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71.亡国姫後家血水泥

前回のあらすじ:最近、特撮モノでアヤシイ外人って出なくなりましたねえ。ビオラやギドラ見た時懐かしい感動を憶えたのも遥か昔。

 まだ戦いは起きていません。今回は超胸糞話です。苦手な方はスルーを推奨します。スミマセン。

 その前日。一応、私はボーコック王家に面会を打診した。イテキバンの監視を縫って、密に。しかし

「山奥の新興国如きが、歴史ある我が王家に面会など叶うと思うな」と一蹴された。


 そんな阿呆な王家の中でも聡明と言われた王女アンノウに面会を取り付けた。

「我アンノウが、護児国とやらの君主となる事を条件に朝貢を許す」一体どこが聡明なんだか訳解らない事を言われた。

「貴方達、生かすも殺すもイテキバン次第だと解っているのか?」と問うも

「我が国には歴史と伝統がある。あんな蛮族と一緒にするな」との事。

 ボーコック軍は既にダキンドンとの通商断絶と、総本山クーデター支援失敗(ほぼ自滅)で破滅し、各地では盗賊の大将みたいになって統率を失っている。

 ボーコックが正体不明なイテキバンを取り入れてしまったのも、都合の良い用心棒だと高を括っていたからだ。自国軍を遥かに超える数十万の軍勢のどこが「都合の良い用心棒」だと思えたのか。

 私は、この王女アンノウに危険性を説いたが、「お前の国を寄こせば言い分も聞こう」とだけ返して来た。


「理解した」「そうか、全てを妾に譲れ。父母は招くな。妾だけを招け」

「…念のために聞くが、貴方の部下や、使用人たちはどうするつもりか?」

「誰も招くな、妾だけがお前達の主となるのだ」

「では私は去る。用は済んだ」

「何!国を譲るのが最も良い答えであろう」

「私は国の何一つ譲る物は無いしあの子達は誰の物でも無い。貴様らは勝手に滅びれば良い」

「待て、要求を聞こう!」

 私の毅然とした態度に、王女は態度を変えて来た。

 私は今一度この人物と会話するため、深くため息を吐いて、冷静である様に努めた。


「既にイテキバンはこの国を無人の地とする事を決意した。お前達ボーコックがどうするつもりかを知りたい。場合によっては力を貸す事も考える」

「何を言うか!我が国は常にダキンドンやミデティリアに蹂躙され続け、被害を受けて来たのだ!我が国の苦境を救うのは両国の義務だ!護児国も義務を果たせ!」

 無茶苦茶だな。

「護児国にそんな義務はない。そもそも両国は蹂躙なんぞしてないし、むしろ多大な支援を行い、ボーコックの赤字を補填していた筈だ。

 それに対しボーコック王家は何をしたか?ある時はダキンドンへ、ある時はミデティリアへ味方し、蝙蝠外交で信頼を失った。両国の貴族へ賄賂や妾を贈り内紛の種を撒いた。

 挙句にイテキバンを招き入れるとは愚の骨頂だ。今や国が消されかかっている。民も随分と死に絶えた。

 貴方は国をどうしたいんだ?国民に対する責任をどうするつもりだ?」

「知らぬ!我こそ国の要であり国の誇り!我が命こそ守られるべき国の宝ぞ!

 それを罵るか無礼者奴!

 貴様の首を、いや、護児国の者は赤子と言えど生きたまま焼き殺してやる!」


 あまりに短絡的で自己中心的な愚者を前に、逆に冷静になって来た。

「我が国はダキンドン騎士団が100人掛かりで倒す様な強い魔物が群れている森で生きている。それに対し貴様たちは、隣国へたどり着く事も出来ない子供以下の軍ですらすでに消滅している。

 どうやって我が国に手を出すつもりか?」

「イテキバン共が我に替わって天誅を下すであろう!」

「お前関係ないじゃん」

「我が心のままに天は動くのじゃ!死ね!お前達の城は血まみれの肉塊で満たされるのじゃ!」

 こいつ人間じゃない。言葉は話しているが会話が成立しない。

 再び深くため息を吐いて私は言った。

「かつて、ある王女が私の前で助けを求めた。父が不甲斐ない、臣下は言う事を聞かない。自分には力が無い。しかし民を、国を助けて欲しいと、涙を流して頼んだ。貴方は違うのか?」

「どこの愚か者が知らぬが、国も民も妾あって存在が許される。あの蛮族共も同じじゃ。無論、お主の国の餓鬼共も、我が元にひれ伏すべきじゃ。背く者には死あるのみ!」


「理解した。

 今の言葉、我が国への宣戦布告と看做す。ボーコック王国は護児国の敵であり、難民の一人も入国を許さず、敵として抹殺する!

 無論この宣言は大陸同盟に連絡する。ダキンドンもミデティリアもボーコック民の亡命を拒むであろう。

 お前の愚かな発言でこの国の未来は断たれた」

「ここまで言われて妾を助けると言わぬか?」

「誰が言うか薄ら馬鹿!既にお前は私達の敵なんだよ!お前が今言った通りだ!」

「待て!お主が妾を助ければ今の領は安堵しよう!」

「お前が死んだほうが手っ取り早い!早く死ね!」と吐き捨てて王城から去った。


******


 その日、王族の全てはイテキバンに捕らえらた。

 聡明と呼ばれた王女アンノウは、使用人の手で逃げ場を塞がれ、イテキバンに差し出された。

「この裏切り者共!恥を知れ」

 しかし側近も侍女もニヤニヤと笑うだけであった。

 国王も女王も、他の王子も王女も、ニヤニヤ笑う宰相や侍従たちに囲まれて捕らえられた。


 ボーコック王城前の広場。国民の前で、王族達は様々な仕打ちを受け、苦痛と恥辱と怨嗟の中、人の形を失って行った。その酷い有様は見なかった事にしたい位だ。

 王家を差し出した宰相、侍従、侍女たちは笑って見ていたが、イテキバン兵に蹴り倒され処刑場へ引きずられ、王族同様に形を失って行った。


「タイム!貴様は何故妾を助けに来ぬ!妾を助ける名誉を与えよう!国を差し出せ!」

 余りに愚かな言動に相応しい結末を迎えつつある女が、意味不明な事を叫ぶ。

 私は周囲の時間を止めて「愚か者に相応しい姿だな」と、王女の最後を見に行った。

「何をしている!妾を助けよ!命令じゃ!」

「だが断わる」

「何故じゃ!何故高貴な妾を…」

「お前は私が会話を求めたが高慢な態度で拒んだ。私の子供達を殺すとまで宣言した。私がお前を助ける理由がどこにある?我が憎むべき敵、愚か者の末路を見届けに来ただけだ」

「待て!お互いに助け合おう!妾を助けよ!」

「一方的に要求してるだけだろうが!『お互い』等という言葉を二度と口にするな!」

「待て!まって!まってー!」

 時を動かせた。私は別空間に移り、愚か者の視線から消えた。

 愚か者に相応しい責め苦が続き、愚か者は喚き叫び、血水泥の中で相応しい最後を遂げた。


 後日気になって調べたところ、王女アンノウが聡明と言われた所以は…

 別に善政を敷いたとか功績を上げた訳ではなかった。

 あまりに冷酷で猜疑心が強く、婚約者もいない事を「行かず後家」と陰口した臣下がいた。彼は三代に亘る親族諸共惨殺されたとかも聞いた。

 その様を見て、幇間達が彼女を讃え、聡明と讃えただけだった。

 自分の意に添わぬ政敵を非情に抹殺する冷酷さ、それを腰巾着達が言い換えただけの偽りの賞賛だった。


 一応外見は美しかったものの、心は醜い後家が、血水泥に崩れ去って行く様を見て、全く無駄な時間を割いたなあ、いや?多少は後学の為になったかな?と、しばし悩んだ。


******


 イテキバンは「容赦」という言葉を嫌い、ボーコックに死の洗礼を施した。かつて総本山クーデターへの派遣で自滅した軍も、自軍に組み入れる事も警戒したのであろう。すでに武装解除し故郷へ解散させていた。

 そしてボーコックの兵も民も、イテキバンは肉の壁として使った。彼らを西へ追いやったのだ。

 この結果、ほぼボーコックは広大な荒地を残し、国としては亡びた。


 もし西側が余計な支援をせず、民族としての矜持を育ませ、時には正面から戦っていたら、こうはならなかったかも知れない。支援した事が仇となり、幼稚な民族を育ててしまっただけだったのかも知れない。

 いずれにせよ、彼らは自分で未来を切り開こうともせず、自国の仲間を助けようともしなかったのだ。


 僅かに恭順を示した者達だけが、数か所に築かれたキャンプに収容された。

「我等は愚王の被害者です、愚王に尽くした者を許しません!」

「ダキンドンの兵となり、親と子に別れても戦います!」

 すでに仲間割れを示唆しているあたり、先行きが非常に不安なのだが。


******


「あたしたちって、こんなに醜いモノだったのかねえ」

 私はマギカ、モネラ、病院部のメンバーと、志願して同席した姐さん組と共に、かつて彼女達の故郷だった場所にいた。皆、防疫服に身を包んでいた。

 死後日の浅い天然痘の犠牲者を解剖し病状を確認するためだ。

 既にイテキバンを欺くため移送した死体を調査したが、確認のためと、姐さん組の願いに応じるため、ここに来た。

「この子達も意地が悪い奴だったけど、みんな亭主に殴られて生き抜いて来たんだ。あの時追い出されたのがあたし達じゃなかったら…」

 重ねられた骸に、オイーダが祈る。私も、妻が祈る相手には祈る。

顔も崩れ果てた子供らしき骸を前にイナムが虚ろに言う。

「この子は、私の子かもねぇ」私が彼女の肩を抱くと、「案外平気なもんだね」と答える。しかし、イナムは震えており、涙を流していた。

 彼女達も、捨てきれなかった望郷の念を、切り捨てに来たかったのだろう。


「御屋形様!これおかしいわ!」マギカが叫んだ。彼女が前にしていた死体は、兵士だ。しかし、疱瘡が無い。「生物兵器か…」


「天然痘とは別の病気ね」

「その通りだ。イテキバンの連中はこの国を亡ぼすために別の病原菌をばら撒いている。

 疱瘡が無い死体は恐らく新しいものだ。

 あまり長居はしない様にしよう。死体の様子を記録した後に解剖して血液や肺、内臓の各部ごとにサンプルを取るんだ!疑わしいのは肺だ!」

 作業を何日かに分ける事にし、その日は数人分の死体を解剖した。

 魔の森北部の鉱山に移動し除染した後に、更に三之丸に新設した防疫施設に移動した。


「マギカ、モネラ、皆。すまないが数日はここで缶詰だ。

 うっかり子供達に未知の病をうつしてしまったら、それこそ奴等の思う壺だからね」

「ごめんよ、私達の我儘の所為で」

「いいんだ。むしろお手柄だよオイーダ。奴等、次の手を隠し持ってた事が証明できた。」

「あたしはぁ、御屋形様とぉ、愛のラブラブ監禁生活!」ぶれないなあマギカは。


******


 その後の調査で判明したのは、故郷でテロに使われた事がある「炭疽菌だ」。

 発病部位は肌であったり、消化器であったりするが、肺に入れば極めて危険だ。対人感染は無いが致死率は高い。

 イテキバンは菌を培養してばら撒く、自滅覚悟の攻撃に使うつもりだ。

「みんな御免、反則技を使う。早くここを出よう」「駄目」真っ先にモネラが反論する。

「御屋形様だけ行って。私達は、防疫に必要な時間の感覚を体に刻み込む必要がある。御屋形様は敵の手の内を各国に伝えて」

「ありがとうモネラ。各国を説得できるデータを纏めて欲しい」

「え~!私とのラブラブ監禁生活は~?」

「モネラ、先生のしつけも頼む」「それは夫の役目」

「出来の良い生徒を持ったもんだなあマギカ」「なんでよ~!」

「姐さん達も、皆を手伝ってくれ」「「「「うん!!!!」」」」

 私は全身を殺菌し、サミット城へ飛んだ。

 今回は、もしかしたら主人公側の国もこんな事になったかも知れないという暗黒面のお話です。本当は惨状をもっと書いていたのですが、あまりに胸糞悪くなってバッサリ切ってしまいました。

 しかし大陸同盟の方々はみんな腹に一物抱えながらも理解力のある方々でしたから、こうはならないかな?不穏分子も事前に処分しておいた事だし。


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「このネタっぽいのがわからん」

「う~ん、全滅エンド」

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