げられ、物資を焼いて行った。そしてイテキバン軍の火薬に火が移り…


「全軍前進!道の脇を進め!穴に嵌るな!」サスラーが、近衛が駆け出し、先頭の軍が続いた。その直後、大轟音が響いた。

 輜重隊の運ぶ火薬が爆発し、周囲の兵を吹き飛ばした。

 誘爆を避けるため分散されていた火薬は、次々とダキンドン軍の焼夷弾に焼かれ、周囲の武器食糧諸共爆散した。


「進め!最早我等の残る道は前に進み、敵を殺し!奪い!焼きつくす事のみだ!」

 行軍を激励しつつサスラーは思った。

「これはもしかしたら、あの魔導士の仕業なのかも知れない…」

 あの地獄の様な魔の森で救助され、数日ながら暖かく豊かな暮らしを過ごし、子供達の笑顔と魔導士の優しさに包まれていた時の事を、サスラーは思い出した。

 あれは富める者の弱さではなかったのか?あの至極の只中であの天界の様な暮らしを守りえた強者の慈悲だったとでもいうのか?

 もしそうなら、あの時点でもっと探っておくべきだったかも知れない。

 あの魔導士と会話すべきだったのかも知れない。


 しかし彼女は迷いを振り切り、前に進んだ。


******


「北限街道を西進する敵の数1万5千、しかし武器食糧は1万人分程度と推測されます」

 サミット城、ロボシ皇子の下に報告が入る。

「よく軍が散らばらないものだ。狂信者の群れか?」

「護児国の将が申しておりました。奴等は殺意の塊だ、進む事、殺す事だけのために生きる外道だ、と」

「あのやたら真直ぐな奴か。あ」ロボシはダンが誰に似ているのか思い出した。

「孤児院のガキ大将、俺の未来の妻の事しっかり守っているかなあ」

「皇帝代理殿?如何しますか?」

「街道の先、裾野城の将は?」

「ガードナー辺境伯と、護児国の将、ダン…平民で将?です」

「よし。敵は1万まで減るだろう。現地に3万を残し、それ以外は半数をダキンドン国内警備へ、それ以外は南下する敵に備えよ!

 まあ、随分楽になったもんだな!」

 ロボシの軽口のお蔭か、妙な感じでその場の緊張が解れた。

ついに開戦、その前哨戦です。宇〇戦艦ヤマト以上にご都合主義です。


 もし楽しんで頂けたら、下の星を増やして頂けるか、ブックマークして頂けると大変嬉しく思います。

 また、感想を頂けると励みになりますので、

「ここの意味がわからん」

「このネタっぽいのがわからん」

「最後サスラーは海の底?!」

等々、お気軽に書き込んで頂けます様、お願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ